【紫帆祭】
来週土曜日は六国高校の文化祭、紫帆祭だ。
今週から校内は、紫帆祭の準備のため、放課後は文化祭一色になる。
教室、校内空スペース、いたるところでいろんな作業をしている。
ジャンヌは茶道部でお茶会をやるし、ゴリとジュリは、演劇部で公演するらしい。
文化部の連中はみんな張り切っている。
俺たちのクラスの出し物は、〈お化け屋敷〉に決まっている。
クラスの出し物は、おもに運動部の連中が中心になってやる。
ジャンヌは、茶道部の受付とかの雑用をこなしながら、
1組のお化け屋敷にも参加する。
俺は、屋台のそば屋の親父のお化けの役だ。
俺も含めて三人で担当する。
ジャンヌは、墓場で出る女性の幽霊をやる。
髪の長い女子三人で担当する。
ゴリとジュリは、演劇部の公演があるから参加できない。
俺を含めた屋台のお化けの三人組は、屋台の作成を請け負っている。
高校の文化祭ともなると、やることは本格的だ。
屋台はおもに、段ボールとベニヤ板を使って作成する。
鋸と金槌は、足らないので自分家から持ってくる。
ジャンヌは、墓場で化けて出る幽霊の設定だから、墓を段ボールで作っている。
墓場の背景は、ベニヤ板に画用紙を張り付けて描かれる。
作成は、ジャンヌとか、美術選択の連中が描いている。
俺は、雨音で目が覚めた。
今日は紫帆祭なのに、昨日の天気予報の通り朝から雨だ。
今日1組は7時に集合だ。みんなはりきってる。
俺たちのクラスは、お化け屋敷で教室でやるから雨でも関係ないけど、
ゴリたち演劇部は、野外ステージだから、おそらく中止になるだろう。
オカアも演劇部の舞台、楽しみにしていたのに残念だ。
ジャンヌん家も両親がゴリたちの芝居、見に来るっていっていた。
なによりゴリたち演劇部の連中が、一番残念がっているだろう。
ここんとこ、土日も休み無しで、舞台に向けて稽古に頑張ってきたから。
俺は何となく落ち込んだ気分で下に降りていく。
「お早うオズ、今日雨ね。残念ね」
「オハー、オカア。ゴリたち、なんか同情しちゃうよ」
「そうよねーオズ、ゴリ君たちのお芝居、雨天中止よね。
とっても楽しみにしていたのに」
「でもオカア、来月、鎌倉芸術館で公演するんだって。
大ホールだから、満員になるように、
今日校門でビラ配りするって言ってたな」
「そうなの、それなら絶対観に行くからって、
ゴリ君とジュリさんにいっておいて」
「なにオカア、今日来ないの?」
「一応顔は出すけど、茶道部のジャンヌさんは、今年は1年生で裏方だから、
お点前とかしないんでしょ?」
「ああ、3年生は浴衣着て、作法室でお点前するんだって。
2年生は隣の被服室で椅子席でのお点前だけど、事前の予約制だから、
1年生が受付で予約の対応とかするんだって」
「だったら来年は、茶道部の抹茶、頂きに行くからね。
お母さんも、六国高校の文化祭なんて、今まで全然関心無かったけど、
オズが入学してから、六国高校生が気になってしょうがないの。
高野台の坂を車で下る時、六国高校生がいると、必ずチェックしてるの。
ジャンヌさんかな、ゴリ君かなって。
でもね、この前、PTAの会合の時、父兄から、
やっぱり六国高校に入学させて良かったって。皆さん言ってたわよ。
どこかのお母さんが、息子が高校生になったから、
すぐ髪染めるのかって思ったけど、安心したって仰ってたわよ」
「でもオカア、今日一日は、髪染めても大丈夫だって。
俺のクラスの軽音部の奴は、染めてくるって言ってたな。
同じバンド組んでる女子は、銀髪にするんだって」
「でも紫帆祭の今日一日だけで、また戻すんでしょ」
「そりゃそうだよ、そこんとこはみんなわかってるよ」
「そこが偉いとこね。ちゃんとけじめつけて切り換えられるんだから。
まじめな生徒ばかりだって、すごく評判いいわよ」
「え? オカア、そんなに六国高校評判いいの?」
「オズ、なに言ってるの、そうなのよ。
学校へ行くと、生徒たち、みんな挨拶してくれるでしょ。
なんかお母さん、とても嬉しくなっちゃった。
みんなまじめそうで感じいいんだから。
六国高校って、山の中にあるじゃない、だから環境がとってもいいから、
娘や息子を入学させておけば、悪さしないから安心だって」
「それでかあ、なんか、ほとんどの奴が部活やってるし、
帰宅部なんかほとんどいないんだぜ」
「いろんな行事やるけど、みんな一生懸命やるでしょ。
これって伝統だとお母さん思うけど」
「先生も真面目な子が大好きって感じ。あ、俺もう行くわ」
「え? オズ、まだ六時半よ。もう行くの?」
「ああ、俺、なんか、そわそわしてきたから。気になるからさあ。
俺のお化け、トップバッターだからさあ、着物きて、かつら被るから。」
「オズ、お化けやるんでしょ。じゃあ教室行っても会えないわね」
「ああ、だけど、俺の番は朝一と午後の一時で1時間ずつ担当だから、
お化けの時間以外はぶらぶらしてるよ」
「ジャンヌさんもお化けやるんでしょ? 茶道部は大丈夫なの?」
「ああ、ジャンヌはお化けっちゅうか、幽霊やるんだよ。墓場で。
ジャンヌの出番はお昼頃だから、
クラブと掛け持ちだから、一回やればいいんだって。
それ以外は作法室か隣の被服室にいると思うよ。
文化部の連中も、みんな時間調整して、
クラスの出し物も手伝うようになってるんだ」
「そうなの」
「オカア、間違ってもお化け屋敷、入んないでよ」




