【沙也香のお礼】
校門で、父親と、私立の制服を着た娘の、二人に声を掛けられた。
娘は中学生のようだ。
ジャンヌは父親を見て、娘をみた。
「あ、沙…也…香…ちゃん?」
沙也香ちゃんは、顔が泣き崩れながら頷いた。
ジャンヌは、優しく沙也香ちゃんを抱きしめると、
「沙也香ちゃん、安心して、もう絶対大丈夫よ。
沙也香ちゃんの祈りは、ちゃんとイエス様が受けとめられたわ。
イエス様がね、大天使ミカエル様に、
沙也香ちゃんの家族を救ってあげなさいって。
沙也香ちゃん、偉いわね」
ジャンヌと沙也香ちゃんを見つめるお父さんも、
顔をクチャクチャにして泣いている。
「ジャンヌお姉さん、ありがとうございました。私……私……」
沙也香ちゃんは、言葉にならない。ジャンヌが強く抱きしめる。
「安心、安心。沙也香ちゃんの信仰が、お父さんを救ったのよ。
だから、自分自身を褒めてあげてね」
「ジャンヌお姉さん、私、毎日ジャンヌお姉さんに感謝しているの。
そして、ジャンヌお姉さんに、神様のご加護がありますようにって、
お祈りしているの」
「まあ、沙也香ちゃん、私、とっても嬉しいわ。ありがとうね」
「でも私、どうしても、ジャンヌお姉さんに会いたかったんです。
会って直接お礼を言いたかったんです。
パパに、どこの高校か聞いたけど、判らないっていうし、
制服が、グレーのスカートに紺のブレザー、
それに、紫のリボンしていたっていうから、六国高校だって判ったんです。
今日、学校が早く終わるから、パパに言って、連れてきてもらったんです。
お会いできてよかった」
「私も沙也香ちゃんに会いたかったの。あれからどうしているかなって」
「ジャンヌも、沙也香ちゃんご一家をお守り下さいって、
お祈りしていたよ。
人のためにお祈りするって、素晴らしいことだね」
沙也香ちゃんがゴリを見つめ頷いた。
また沙也香ちゃんの目から涙がこぼれた。
ゴリのナイスフォローだ。
ここでジャンヌはお父さんに目を移し
、
「お父さん、本当によかったですね。沙也香ちゃんを褒めてあげて下さい」
「あのー、ジャンヌさん、なんてお礼を申し上げてよいものやら」
お父さんもまた涙が、
「私、ジャンヌお姉さんに、もっともっと感謝したい。
自分でもわからないくらい、沢山お礼言いたかったんです」
「ありがとう、沙也香ちゃん。
それなら、沙也香ちゃん。
私が、大天使ミカエル様から授かった《平成の祈り》という、祈り言があるの。
沙也香ちゃんも祈ってくれると、お姉さん、嬉しいんだけど」
沙也香ちゃんが喜びに目を輝かせ、
「もちろんです。ジャンヌお姉さん」
「いつも沙也香ちゃん、イエス様の、主の祈りを祈っているでしょ。
その主の祈りの後に、祈ってくれるかな?」
「沙也香、絶対毎日お祈りします」
ジャンヌは、胸の前で指をからめた合掌をし、ピラミッドの印を見せてから。
「それでは、『内平らかに外成る、地平らかに天成る。
地球の安寧と世界の平和が達成されますように』で、私はこれに加えて、
『大天使ミカエル様、み心のままになさしめたまえ』ってお祈りしているの」
沙也香ちゃんもピラミッドの印を組んで、復唱した。
「わー、とっても素晴らしいお祈りですね。
イエス様のお祈りに似ていますね。
私、お家に帰ったら、早速お祈りします」
「嬉しいわ、沙也香ちゃん」
「あ、ジャンヌさん、今日、ジャンヌさんをお待ちしていたのは、
お礼と、ご報告がありまして。
あれから私、家に帰ってから、あの日の出来事を、
妻と沙也香に、すべて話しました」
「え?」とジャンヌは、沙也香ちゃんを見つめると、
沙也香ちゃんは頷いた。
「ハイ、私が銀行強盗をしようとしたことも。
ジャンヌさんに止められ、私を破滅から救っていただけたのも、
沙也香の祈りがあったからだと。
だから、自分の娘ですけど、沙也香に感謝したかったし、
神様の存在を信じることができました。
なんでもお見通しの神様に、素直になろうと思ったんです」
ジャンヌはほーっという驚きの表情で、
「お父さんも、とっても素晴らしいですね」
「それから、まもなく倒産して、この家にも住めなくなるし、
無一文になってしまうからと、話したんです」
お父さんは、沙也加ちゃんを見つめ、お互い頷き合った。
「そしたら、沙也香に励まされましてね、
沙也加は、今の私立中学を辞め、地元の公立中学に転校して、
中学卒業したら、働くって言うんです。
そして弟の裕太を大学まで出すっていうんですよ」
お父さんは、そこまで話すと、泣き崩れて声にならない。
「私は、絶対、正しく生きるんだって、目覚めさせられました。
だから私、もう無一文になっても平気っていうか、完全に開き直りました。
だから、ジャンヌさんに言われて買った宝くじも、
期待もせず、家内に渡したんです」
俺とゴリは顔を見合わせ、次の言葉に注目した。
「そうしたら、なんと、一等二億円が当たったんです」
俺とゴリは、お互い驚きの表情で頷き合った。
「宝くじで、倒産を免れることができました。
借金も返済でき、沙也香も今の私立中学、辞めないで済みました。
今回、私も、ジャンヌさんに、ぜひお会いして、
お礼と報告がしたかったんです。
お話出来てほっとしました」
ここまで話すとお父さんは、泣きながら、
沙也香ちゃんの肩を強く抱きしめた。
「これからは、私もジャンヌさんが祈る《平成の祈り》を祈らせてもらいます」
「ありがとうございます。お父さん。
この《平成の祈り》を祈ると、必ず大天使ミカエル様のご加護がありますよ」
「ジャンヌさん、感謝の気持ちを、ジャンヌさんが授かった
《平成の祈り》を祈らせていただくことで、ご恩に報いたいと思います」
「お父さん、それだけで充分です。
どうかこれからも、どうぞお健やかにお暮らし下さい。
沙也香ちゃんも元気でね」
二人は名残惜しそうに坂を下っていった。
俺たちは、二人が見えなくなってから、
「ジャンヌ、やっぱし宝くじ、当たったんだ。でもよかったな」
「オズ、神様って、やろうと思えば、なんでもできちゃうんだな。
俺、今回の事で、ジャンヌをますます尊敬するよ」
「モンチ、ありがとう。でも、モンチとオズのサポートがあったからよ。
二人とも、私以上に素晴らしいわ」
「ジャンヌ、今回俺も、なんか、ジャンヌに協力できて、心が大いに満たされた」
「二人とも、これからもよろしくお願いします」
ジャンヌも心から喜んでいた。いい笑顔を見て、また嬉しさが込み上げた。




