【長浜】
俺たちは、博多駅に向かいながら、ジャンヌが早速携帯で報告している。
「あ、お母さん、そう、ミッション、無事に終わったから。
ありがとう……ううん、まだ。
これから……お父さんいる?
替わってもらえる?」
ジャンヌのお母さんも、ほっとしてるだろう。
すでにジャンヌは、近寄りがたいミッションモードから、
普段の可憐な乙女モードになっている。
俺が、
「腹減ったな」
「私も、もうお昼過ぎてるのね、なにかおいしいもの、食べましょうよ」
「博多ラーメンどう?」とゴリ。
「わーい、九州のラーメンて美味しそう、私、食べてみたいな」
「オズ、ラーメンでいいのか?」
「俺はなんでもいいよ。ジャンヌが食べたいものつき合うよ」
「ありがとうオズ、オズ、ラーメン好き?」
「ああ、だいだいだーいすきだよ」
「あーよかった。それならラーメンで決まりね」
「昨日、親父から、福岡いくなら、
本場の長浜ラーメン食べてこいっていわれたんだ」
「そうなの、モンチのお父さん、長浜ラーメン食べたことあるの?」
「ああ、うちの親父、若いころ、
福岡支店に勤務していたことがあったんだって」
「へーえ、そうだったんだ」
ジャンヌとゴリが盛り上がってるので、
俺もオカアに報告しておくことにした。
俺たちは、基本的にはミッションの内容は、親にも話さない。
今日の事も、福岡で昼にミッションのために行くとしか言ってないし、
それぞれの親も、聞かないのが暗黙のルールになっている。
だから報告も、無事にミッションが終わって、予定通りの飛行機で帰り、
羽田までお迎え頼みますという内容だ。
ゴリの家族へも連絡を頼んでおいた。
俺たちは、再び地下鉄に乗り、赤坂という駅で降りた。
ゴリがナビで案内しながら。
「長浜ラーメンは、とんこつスープで麵が細いんだ。
近くに長浜漁港があり、漁港関係者が食べるのに、注文を受けてから、
早く食べられるように、細い麵で、ゆで時間を短縮してるそうだ」
「それからさー、ジャンヌ、九州ラーメンの特徴は、替え玉の制度があるんだ」
「替え玉の制度って、どんな制度なの?」
「麵だけお替わりできるんだ。
細麵だから、みんな結構替え玉注文するみたいなんだ」
俺たちは、ゴリから長浜ラーメンの情報を聞きながら長浜についた。
食券購入の店なので、俺とゴリは、替え玉券も購入した。
席に着くとジャンヌが、
「替え肉ってあったから、オズとモンチに、ハイ、プレゼント」
ジャンヌが替え肉券を出しながら、
「私からの感謝の気持ちよ、これからもよろしくお願いします」
ジャンヌは俺たちに両手を合わせた。
「えー、そんなのあったっけ? サンキュージャンヌ」とゴリ。
すぐにラーメンが出てきた。みんなで
「いただきまーす」
「わー、おいしい」
ジャンヌの喜びの顔を見ると、俺まで嬉しくなる。
「夕方のフライトまで時間あるから、ジャンヌ、
どこか行きたいとこあるか?」とゴリ。
「いいえ、私、福岡初めてだから、モンチやオズ、
行きたいところがあれば、私、お付き合いするわ」
「俺も福岡、初めてだし、ゴリに任せるよ」
「じゃあ、福岡一の繫華街、天神あたりを散歩して、
アイスでも食べて帰ろうか」
天神では、ゴリの姉貴と妹へのおみやげも見てまわった。
ジャンヌに選んでもらい、博多人形のキーホルダーにした。
俺たちは、夕方早目に福岡空港についた。
家へのおみやげは、オトウからは辛子明太子、
オカアからは〈博多通りもん〉というお菓子のリクエストだ、
ジャンヌもゴリも同じものを買った。
帰りの飛行機では、左側の窓側がゴリ、ジャンヌ、俺で座った。
ゴリがジャンヌに、窓側の席と交換するよういったけど、
やっぱしジャンヌは頑なに拒否していた。
離陸すると、ジャンヌとゴリは、すぐに眠りに入った。
ジャンヌは、頭を俺の肩にのせてきた。
安心しきって小さな寝息をたてている。
なんともいえぬ幸福感だ。
黒髪が、おれの胸にかかっている。
そっと髪の毛を触ってみる。
古代紫のリボンも、間近で眺められる状態だ。
今はリボンも、ことのほか可憐に見える。
俺は独り、ジャンヌとの出会いからの出来事を、
走馬灯のように思いを巡らせた。
ジャンヌが紫をまとってから、まだ一学期も終わってない。
今日の大仕事で終わりなのか、始まりなのか、今の俺にはわからない。
ただ俺は、この幸福感が永遠に続くことを願っていた。




