【お化け屋敷】
俺は登校すると、もう既に、クラスの何人かは来て廊下でたむろしている。
教室はすでにお化け屋敷になっているので、机も椅子もないので、
みんな廊下とか中をうろちょろしている。
中をのぞくとすでにジャンヌも登校していて、
ポジションの墓場の前で同じ幽霊役と打ち合わせしていた。
1組のロングヘヤーの三人娘だ。
一人は既に、白い着物におでこに三角の鉢巻きみたいのを締め、幽霊の恰好だ。
俺は屋台のセットを確認していると、
「おはようオズ、早いのね。オズ、トップバッターよね」
「おお、おはようジャンヌ。雨だな、ゴリたち残念だな」
「ええ、私さっき、ジュリに会ったんだけど、残念がってたけど、
7月の公演のチラシ配るって言ってたわよ。
合唱部も中庭でコンサート予定しているけど、
合唱部は体育館で発表する機会あるけど、演劇部は可哀そうね。
ジュリたち、あんなに張り切っていたのに」
「ほんと、今日一日中雨っていってたもんな。来場者、ガタっと減るかな?」
「雨でも楽しみにしている人は来るから、
そこそこは来場者あるって聞いてるわ。
茶道部のお茶会は、予約制だけど、雨だった日でも、
予約は埋まるって聞いてるの」
「そっかー、じゃあ、雨でも閑古鳥の心配はないんだ」
「そうだといいんだけどね。
オズ私、もう茶道部へ行くからね。じゃあ頑張ってね」
「おお、ジャンヌもな」
お化け屋敷は、高校の文化祭の出し物の定番だけど、
1組のお化け屋敷は自信作だ。
他にもニクラスがお化け屋敷で競合している。
なんせ1組のお化け屋敷はマジで怖い。
予行演習でもクラスの女子がガチで悲鳴あげていた。
入場者の反応が楽しみだ。
もうすぐ一般来場者向けの開門の時間だ。
例年正門前には行列が出来るそうだ。
紫帆祭での飲食物に人気があり、値段も格安だけど、現金不可で、
事前に金券チケットを購入してもらい、現場での現金のやり取りはない。
クラスやクラブで荒稼ぎできないようになっている。
実際ジャンヌの茶道部も、お茶会やるけど、
一杯120円でお菓子まんじゅう付きっていってたから、
実質実費負担みたいなものだ。
クラスの情報では、正門前は、もう行列が出来て、
開門待ってる人がかなりいるみたいだ。
俺は早速そば屋の親父に着替えることにした。
初めての入場者は、女子中学生の3人連れだ。
事前に入り口の担当から情報をもらった。
暗い室内に屋台と後ろ向きで作業しているそば屋のおやじ(俺)がいる。
俺は、着物のお尻をはしょってちょんまげのかつらを被っている。
屋台の前には看板を立て、
『そば屋さん、注文お願いします』と声を掛けて下さいと書いてある。
俺は後ろの気配を注視している。
三人のうちの誰が声を掛けるかでもじもじしている。
そのうち、せいのうで、
「おそば屋さん、注文お願いします」
俺は「はいよー」と言いながら振り返ると、
「きゃー!」 一斉に悲鳴があがった。先ずは大成功だ。
おれの顔は『のっぺらぼう』で、頭からストッキングを被り、
その上にちょんまげのかつらをかぶっていたのだ。
目と眉毛の上にガムテープを貼っているのでよりリアルだ。
俺は再び後ろ向きで次の入場者を待つ。
次の場面は、ジャンヌが出演する墓場の幽霊だ。
墓場に火の魂を飛ばし、ぴゅーという音を流しながら、
白装束の幽霊が両手を前に掲げながら顔を出すオーソドックスなスタイルだ。
でも背景が、薄気味悪い墓場の雰囲気がすげー出ている。
俺が見ても鳥肌が出てくる。
隣の墓場からまた悲鳴が聞こえた。
さっきの三人娘、大丈夫だろうか?
リアル過ぎて心配になってきた。
最後が圧巻だ、刑場のシーンだ。
磔柱に白い着物を血に染めた罪人が絶命して、左へうなだれている。
そして、にわかに顔だけ正面を向き、無念の形相で目を見開く。
これもリアルな演出で、クラスでの怖さランクNO1だった。
二組目は女子高生風の二人連れだ。
これも悲鳴があがり成功した。
入り口には、5~6組が並んでるらしい。
悲鳴度からいって、今回の企画は大成功だ。
俺は一回目の出演を終え、着替えて教室の出口で、
出てくる連中の反応を確かめた。
みんな抱き合いながら出てきた、恐怖から解放された安堵感が漂っていた。
「ありがとうね、みんな怖かった?」
「もうまじで怖かった」「やばかったですよ」「ちょー怖かった」
「そっかー、みんなありがとね」




