表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第四章 サッカー部
36/105

【ゴール】

「あれ、うちの学校のジャージ着てるの、大橋じゃないの?」


 小林が気がつく。

 キャプテンの三好先輩が、


「大澤、大橋さん呼んで来い」

「えっ、いいんすか? あいつ、ベンチじゃ……」


「応援に来てくれたんだろ?」

「ハイ、そうだと思います」


「それならベンチに迎えなきゃ失礼だろう」

「はい」


「だから早く呼んで来いって」


 グランドの入口に立っていたジャンヌを迎えに行くと、


「オズ、遅くなってごめんなさい」

「ぜんぜんドンマイ、それよりジャンヌ、

ここでは俺のこと、オズって呼ぶなって言ったろ」


「あ、ごめんなさい。大澤君」って言って、すぐ微笑むから


「俺にニコニコするなって言ったろ」


 俺は少しきつめにジャンヌを叱った。


 俺とジャンヌは、ベンチに向かいながら、ジャンヌが俺に、


「大澤君、ここでは、ジャンヌって言ったらダメですよ」と、

俺を叱りながら、やっぱり嬉しさを隠せない奴だ。


「鎌倉学園て、北鎌倉駅からだと、六国高校より近い気がしたわ」

「六国高校は、登りがきついからな」


「でも、第二グランドって、結構奥にあるんですもの。

建長寺の奥も、半僧坊とか、かなり奥まであるわね」


 話ながらベンチにくると、キャプテンの三好先輩が


「大橋さん、応援ありがとう」といいながら、ニヤけまくっている。


「初めまして、1年1組の大橋です、

いつも1年生がお世話になっています」と挨拶した。


 俺の名前を出さなかったのは花丸だ。

 三好先輩は照れながら、


「いやー、PTAの保護者から、応援頂いてるみたいですねえ」


 なんて自分も敬語調になっている。


 3年の山田先輩が

「三好、お前も保護者モードになってるじゃん」


 ジャンヌは、バスケットからクッキーを取りだしながら、

「これ、私が焼いたんですけど、皆さんで召し上がって下さい」


 恥ずかしそうに三好先輩へ渡した。


 三好先輩は、

「おう、差し入れ? 

 わー、気がきくなー、サンキューね。

 みんな、大橋さんからクッキーの差し入れだぞ」


「こんなにいっぱいいの?」

「ハイ、何人いらっしゃるか、判らなかったので、

沢山作ってしまったんです」


「じゃあ、鎌学の連中にもあげていいかな?」

「あ、ハイ」


「向こうのチームのキャプテン、俺と同じ小学校で、

一緒にサッカーやってた友達でさ。

 トップチームは今日、招待試合で監督、コーチもそっちへ行ってて不在なんだ、

あいつら留守番チームって訳、だからリラックスしといて」


 三好先輩は、ジャンヌに並べた椅子を指しながら、

鎌学のベンチへ差し入れのお裾分けに。


 二人の会話は断片的に聞こえてくる、三好先輩が、体を、

端の椅子に座っているジャンヌの方に向けて、顎を少ししゃくった。


 向こうのキャプテンが、受け取ったクッキーをかかげ、

ジャンヌに軽く頭を下げた。


 ジャンヌも二人の様子を見て、立ち上がって会釈した。


 向こうのキャプテンが、三好先輩に

「あの可愛い子、お前んとこのマネージャー?」


 三好先輩が頭を横に振る。


「じゃあお前の……かよ?」小指を三好先輩の鼻先に挙げた。


「そんなんじゃあねえよ」

「なんだ、お前の彼女でないんなら紹介してくれよ……」


 俺は、聞こえないふりをしながら、試合の準備をする。


 三好先輩から集合がかかり、第一試合のスタメンが発表になった。


 右バッグのレギュラーの、小林が控えに回り、

替わりに俺がスタメンだ。


 三好先輩のやつ、俺がジャンヌを呼んだから、

ご褒美のスタメンって訳かよ?


 小林が、ジャンヌの隣に座ってくれた。


 ジャンヌも、1年生の知り合いが、側にいた方が心強いだろうし、

小林には彼女がいるから安心だ。


 なんてったって、先輩たちが、

ジャンヌにチョッカイ出されるのが、一番心配していたんだから。


 試合は前半0対0で進んでいたが、20分過ぎに攻め込まれ、

ゴール前の混戦で、俺の前にボールが来た。


 三好先輩が、

「大澤クリア!」


 俺は、右足で目一杯蹴り挙げた。

 何とボールは、三好先輩のケツに激突してオウンゴールとなってしまった。


 うちのベンチから、ジャンヌの、


「ヤッター」というはしゃぎ声が聞こえた。


 ベンチでは、思はず立ち上がったジャンヌの、

袖を小林が引っ張り、座らせながら、


「お前、オウンゴールだろ。

 どっちのゴールに入れたと思ってるんだ」

「え?」


「大澤の落ち込んだ姿、見てみろよ」


 三好先輩が、ケツを擦りながら、


「大澤ドンマイドンマイ」って言ってくれた。


 相手のメンバーが戻りながら、


「向こうのマネージャー、俺達応援してんのか?」

「イヤ、大チョンボなのに、あの歓びようじゃ33番、

よっぽどマネージャーに嫌われてんじゃねえの?」


「そうかもな、あんなにマブイのに、結構性格悪かったりして」

「女って、見かけじゃわかんねえからな……」


 前半終了で、ベンチに戻ると、

敢えてジャンヌから離れて、見ないように休んだ。


 俺は、ジャンヌに腹も立たなかったが、

よそよそしくしとくのに越したことはない。


 ジャンヌは、俺が怒ってるって、思っているかもしれないけど、

ここではその方が無難だ。

 でも、ちらっと見ると、ニコニコしていて、こたえてないらしい。


 後半は小林と交替だ。


 第一試合は俺のオウンゴールで0対1で負けてしまった。


 一試合観ると、ジャンヌは三好先輩へお礼に行き、帰るからと言いに行った。


 ジャンヌは、夕方用事が有るからと、三好先輩もすんなり了解した。


 ジャンヌは鎌学のキャプテンへも挨拶に行き、


「お世話になりました。皆さん、とってもお上手なんですね。

 実力の勝利でしたね。おめでとうございます。

 凄く迫力があって、楽しませて頂きました。有り難うございました」


 キャプテンは『はあ?』っていう表情で口を開け、でもニヤけている。


「もう帰っちゃうの? クッキー有り難うね」


 とても残念そうな顔をしていた。


 ジャンヌには、一試合だけ観て帰るよう厳命していた。

 最後までいると、何かとチョッカイ出されそうで、心配だからだ。


 ジャンヌが帰る後ろ姿を見て、三好先輩が、


「大澤、お前が大橋さんに、ジャージ着て来いって言ったのか?」

「いえ、何か?」三好先輩は、目でジャンヌを追いながら、


「イヤ、そうか、大橋さんの、私服姿も見たかったが、

ジャージも似合ってたなー」


 やっぱり一試合で返してよかった。やれやれだ。


 二試合やって終了になったが、三好先輩が、


「大澤、大橋さんに、マネージャーやってくれないか、聞いてみてよ」


 ほら、やっぱり来た。


「あいつ、サッカーのこと全然知りませんよ。

 それに、何にも出来ませんよ」


「構わん、構わん、何にもしなくていいから」

「それじゃ、マネージャーやる意味ないじゃないですか」


「チームにいるだけでいいんだから」

「うえー? それはナイッスよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ