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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第四章 サッカー部
34/105

【彼氏】

 授業が終わって、誰もいなくなった教室で、ジャンヌが俺に聞いてきた。


「ねえ、オズぅ、サッカー部どう? 練習きつい?」

「そうでもないよ、それに、楽しいし」


「背番号決まった?」

「うん、33」


「わー、すごーい、 かっこいいわね!」

「ジャンヌ、なにがかっこいいんだ?」


「だって、33番て、とっても巧そうよ」


 俺が着ると、なんでもかっこよく映るのか、

 それとも、よっぽど世間知らずだ。

 ちょっと自惚れてみたくなる。


「サッカーの背番号で、33番が巧いなんて、聞いたことないぞ?」


 ジャンヌは、サッカーの背番号の持つ意味が、わからないらしい。


「サッカーでの10番はエースの番号なんだ。

 9と11はフォワードだけど、

巧い点取り屋はエースストライカーなんて呼ばれたりするんだ」


「じゃあ、オズって、普通の選手ってこと?」

「当ったり前だろ。普通っていうか、控えっていうか」


「ああ良かった」

「何が良かったんだ?」


「だって、私、普通が一番好きなんだもの」


 意味不明、それって、俺が普通だから普通が好きなのか、

 普通が好きだから、俺が普通で良かったのか?


「オズのユニフォーム姿、見てみたいな。

 今度、いつ試合あるの? 観に行っていい?」


 俺は少しうろたえてしまい、曖昧な返事をした。


「オズぅ、私が観に行ったら迷惑?」不安そうに俺を覗き込む。


「いやー、そういう訳じゃないんだけど、そのー」

「どうしたの?  部外者が観に行っちゃいけないの?」


「俺、好きでサッカーやってるけど、あんまし上手くないし、

それにレギュラーメンバーじゃないから、試合に出れるかもわかんないし」


 俺が、来て欲しくないのが解らないのかな。

 本当のことを言うしかないか。


「ジャンヌ、あのさー」 


 ジャンヌは、俺の否定的な雰囲気を察して身構えた。

 不安な眼差しで、じっと俺を見つめて、俺の言葉を待っている。


 ジャンヌの可憐な瞳で見つめられると、愛しさでぐっときて、

傷つけまいと、話すのを躊躇してしまう。


「オズぅ、お話ししてー」


「よし、あのな、ジャンヌ」

「ハイ」


 ジャンヌは、両腕を胸の前に納め、右の拳を左の掌で包む。


「サッカー部で、ジャンヌ、人気あるんだよ。それもすごく」


 ジャンヌの顔がさっと赤くなり下を向く。


「先輩たちは、俺がジャンヌと同じクラスで、席が隣ってことも知ってるんだ」


 ジャンヌはじっと話を聞いている。


「それで、先輩たちが、ジャンヌを紹介しろとか、

彼氏いるのか聞いてこいとかうるさいんだよ。 いっそ、

『ジャンヌには彼氏がいました』って言ったら先輩たちも諦めて、

俺も楽になるんだけどさ」


 俺は、言ってしまってから、ジャンヌの反応に、全神経を集中している。


 ジャンヌは、俯いたまま、困った表情で、じっと考え込んでいる。


「私のことで、オズに迷惑かけてごめんなさい」


 相変わらず俯いたままだ。


「ジャンヌは謝ることないよ。

 先輩たちが、勝手にジャンヌに夢中になってるんだから」


 ジャンヌは、俯いたまま首を横に振った。


「オズぅ、私、言ってもらってもいいわよ」


 ジャンヌは、声は小さいが、意を決したようだった。


「何を?」


 ジャンヌは、躊躇したが、下を向きながら、いっそう小さな声で


「彼氏がいるって」


 俺は一瞬、頭が真っ白になり絶句。

 まさか? ジャンヌに限って、嘘だろ! 

 言ったあと、ジャンヌは、耳まで真っ赤になっている。


「本当か?」俺の声はうわずっていた。


 ジャンヌは、はっきりと頷いた。


 俺は絶望した。

 今までの、俺とジャンヌとの関係は何だったんだ?

 単なる友達かボディガードだったのか?


 六国高校の男子の中では、俺が一番親しいと自負してきた。


 実は、他に、彼氏がしっかりいたとは、俺は悔しくてたまらない。


『相手は誰なんだ!』と聞きたかったが、そこは俺のプライドが許さない。


 俺は、

「わかったよ」と言うのが精一杯だった。


 ジャンヌは、上目遣いに俺を見つめながら、


「オズぅ、言ったら楽になる?」

「判んないけど、きっと大丈夫だよ、心配するなよ」


 俺は、平気な顔を装った。


 俺は、今まで自信過剰だった自分が恥ずかしく、

この場に居たたまれなくなってしまった。


 ジャンヌに、部活に行ってくるからと言って、

教室を逃げ出すように出た。


 俺は、歩きながら、色々想いを巡らせた。


 ジャンヌに彼氏がいたなんて、俺にとっては、晴天の霹靂だ。


 俺の頭の中は、まだパニくっているが、それでも多少冷静に考えてみる。


 ジャンヌみたいな、可愛くて、優しくて、素直な子は、めったにいないし、

それに、彼氏がいて当然かも知れない。


 やはり、俺レベルでは、高嶺の華っていうところかもしれないが、

やっぱ悔しい。


 でも俺が、ジャンヌを観察していても、

この高校には、彼氏はいないと思う。


 おそらく、中学時代から付き合ってる奴だろう。


 俺は今日、ショックで、部活は全くヤル気しないので、

三好キャンプテンに言って、休むことにした。


 ついでにジャンヌのことも、彼氏がいるなら、俺が気を使うこともないし、

試合観にくることも、拒むことないから話しておこう。


 三好キャプテンは、俺の体調を心配してくれたが、

ジャンヌが試合を観戦したいという話をしたら、

大喜びで(三好キャプテンも熱烈なジャンヌ愛好家の一人)早速、今週土曜日に、

練習試合が入っているのでジャンヌを観戦させることにした。


 俺は、下校前に、演劇部のゴリに会いに行って、

部活が終わったら、帰りに、俺の家に寄ってもらうよう頼んだ。


 ゴリには、話を聞いてもらいたいし、相談もしたかった。

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