【鎌倉学園】
「お前、バカか!」ゴリが俺を怒鳴った。
ゴリも、何事かと部活を休んで、かけつけてくれた。
「ジャンヌの彼氏って、お前に決まってるだろ、
お前意外に誰がいるんだよ」
「ジャンヌは、彼氏がいるって言って、真っ赤な顔して、下向いちまって、
なんにもしゃべらなかったんだ。
俺に顔向けできなかったんじゃないかなって」
「だからお前はバカだっていうんだ。
ジャンヌの方が、先に告ってんのに、
まともに相手の顔、見られるわけないだろう」
「そうかなあ?
ところで、告ってんのとかいったが、どういう意味?」
「お前、告るって、知らないのか? マジで?」
「ああ」
「告白することだろうが!
お前、中学の時、女の子から、告られなかった?
お前、サッカー部だったから、モテたろ」
「いや」
「オズに惚れた子は可哀想だよな、本人、鈍いから、わかんないんだから。
ジャンヌも含めて」
「ゴリ、ジャンヌ、中学ん時、付き合ってた奴、いなかったかな?」
「ジュリが言ってたけど、ジャンヌ、
男子と一回も付き合ったことないって、言ってたみたいだぞ。
見るからに、奥手じゃねえか」
「じゃあ、ジャンヌが、今、付き合ってる奴いないか、
ジュリに聞いてもらってくれよ」
「オズ、お前、そんなに、ジャンヌのこと、信じられないのか?」
「確かめないと不安なんだ」
「しょうがねえなー、じゃあ、もうすぐ、あいつ、来るから訊いてみな」
「ジュリが?」
「ああ、さっき、ジュリに、オズが、
『ジャンヌのことで、相談があるからおれの家に来てくれって』言うから、
今日俺も、部活休んでオズん家へ行くからって言ったんだ。
そしたら、ジュリの奴、『どんな相談』って聞くから、
『わかんないけど、オズ、今日、部活休むって、深刻な顔してたぞ』って言ったら、
ジュリの奴、『私も行く』って」
「そうか。ジュリにこそ聞いてみたかった」
「あいつ、男女間の問題に、首突っ込むの好きだし、情報通だから。
誰と誰が付き合っているとか、よく知ってるんだ」
そう話していると、玄関のチャイムが鳴った。
「オズ、あんたって、本当にバカね。
ジャンヌが彼氏っていうのは、オズしか考えられないじゃない。
ジャンヌが、オズ命っていうの、わかんないの?
ジャンヌがオズを見る目と、他の人を見る目と全然違うよ」
「ジャンヌは、いつも、みんなに微笑んでるじゃん」
「ゴリ見る目と、オズ見る目も、全く違うよ」
「ジュリ、オズったら、ジャンヌに彼氏いないか、
ジュリに聞いてくれって言うんだ。アホだろ」
「そんな分かり切った事聞いたら、
私がジャンヌの信頼無くしちゃうよ」
「オズ、あんたも、間違ってもジャンヌに、
彼氏がいるかなんて、聞いちゃダメだからね。
聞いたらジャンヌ、すっごく傷つくよ」
「だから言ったろ」
「そもそも、ジャンヌが、オズのユニフォーム姿見てみたいなんて、
他に彼氏がいたら言うわけないでしょ。
オズ、あなた、もっと自信持ちなさいよ」
ジュリは、ゴリから話を聞き、ジャンヌを学校に足止めしておいた。
ジャンヌに貸していたCDを返すの忘れたから、
返したいというメールが着ていたので、
オズの家へ持って来るよう返事しておいた。
再び玄関のチャイムが鳴った。
三人が顔を見合わせ、ジュリが立っていった。
玄関でジャンヌが、
「ごめんねー、学校で返すの忘れちゃって」っていいながら、
ジュリとリビングへ入って来た。
ジャンヌは、ゴリを見ると、
「わー、モンチも来ていたんだ」と微笑み、
次に俺を見て、
「オズぅ、今日部活は?」とジャンヌ、
「今日、用事あって休み」って言ったら、
「そうなんだ」って言って俺にも微笑み。
ジュリが、ジャンヌがゴリと俺を見る目が違うって言ってたけど、
俺には同じにしか見えない。
「みんなお揃いで、何か相談事?
私、じゃまなら直ぐ帰るわ」
「私もゴリが、オズん家に行くっていうから、私も来ただけ。
用事はもう済んだみたいよ。
ね、オズ」とジュリは、意味ありげに最後を強調した。
「あー良かった、それなら私も、ここにいてていいんだ」
「ジャンヌって、サッカー部で、人気なんだって?」とジュリ。
ジャンヌの顔がサッと赤くなり、下を向いて、
「オズぅ、お話したの?」
俺はうろたえながら、
「ジャ、ジャンヌ、ごめん……」
「オズが困ってんだもん。
私達、仲間でしょ、隠し事は無しよ。ね、ジャンヌ」
ジュリに言われ、ジャンヌはコクりと頷く。
ジャンヌも納得で俺、安心した。
「みんな、ごめんなさい。
私が、オズのサッカーの試合観たいなんて、我儘いうから」
「ジャンヌのせいじゃないって。俺達に謝ることないよ」とゴリ。
「だいたい、オズがしっかりしないから、こういう事になるのよ」
ジャンヌは顔を挙げ、心配そうに俺をちらっと見る。
「いくら、先輩から、ジャンヌを紹介しろとか、
彼氏いるか聞いて来いって言われても、キッパリ断るか、
適当にあしらっておけばいいでしょ」
ジャンヌは、真剣な表情で、ジュリを見ている。
「先輩たちに、『大橋には彼氏がいます』って言っても、
簡単に諦める訳ないでしょ、じゃあ、
『彼氏が誰だか聞いて来い』って言われるに決まってるじゃない。
そしたら、オズ、
『彼氏は僕です』ってはっきり言えるの?」
ジュリは、ちらっと、ジャンヌの反応を見る。
ジャンヌは又、赤くなってうつ向いてしまった。
「私、オズの試合、観に行かなくて、よくってよ」
しまった!
俺は今日、三好キャプテンに、ジャンヌが試合観に来たがっていること、
今週土曜日に、鎌倉学園との練習試合があって、
ジャンヌを観に来させることを決めてしまっていた。
「あのさージャンヌ」
「なに? オズ」
俺のいいにくそうな言葉の調子に、ジャンヌは一瞬不安げな表情をした。
「俺さぁ、今日、キャプテンに、話たんだよ」
みなに一斉に緊張が走った。
みんなは俺が、ジャンヌの彼氏の話をしたと思ったらしい。
「いや、違うんだ。
ジャンヌがサッカーの試合、観たがってるって、キャプテンに話したんだ。
そしたら、今週土曜日に、鎌倉学園と練習試合あるから、
内輪の試合だから、観にきていいからって話しになったんだ」
俺は、そこまで話すとジャンヌを見た。
「わー、オズの試合、観に行ってもいいの?」
ジャンヌは目を輝かせて喜んだ。
「ちょっと、オズ、『鎌学』って男子校じゃないの。
そんな狼の群れみたいなところへ、
子羊を一匹、放り込むようなものじゃないの」
ジャンヌは叉も不安げに、
「私、男子校って、行ったことないんだけど、
狼の群れみたいに、怖いとこなの?」
「そんなことないって。
いかにも男子校が、女性に餓えた連中しかいないみたいじゃん。
日中、部活を見学に行くんだから大丈夫だよ」
ゴリが援護してくれた。
「それに、試合は『鎌学』の第二グラウンドって言ってたから、
第二グラウンドは、校舎の奥の方にあるらしいし、
鎌倉学園て、建長寺の経営だから、建長寺の境内みたいなもんさ。
心配ないよ。だいいち、俺がいるんだぜ、絶対大丈夫だよ」
ジャンヌは、俺の顔を見て、にこりと頷き、ジュリを見た。
「ジャンヌ、あなた、試合見に行っても、みんなの前で、
『オズぅ……オズぅ……』って、
オズって呼んだらダメだからね。でれでれしちゃダメよ。
できるだけ知らんぷりしてなさい」
ジャンヌは下を向いて頷いた。
「できるだけ俺に近づくな」
ジャンヌは叉も不安げ顔で俺を見て、
「ハイ」って返事した。
「たかがサッカー観戦に、大事だな」ってゴリ。
「ジャンヌがモテるんだから、しょうがないじゃないの。
それに、男性に全く免疫無いし。心配じゃない」
「ジュリ、いろいろ心配してくれてありがとう」
「あとは当日、オズが格好いいプレー見せるだけね」
「俺、バッグだし、それに控えだから、出れるかわかんないし」
ジャンヌは俺に、
「私、オズが試合に出られなくて、ずっとベンチでも、
がっかりしないから、私のことは気にしないで。
オズの33番の、ユニフォーム姿が見られれば、それでいいの」
「ちょっとおー、ゴリぃー。
この二人、どうにかしてやってよー。もー」




