【印相】
俺は朝起きて、下へ降りていくと、リビングのテレビでは、
昨日の福岡での出来事をやっている。
NHKも民放もみんな同じだ。
犯人も、一部捕まったり、自首しているらしい。
なんせ、自首するか、捕まらない限りうどん粉が落ちないのだから。
なんか、壇上で光をキャッチした女子高生は、
金髪で青い目をしていたなんて証言まで出てきている。
それも複数証言されている。これって、見る人によっては、
ジャンヌ・ダルクに見えたのかもしれない。
報道を見ていると、昨日の奇跡は、
俺たちの仕業じゃなかったみたいに思えてきた。
それはそれでいいのかもしれない。
俺も今日から普通の生活に戻れそうな気がしてきた。
今日は月曜日だ、大天使ミカエルからの、
四十九日間の修行は終ったものの、
昨日の報告と感謝の祈りを捧げるべく今朝は7時45分に集合だ。
俺はジャンヌが、気が緩んで倒れないか心配で、朝からそわそわして、
外でジャンヌを待つことにした。
ジャンヌも今朝は、大事をとって、お母さんが送ってきた。
坂の途中でゴリを拾って来た。
ジャンヌもゴリも、昨日の疲れは残ってない。
みんな元気で安心した。
ジャンヌも暫く静養して、体力を回復させてもらいたい。
きっと大天使ミカエルも、ジャンヌに静養させるだろう?
と俺は期待したい。
俺たちは神殿に入ると、すでに水晶が輝き出した。
ジャンヌが近づいただけで、凄い反応だ。
もう既に、ジャンヌは天使になりきったようだ。
祈り始めると、先週までと光の輝きが全然違う。
ジャンヌは格段に進化している。
「はい、ありがとうございました。
オズ、モンチ、今ね、大天使ミカエル様がお出ましになって、
昨日のミッション、とても誉めて頂いたの。
オズもモンチもとてもすばらしかったって。
それから、7月と8月は、六国登山はしなくていいそうなの。
そのかわり、それまで静養と体力の回復に努めなさいって仰られたの」
「そっかー、ジャンヌよかったじゃん。
俺もさあ、ジャンヌ、少しゆっくり静養できたらなって思ってたんだぜ。
思った通りだ」
やっぱジャンヌは、肉体的にも体力的にも限界まで修行したんだな。
大天使ミカエルも、厳しいだけじゃなくて、ジャンヌのこと、全て解かってるし、
慈愛の心で指導・加護してるのが理解できた。
「それでジャンヌ、役行者からメッセージはあったか?」
「ごめんなさい、オズ。
私、役行者とは、お山の頂上でしかお会いしたことないの。
でも、きっと役行者もオズの活躍をお喜びになっていらっしゃってるわ」
「そっかー、そうだよな。俺、あんまし変なこと考えると、
役行者から、ガツンとやられそうだから。何でもお見通しだからな。
で、ジャンヌ、昨日の夜、ご飯ちゃんと食べた?」
「ええ、オズ、心配してくれてありがとう。
昨日は久々にステーキだったのよ。朝もしっかり食べてきたし」
「そっかー、すぐ寝れた? テレビは見た?」
「ううん、家、普段あまりテレビ見ないの。
ご飯食べて、お風呂入って、すぐ寝ちゃった。
今朝はテレビ見たわよ。昨日のミッションのことやってたわね。
なんか、私たちがやったんじゃないみたいな錯覚に陥りそうだったわ」
「そうそう、それは俺も感じた。結局その方がいいかもな」
「そうよね」
「俺んち、帰ってから大変だったんだから。
おふくろもそうだけど、姉貴と妹がうるさくて、もう質問攻めでさあ。
あ、ジャンヌに選んでもらった博多人形のキーホルダー、
二人ともすげー喜んでた。
由希なんて、天使が選んだお土産だって、記念の宝物だなんて言ってたぜ」
「そう、二人に気に入ってもらえてよかった。
私、責任感じちゃったの。
それからモンチ、昨日、ジュリへのお土産、渡してもらえた?」
「ああ、親父にジュリん家寄ってもらったじゃん、
ジュリん家も昨日大騒ぎだったんだ。
ジュリには、福岡に行く事は言ってあったんだ。
ジュリのやつ、さすがジャンヌだって、それと、
天之宇受売命にお祈りしてくれてたんだって」
「あ、そうなの、ジュリも私たちのミッション、応援してくれていたのね。
今日登校したらお礼言わなくっちゃ」
「ところでジャンヌさあ、今朝のニュースというか、
ワイドショーだけど、壇上で光をキャッチしたのは、
金髪で青い目してたって言う証言まで出てきてるけど、
これってジャンヌ・ダルクがジャンヌの肉体に甦ったってことかなあ?」
「さあ、それはないと思うけど、神様が、私たちを護って下さるために、
いろんな魔法をお使いになられたんだと思うわ」
「そうか、ジャンヌが言うんだから間違いないよな」
「その話、昨日もやってたけど、俺も気になったけど、
金髪とジャンヌ・ダルクと全然結びついてなかったから安心してたんだ。
親父もきっと神様がかく乱してるんだろうと言っていた」
俺たち三人揃って登校した。
教室では、ジュリがもう登校していた。
ジャンヌとハイタッチのあと、がっちり握手した。
続いて俺ともハイタッチのあと握手してくれた。
「おみやげありがとね、昨日から我が家じゃみんな興奮状態なんだから。
ねえジャンヌ、受けとめた光って、落雷よりももっと凄い光なんでしょう?」
「さあ? 落雷と比較できるかは解からないけど、
光は、宇宙からのエネルギーだから、強力な光には違いないわね。
印を組んで受け止めるんだけど、印はテレビのアンテナの役目みたいなの。
でも、普通の我々の、この肉体波動ではキャッチできないの。
だからお祈りと断食によって、肉体を浄化させ、霊体波動まで高め上げたの」
「へえー、そうなんだ。さすがジャンヌね」
「よく仏像とか、観音像が印を組んでいるでしょう。
あれは宇宙からの光・エネルギーを受けているの。
印相によって、光の働きが違っているの」
「じゃあジャンヌ、観音様と同じ働きをしたっていうことか」
俺はあらためてジャンヌの凄さを認識した。
「オズ、今さらなに言ってんだよ。
俺たち、天使状態のジャンヌを、しっかり見てるだろうが」
「あ、ジュリ、私たちのために、天之宇受売命にお祈りしてくれてありがとう」
「ジュリ、ありがとな。俺、椿岸神社にお参りしたじゃん。
あれから天之宇受売命が大好きになってさ、
俺、椿岸神社を思い浮かべてお祈りするじゃん、
すると、目の前がすげー光に包まれる気がするんだ。やっぱあの神様すげーよ」
「え? オズもそう? 今回あなたたちがミッションで行ったじゃない、
私、久々にお祈りしたの。
『平成の祈り』とか、あなたたちのミッションが成功しますようにとか、
お守り下さいとか祈ったじゃない。
そうしたら、オズの言ったように、目の前が明るくなったような、
光というか、天之宇受売命を感じられたわ」
「そうか、やはりジュリは、霊媒体質っていうか、
神様を感じることができるんだな。
何にも感じないのは俺だけになったな」とゴリ。
「ねえモンチ、モンチは何も感じなくっても、
必要なことは全部考えてくれるでしょ。
私、いつも、モンチのサポートにどれだけ助けられているか。
これって、モンチが神様のみ心と直結しているからだと思うの。
だからモンチは、神様を感じたり、
光を感じたりしなくても充分素晴らしいから、気にしないでね」
「ジャンヌ、ありがとな。俺、そんなにたいしたことしてねえから。
そろそろみんな、登校してきたから、話題変えようぜ」
「そうよ、来週紫帆祭だからね」




