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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第四章 サッカー部
35/105

【鎌倉学園】

「お前、バカか!」ゴリが俺を怒鳴った。


 ゴリも、何事かと部活を休んで、かけつけてくれた。


「ジャンヌの彼氏って、お前に決まってるだろ、

お前意外に誰がいるんだよ」


「ジャンヌは、彼氏がいるって言って、真っ赤な顔して、下向いちまって、

なんにもしゃべらなかったんだ。

 俺に顔向けできなかったんじゃないかなって」


「だからお前はバカだっていうんだ。

ジャンヌの方が、先に告ってんのに、

まともに相手の顔、見られるわけないだろう」


「そうかなあ? 

 ところで、告ってんのとかいったが、どういう意味?」


「お前、告るって、知らないのか? マジで?」

「ああ」


「告白することだろうが! 

 お前、中学の時、女の子から、告られなかった? 

 お前、サッカー部だったから、モテたろ」

「いや」


「オズに惚れた子は可哀想だよな、本人、鈍いから、わかんないんだから。

 ジャンヌも含めて」


「ゴリ、ジャンヌ、中学ん時、付き合ってた奴、いなかったかな?」


「ジュリが言ってたけど、ジャンヌ、

男子と一回も付き合ったことないって、言ってたみたいだぞ。

 見るからに、奥手じゃねえか」


「じゃあ、ジャンヌが、今、付き合ってる奴いないか、

ジュリに聞いてもらってくれよ」


「オズ、お前、そんなに、ジャンヌのこと、信じられないのか?」

「確かめないと不安なんだ」


「しょうがねえなー、じゃあ、もうすぐ、あいつ、来るから訊いてみな」

「ジュリが?」


「ああ、さっき、ジュリに、オズが、

『ジャンヌのことで、相談があるからおれの家に来てくれって』言うから、

今日俺も、部活休んでオズん家へ行くからって言ったんだ。

 そしたら、ジュリの奴、『どんな相談』って聞くから、

『わかんないけど、オズ、今日、部活休むって、深刻な顔してたぞ』って言ったら、

ジュリの奴、『私も行く』って」


「そうか。ジュリにこそ聞いてみたかった」


「あいつ、男女間の問題に、首突っ込むの好きだし、情報通だから。

 誰と誰が付き合っているとか、よく知ってるんだ」


 そう話していると、玄関のチャイムが鳴った。


「オズ、あんたって、本当にバカね。

 ジャンヌが彼氏っていうのは、オズしか考えられないじゃない。

 ジャンヌが、オズ命っていうの、わかんないの? 

 ジャンヌがオズを見る目と、他の人を見る目と全然違うよ」


「ジャンヌは、いつも、みんなに微笑んでるじゃん」


「ゴリ見る目と、オズ見る目も、全く違うよ」


「ジュリ、オズったら、ジャンヌに彼氏いないか、

ジュリに聞いてくれって言うんだ。アホだろ」


「そんな分かり切った事聞いたら、

私がジャンヌの信頼無くしちゃうよ」


「オズ、あんたも、間違ってもジャンヌに、

彼氏がいるかなんて、聞いちゃダメだからね。

 聞いたらジャンヌ、すっごく傷つくよ」


「だから言ったろ」


「そもそも、ジャンヌが、オズのユニフォーム姿見てみたいなんて、

他に彼氏がいたら言うわけないでしょ。

 オズ、あなた、もっと自信持ちなさいよ」


 ジュリは、ゴリから話を聞き、ジャンヌを学校に足止めしておいた。

 ジャンヌに貸していたCDを返すの忘れたから、

返したいというメールが着ていたので、

オズの家へ持って来るよう返事しておいた。


 再び玄関のチャイムが鳴った。


 三人が顔を見合わせ、ジュリが立っていった。


 玄関でジャンヌが、

「ごめんねー、学校で返すの忘れちゃって」っていいながら、

ジュリとリビングへ入って来た。


 ジャンヌは、ゴリを見ると、

「わー、モンチも来ていたんだ」と微笑み、


 次に俺を見て、

「オズぅ、今日部活は?」とジャンヌ、


「今日、用事あって休み」って言ったら、


「そうなんだ」って言って俺にも微笑み。


 ジュリが、ジャンヌがゴリと俺を見る目が違うって言ってたけど、

俺には同じにしか見えない。


「みんなお揃いで、何か相談事? 

 私、じゃまなら直ぐ帰るわ」


「私もゴリが、オズん家に行くっていうから、私も来ただけ。

 用事はもう済んだみたいよ。

 ね、オズ」とジュリは、意味ありげに最後を強調した。


「あー良かった、それなら私も、ここにいてていいんだ」


「ジャンヌって、サッカー部で、人気なんだって?」とジュリ。


 ジャンヌの顔がサッと赤くなり、下を向いて、

「オズぅ、お話したの?」


 俺はうろたえながら、

「ジャ、ジャンヌ、ごめん……」


「オズが困ってんだもん。

 私達、仲間でしょ、隠し事は無しよ。ね、ジャンヌ」


 ジュリに言われ、ジャンヌはコクりと頷く。


 ジャンヌも納得で俺、安心した。


「みんな、ごめんなさい。

 私が、オズのサッカーの試合観たいなんて、我儘いうから」


「ジャンヌのせいじゃないって。俺達に謝ることないよ」とゴリ。


「だいたい、オズがしっかりしないから、こういう事になるのよ」


 ジャンヌは顔を挙げ、心配そうに俺をちらっと見る。


「いくら、先輩から、ジャンヌを紹介しろとか、

彼氏いるか聞いて来いって言われても、キッパリ断るか、

適当にあしらっておけばいいでしょ」


 ジャンヌは、真剣な表情で、ジュリを見ている。


「先輩たちに、『大橋には彼氏がいます』って言っても、

簡単に諦める訳ないでしょ、じゃあ、

『彼氏が誰だか聞いて来い』って言われるに決まってるじゃない。

 そしたら、オズ、

『彼氏は僕です』ってはっきり言えるの?」


 ジュリは、ちらっと、ジャンヌの反応を見る。


 ジャンヌは又、赤くなってうつ向いてしまった。


「私、オズの試合、観に行かなくて、よくってよ」


 しまった! 

 俺は今日、三好キャプテンに、ジャンヌが試合観に来たがっていること、

今週土曜日に、鎌倉学園との練習試合があって、

ジャンヌを観に来させることを決めてしまっていた。


「あのさージャンヌ」

「なに? オズ」


 俺のいいにくそうな言葉の調子に、ジャンヌは一瞬不安げな表情をした。


「俺さぁ、今日、キャプテンに、話たんだよ」


 みなに一斉に緊張が走った。


 みんなは俺が、ジャンヌの彼氏の話をしたと思ったらしい。


「いや、違うんだ。

 ジャンヌがサッカーの試合、観たがってるって、キャプテンに話したんだ。

 そしたら、今週土曜日に、鎌倉学園と練習試合あるから、

内輪の試合だから、観にきていいからって話しになったんだ」


 俺は、そこまで話すとジャンヌを見た。


「わー、オズの試合、観に行ってもいいの?」

 ジャンヌは目を輝かせて喜んだ。


「ちょっと、オズ、『鎌学』って男子校じゃないの。

 そんな狼の群れみたいなところへ、

子羊を一匹、放り込むようなものじゃないの」


 ジャンヌは叉も不安げに、

「私、男子校って、行ったことないんだけど、

狼の群れみたいに、怖いとこなの?」


「そんなことないって。

 いかにも男子校が、女性に餓えた連中しかいないみたいじゃん。

 日中、部活を見学に行くんだから大丈夫だよ」


 ゴリが援護してくれた。


「それに、試合は『鎌学』の第二グラウンドって言ってたから、

第二グラウンドは、校舎の奥の方にあるらしいし、

鎌倉学園て、建長寺の経営だから、建長寺の境内みたいなもんさ。

 心配ないよ。だいいち、俺がいるんだぜ、絶対大丈夫だよ」


 ジャンヌは、俺の顔を見て、にこりと頷き、ジュリを見た。


「ジャンヌ、あなた、試合見に行っても、みんなの前で、

『オズぅ……オズぅ……』って、

 オズって呼んだらダメだからね。でれでれしちゃダメよ。

 できるだけ知らんぷりしてなさい」


 ジャンヌは下を向いて頷いた。


「できるだけ俺に近づくな」


 ジャンヌは叉も不安げ顔で俺を見て、

「ハイ」って返事した。


「たかがサッカー観戦に、大事だな」ってゴリ。


「ジャンヌがモテるんだから、しょうがないじゃないの。

 それに、男性に全く免疫無いし。心配じゃない」


「ジュリ、いろいろ心配してくれてありがとう」


「あとは当日、オズが格好いいプレー見せるだけね」

「俺、バッグだし、それに控えだから、出れるかわかんないし」


 ジャンヌは俺に、

「私、オズが試合に出られなくて、ずっとベンチでも、

がっかりしないから、私のことは気にしないで。

 オズの33番の、ユニフォーム姿が見られれば、それでいいの」


「ちょっとおー、ゴリぃー。

 この二人、どうにかしてやってよー。もー」

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