【神秘なる宇宙パワー】
今晩は、三回目の六国登山だ。
なんたって、ジャンヌが今朝、四十九日間、頑張ったんだから。
大天使ミカエルから、どんなお言葉があるのか。
ジャンヌに、新たな使命が課せられるのか。
嬉しさ半分、不安も半分だ。
使命の内容によっては俺たちの責任も重大だ。
展望台からは、西の空に金星が耀いている。
俺たちは、展望台正面の空に向かってお祈りを始めた。
すぐに空が明るくなってきた。
目を開け、合掌して神々を迎える。先月と同様だ。
左手上空より、役行者が、沢山の眷族を引き連れて、
右手上空より、猿田彦大神が、
最後に正面上空より 、大天使ミカエルが、天使群を引き連れて現れた。
大天使ミカエルは、ジャンヌが四十九日間、祈り通したことを讃えた。
そして、宇宙に遍満するエネルギーを、
自在にキャッチ出来るまで、肉体が浄化されたことを告げられた。
「今から、《神秘なる宇宙パワー》を受けとめる《印》を授けます」
「大天使ミカエル様、《神秘なる宇宙パワー》を受けとめる《印》をお受けいたします」
ジャンヌは、胸の前で、指をからめた合掌から、人差し指を天に指し、
ピラミッドの印を組み《平成の祈り》を祈る。
『内平らかに外なる、地平らかに天成る。
地球の安寧と世界の平和が達成されますように。
大天使ミカエル様、み心のままになさしめたまえ』
ジャンヌが祈りだすと、ジャンヌの体が紫紺と金色と白光に輝き出した。
「ジャンヌよ、宇宙に遍満するエネルギー、全てを可能に変えていく、
《神秘なる宇宙パワー》を受けとめよ」
「大天使ミカエル様、宇宙に遍満するエネルギー、全てを可能に変えていく、
《神秘なる宇宙パワー》をお受けいたします」
ジャンヌは、両足を少し開くと、両手を拡げ、天を仰いだ。
金粉が粉雪のように天から舞ってきた。
次にジャンヌは、胸の前で、左手の親指と人さし指でわっかをつくり、
掌を上に向け、右手の親指と中指で同じくわっかつくり、
左手のわっかにカギをかけ、人さし指を天に向けた。
続いて、カギを解き、左右輪っかの印を組んだまま、両手を胸の前で、
水車のように回転させながら、回転の輪を徐々に大きく、
左右に広げながら上に上げていき、七回目で右手人差し指が天を突いた。
その瞬間、閃光とともに、宇宙の彼方よりの光を、
右手人差し指でキャッチした。
同時に左手は、肘から先を前に出し、
親指と人差し指でのわっかのまま、掌を上に向けた。
ジャンヌの指先から光がほとばしってる。
宇宙に遍満するエネルギーが無限に降り注いでいる。
ジャンヌの今までの苦労が報われた瞬間だ。
ジャンヌの一連の動作と指使いは、観ていてとても優雅だ。
やがて、《神秘なる宇宙パワー》を受けとめる《印》の
伝授も滞りなく終わった。
至宝の芸術鑑賞に浸っていたのは一瞬だった。
そのあと、重大なミッションが待っていた。
大天使ミカエルは、印の伝授のあと、
「ジャンヌ」
「はい、大天使ミカエル様」
ジャンヌは、膝まずき、合掌して、大天使ミカエルを見上げている。
俺とゴリもジャンヌに倣う。
「明日、昼までに福岡に移動しなさい。
使命は明日の朝、水晶で指示します」
「はい、大天使ミカエル様」
「ジャンヌ、いかなる時も、私が護っています。
安心して使命をまっとうしなさい」
「はい、大天使ミカエル様。みこころに従います」
一瞬に神々が消え、頂上に静寂が戻った。
喜びもつかの間、やはりジャンヌには、
それなりの厳しい使命があるのを痛感した。
ジャンヌは、健気にも、大天使ミカエルに全幅の信頼を寄せ、
『なぜ』とか『どうして』とかは、針の穴ほどの疑念も挟まない。
俺もジャンヌと一蓮托生の運命だ。
ジャンヌの爪の垢でも煎じて飲まなきゃいかん。
ゴリは、それなりの自覚と覚悟はあるはずだ。
「ジャンヌ、やっぱ、今朝見せられた、総理の講演は福岡で行われるんだ」
「そうみたいね」
「今授かった印で、総理を救うんだ」ジャンヌは頷くと、
「それが神様のみ心なのね。
私たちは、神様のみ心に従っていればいいから、ある意味、気が楽ね」
さすがにジャンヌだ、少しの迷いもない。
「ジャンヌ、早速、明日の飛行機のチケット、手配しないとな」
ゴリは冷静だ。ゴリはしっかり使命を果たしている。
「明日か、それにしても、急なミッションだな」
「ごめんなさい、オズ、急なお話で」
「ジャンヌ、俺に謝んなよ!
俺、ただ、びっくりしただけだから。
前にも言ったけど、俺、ジャンヌのことは、
全身全霊で護るからって言ったろ。
ジャンヌがさっき、大天使ミカエルへ、全幅の信頼していたろ。
俺はジャンヌを、全幅の信頼するから。
ゴリが言ったように、早く明日の準備しようぜ」
俺たちは、早速下山して明日の準備だ。
下山したら、ジャンヌとゴリの両親もそろっていた。
それぞれの両親は、笑顔でお祝いモードだ。
テーブルの上には、お寿司とか刺身、つまみ類がのっていた。
乾杯用のグラスも用意されていた。
それを遮るようにゴリが、
「大天使ミカエルから指令が下りました。
明日昼までに、福岡に行けとのご下命でした」
一瞬親たちは固まった。
「これから飛行機のチケットの手配とか、お願いしたいんですけど」
「お母さん、詳しくは、明日の朝、神殿の水晶で指示されるそうなの」
ジャンヌのお母さんは、ジャンヌを見つめると、急に泣き出した。
「お母さーん!」
ジャンヌは母親にかけより抱きしめた。
「いつも心配ばかりかけて、ごめんなさい」
おそらく、娘に、次から次と下される使命に、
母親として、耐えきれないものが込み上げたのだろう。
お母さんが、小さな声で、
「出来ることなら、私が代わってあげたい」
また誰かの泣き声が聞こえた。
振り返るとオトウだった。
もらい泣きしてるみたいだ。
「皆さん、ごめんなさい。
神様のご指示というのは、解っているんですが、
健気にこなしていくジャンヌが不憫に思えて」
「お母さん、ジャンヌは、大天使ミカエルを、全面的に信頼してるし、
使命感に燃えています。
それに、自分の使命に、感動と喜びを感じてるから。
もちろん俺もゴリも同じ思いです。
だからお母さん、悲しまないで下さい」
「俺たち、ジャンヌとずっと一緒にやって来ましたけど、
ジャンヌに悲壮感とか、不平不満は一切ありませんでしたし、
オズが言ったように、ジャンヌは喜びに魂が震えてるくらいですよ」
「ありがとう、オズくん、モンチ」
「そうだったわね。オズ君、モンチャン。いつもありがとうね」
「お母さん、俺たち、最初に水晶で、大天使ミカエルから、
いかなる時も、護っているから、安心しなさいって断言されました。
だから明日のミッションも心配してません。なあ、ゴリ」
「ああ、さっきも大天使ミカエルが、あらためて同じこと、
ジャンヌに言ってました」
「モンチャン、もう大丈夫だから。
明日の会計、またお願いね。
そうそう、早速明日の飛行機のチケット、手配しないと。
モンチャン、調べてくれる?」
「はい、わかりました」
ゴリがスマホで調べている。
ゴリの親父さんが、
「彦、福岡空港から博多駅まで、地下鉄で10分くらいだから、
羽田発9時過ぎの飛行機で、約一時間45分だから、11時前に着くから」
「サンキュー、親父、羽田発9時頃の飛行機で調べてみる」
「大澤さん、せっかくお祝いして下さるのに、すみません」
「オズ君とかモンチ君には、ほんとによくしていただいて」
とジャンヌのお父さん。
「それは娘さんですもの、ご心配ですよね」オカアがフォローしている。
「家も娘がいますから、大橋さんの奧さんのお気持ち、よくわかりますよ。
ジャンヌさん、いくら本人が大丈夫とか、心配しないでって言っても、
母親としては、やはり心配するものよ。
お母さんの気持ち、わかってあげてね」
ゴリのお母さんもいいこというな。
「はい、お母様。お母さんに感謝します」って言いながら、
今度はお母さんの後ろから抱きしめた。
「まあ、素直なお嬢さんですね」とゴリのお母さん。
「お母さん、9時30分発のJAL が、3席だけ残ってます。
その前の便は、ANAもJALも満席です」
「明日は日曜ですからね、福岡空港から、地下鉄は、
けっこう本数出てますから、お昼ギリギリでしょうね」
「お母さんお願い、きっとその3席、神様が、私たちのために、
とっておいて下さったのね。ミッションにも必ず間に合うはずよ」
「じゃあジャンヌ、9時30分のチケット、予約入れるわよ」
「やれやれ、チケットがゲットされたから、ひと安心ですね。
ここでジャンヌさんの、四十九日間の頑張りを讃えて、乾杯しましょうか」
ジャンヌと、ゴリのお父さんに向かってオトウ。
さっそく席を立って、キッチンへビールを取りにいく。
オカアに、
「奧さんと子供たちに、ジュースか何か飲み物を」
みんなリビングに集まり、オトウの音頭で乾杯した。
オトウも上機嫌で、定期的に集まりましょう。
今度はもっと早い時間にやりましょうと言っていた。
でも今日はまだ、9時前だ。
「次回はぜひ家で」
ジャンヌのお父さんが誘っている。
「連休中には、子供たちにいろいろご馳走していただいて、
次回は是非とも家でやらせて下さい。
ねえ、お父さん」とゴリのお母さん。
それから、ジャンヌのお父さんから、
今回の福岡への航空券代とかの費用は、お伊勢参りと同様に、
全て大橋家で負担させてくださいと言っていた。
うちの両親も、ゴリの両親も、今回は各自負担するからといったけど、
前回同様、ジャンヌのお母さんにしては、譲らない雰囲気だ。
結局今回も、すべての費用は、大橋家の負担でということになった。
ジャンヌの家、やっぱ金持ちなんだな。見た目は普通の家なんだけどな。
豪邸でもベンツに乗ってるわけじゃないし。




