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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第三章 聖地巡礼
28/105

【四日市】

 椿大神社を後にした。15時40分になっていた。


 ホテルには、16時半前に着いた。


 ホテルは、四日市都ホテルだ、近鉄四日市駅に近い。


 福西さんが、フロントまで案内してくれた。

 ホテルが手配したタクシーだからか、無事に俺たちを送り届けたことを、

ホテルに報告していた。


 福西さんへは、みんなでお礼を言ってお別れした。


 カウンターでは、チェックインもスムーズだ。


「大橋様のお母様から、いろいろ受けたまわっておりますが、

こちらでも何かご要望等がございましたら、直接何なりとお申しつけ下さい。

 スイートルームに勉強用の机とスタンド、ご用意させていただいております。

バスタオル等は、翌朝の分もご用意させていただいております。

お夕食でございますが……」


 ジャンヌのお母さんが、直接依頼しただけあって、俺たち、

まだ高校生なのに、おもてなし度は充分すぎるほど満足だ。


 ジュリなんか、さっきから目を輝かせて聞いている。

 女性って、こうした一流のおもてなしに弱いんだな。


 夕食も、ホテルの中華料理をお願いしていて、ジャンヌ用に一人、

菜食で軽めのメニューを依頼済みとのことだ。


 また、ホテル側には、夕食前に、四日市名物の、

餃子を食べてくることも伝わっており、ホテルでの夕食は、8時頃の予約だそうだ。


 ジャンヌのお母さんは、段取りがいい。


 部屋割りは、スイートルームはジャンヌとジュリ、ツインルームは俺とゴリだ。

 フロアは違うが仕方がない。


 早速、荷物を部屋に置いたら、散歩がてら、餃子を食べに行くことにした。


 ゴリの親父さんから、四日市に泊まるなら、

『餃子の新味覚』に行って、餃子を食べてこいといわれていた。


 制服を着替えるかどうかの話になったが、ゴリが、

ここのホテルで食事するなら、失礼のないようにということで、

制服を着替えるのは、ホテルの食事が終わってからということになった。


 ゴリは、ジャンヌの気持ちを代弁していた。

 ジャンヌは、心に思っていても、みんなの手前、言い出せないはずだ。

 そういった心配りは、俺にはできない。ゴリをあらためて見直した。


 もっとも、着替え用の靴は、持ってこなかったし、みんなも同じだろう。


 場所は、事前にゴリが地図を印刷していた。ホテルからちょっと歩きそうだ。


 ゴリの親父さんから、事前の注意として、

『餃子の新味覚』では、メニューは餃子のみで、

それも一種類、ごはんも置いてないと聞いていた。


 だから、ゴリが、断食修行中のジャンヌは無理だから、止めるか、

ジャンヌ抜きで行ってこようか相談した。


 そしたらジャンヌが、私も行ってみたいからと、全員で行くことにした。


 店内は、カウンター席のみだ。

 土曜日だけど、早い時間だから比較的すいていて、四人そろって座れた。

 席は、学校の習性で、おんなじ並びだ。


 ゴリから、注文しなくても、黙って座っていれば、

勝手に餃子が出されるといっていた。


 お替わりも、カウンターの上に、皿を置けば、焼いて出してくれるらしい。


 俺の隣の男性も、黙って空いた皿をカウンターの上に乗せた。

 無言だ。ビールを飲んでいる。


 その隣のアベックを観察すると、牛乳を飲んでいる。

 餃子と牛乳は合いそうだ。


「ゴリ、俺、牛乳飲みたいんだけど」すかさずジュリも、


「私も、ゴリも飲もおよ。ジャンヌは?」

「じゃあ、私はジュースいただくわ」


 ジャンヌに出された餃子は、俺とゴリで食べることになっている。


 餃子が焼きあがり、俺たちのカウンターの上に置かれた。


 ジャンヌが手を合わせ、

「ありがとうございます。わー美味しそう」といかにも食べる雰囲気で、

餃子を自分の前に置いた。


 俺は、

「え、ジャンヌ、いいの?」


 ジャンヌは、微笑みながら顔を横に振った。


 みんなで箸を取り、一斉にいただきますをして食べ始めた。


 餃子はほくほくで、油がきつくなく、さっぱりしていて、

皮と中の餡とのバランスも絶妙だ。


 唐辛子ときざみニンニクの入ったオイルをタレと混ぜると、

ニンニクのひりひり感との相性は抜群だ。


 なるほど、ごはんなしで、いくらでもいけそうだ。


「うーん、餃子にしては、さっぱりしてて、すごくおいしい。ジャンヌ、残念ね」


 ジュリは、ジャンヌに話しかけたあと、しまったって顔して、舌を出した。

 左手でごめんねをしている。


 ジャンヌは、にっこり左手で、OKサインを出した。


 ジャンヌは、箸で自分の餃子を、俺とゴリに取り分けると、

早々と無言でごちそうさまをした。


 はじめから、俺とゴリは、ジャンヌの分も含めて二人前、

ジュリは一人前と決めておいた。


 八時からの中華が控えているからだ。


 俺とゴリが食べ終わるのを待って、店を後にした。


 支払いは、ゴリが、ジャンヌのお母さんから預かっているお金から支払った。

 現金の清算は、ゴリが会計責任者に任命されている。

 みんなでジャンヌにゴチをした。


 ホテルに帰ると、まだ五時半前だ。

 八時までひと勉強することにした。


 俺とゴリは、勉強道具を持って、スイートルームへ。


 スイートルームは、ソファーの他に、会議用のテーブルと椅子、

スタンドが四セット用意されていた。


 寝室は、二間続きでベットがそれぞれ二つ、四人泊まれる。


 俺は、部屋の中を観察しながら。

「なんだ、四人泊まれるじゃん。それなら俺たちも、ここでよかったのにな」

「冗談じゃないわよ! 私たちが嫌よ。

 あんたたちと、お風呂もトイレも一緒なのよ。オズは相変わらず無神経ね」


「そりゃー、オズ、寝室は別でも、おんなじ部屋には違いないから、

女の子の母親としたら心配するよ」


 ジュリがにやけ顔で、

「そうよ、オズ、寝込みを襲ってくるかもしれないしね」


 ジャンヌが真剣な顔で、

「ジュリぃ、オズはそんな人じゃないわ」

「ゴリぃー、なんとかしてよ、もう」


「冗談に決まってるじゃん、ジャンヌ。

 ジュリが俺のこと、そんなふうに思ってるはずないじゃん。

 例の吉本やってるんだよ」

「まあ、ジュリったら」


「オズの反応が遅いからよ。

 吉本判ってんなら『わてにも選ぶ権利ありまっせー』ぐらい、すぐ返しなさいよ。

 だからジャンヌが本気にするじゃない。

 でも、オズ、ジャンヌの信頼、厚いんだ。よかったわね」


 ジャンヌは恥ずかしそうに顔を赤らめ、下を向いてしまった。


 俺はジャンヌから、本心より信頼されているのが判って、

ジュリではないが、ほんとに嬉しい。


「さあ、おしゃべりはこのくらいにして、勉強始めようぜ」


 さすがゴリだ、冷静で真面目な奴だ。

 だけど、勉強始める前に、ジャンヌのエネルギー補給が心配だ。


「なあ、ジャンヌ」

「なあに、オズ」


「ジャンヌ、八時まで、なんにも食べないで大丈夫? 

 例のブドウ糖入り抹茶は? 

 エネルギー補給した方がいいんじゃない?」

「オズ、心配してくれてありがとう。

 そうね、今日の分、まだ少し残っているから、いただくわ」


 ジャンヌは嬉しそうに、おれの心配に応えてくれた。


「ジュリ、解んないとこあったら、教えるから。

 俺でも解らなかったら、ジャンヌ先生に聞いて」


「オズ、私で教えられるところは任せてね。

 私も解らなかったら、一緒に調べましょう。

 あ、それから、私の整理ノート、授業で教わった大切なところ、

 テストに出そうなところをチェックしているから、よかったら参考に見てね」


「それならジュリ、俺も教科書に書き込みしてるし、

ノートも参考にしてもいいぞ」

「うん、ゴリありがと。参考にするわ」


 俺たちは、八時までみっちり勉強した。


 俺も、一人のときは、なかなか集中力が続かないけど、みんなと一緒だと、

ずっと継続できた。それに、ジャンヌのノートは最高だ。

 どんな参考書よりも良くできていて効率がいい。


 遅い夕食を、ホテルの中華料理の店で食べた。


 ジャンヌ用に菜食が用意され、俺たち三人には、

豪華で美味しいごちそうだった。


 夕食後は、それぞれお風呂にはいって、スイートルームに集合して、また勉強だ。


 ジャンヌたちが、風呂からあがったら、メールしてもらうことにした。


 食事の後、部屋へ帰る途中、ジュリが、

「お風呂、ジャンヌ先に入りなさいよ。あなた髪乾かすの、時間かかるでしょ」

「じゃあ、そうさせてもらうわ」


 俺は二人の会話を聞きながら、ジャンヌをちらっと見ると、

やっぱ、ジャンヌの髪型、黒くて、長くて、かっこいい。

 なんといってもジャンヌの可愛さを引き立てている。

 一緒に歩いていても、俺が自慢したくなってしまう。


 部屋に帰って、俺たちも風呂に入ることにした。


 ジュリからゴリへ、OKメールがきたので、再びスイートルームへ。


 ジャンヌたちは、Tシャツとジャージに着替えていた。

 パジャマ兼部屋着なんだろう。


 ジャンヌの髪も、さっきと同じ状態に手入れされていた。


 もう10時近くになっていた。12時まで勉強して、寝ることにした。


 今朝は、7時にスイートルームに集合してお祈りをする。

 それまでに各自、風呂かシャワーで、身を清めておく。


 俺もゴリもシャワーで済ませるから、6時に起床した。


 7時半から、ホテルのバイキングで朝食。

 近鉄特急は、四日市駅発9時頃の列車だ。


 俺とゴリは、制服を着て5分前にスウィートへ。

 ジャンヌがドアを開けてくれた。制服をきちんと着こなしていた。


「おはよう、ジャンヌ。髪乾いてるじゃん。昨日よく寝られた?」

「おはよう、オズ、モンチ。よく寝られたわ」


「おはようジャンヌ。爽やかで、元気そうで安心した。

今日、本番だからよろしくな」とゴリ。


 奥の部屋からジュリが、

「よう、おはよう、オズ、ゴリ。

 昨日、あれからジャンヌといろいろ話していて、

結局寝たの、1時回ってたわね」


 俺とゴリも、ジュリに挨拶しながら、

「ジュリ、今日も優等生やってるじゃん」

「えへー、オズ。実はちょっと照れてるんだ。

 ねえ、ゴリ、私の美脚、見られないとつまんない? 

今日も我慢してね」


「俺、そんなこと頼んでないって。

 ジュリのスタイルの良さは、充分わかるから、心配しなくていいよ」


「ジャンヌも、カモシカみたいな綺麗な脚してるんだから、

これからスカート、もっと短かくすればいいのに。ねえ、オズ」


 ジャンヌが、上目づかいに俺をちらっと見た。


「え、俺? わかんない。だけど最近、1年の女子、

先輩見習って、スカートどんどん短かくなってねえ?」


「ほら、オズ、ジャンヌに言ってあげなさい。

でないと、ジャンヌだけ、置いてきぼり食っちゃうわよ」


「ジャンヌ、毎朝お祈りが終わったら、俺ん家で、着替えてもいいじゃん。

 ジャンヌの部屋、用意したんだから」

「オズぅ、私、スカート短くしたほうがいいの?」ジャンヌは不安顔だ。


「いや、そういうわけじゃないけど。

 ジャンヌが一人だけ、浮いちゃわないかなって、そこだけが心配なんだ」

「オズ、心配してくれてありがとう。私、考えてみる」


 ゴリが、スマホの画像から、神殿の水晶を取り出し、

机の上に置き、準備している。


「そろそろ7時になるから、みんないいか」


 ジュリも含めて、お祈りの準備に入る。

 スマホの画像の前に並んで座った。教室と同じ席の並びだ。


 ゴリがジュリに、

「ジュリ。《平成の祈り》とか、天之宇受売命への感謝だとか、

心の中で、繰り返し祈ってればいいから」


「ハイ」ってジュリが返事した。

 ハイだなんて、やっぱしジュリは、素直になっている。


 俺たちは、30分ほどお祈りして、朝食のため、カフェテリアへ。


 ジャンヌには、朝食半分にして、その分、

お伊勢さんの名物を、一緒に食べさせたい。


「なあジャンヌ、ゴリの親父さんが、参拝のあとのお楽しみで、

赤福とか伊勢うどんとか言ってたけど、

朝食少しにして、その分お伊勢さんで食べたら?

 赤福一個でも、伊勢うどん一本でもいいから、残りは俺が食べるから」


「ありがとう、オズ。

 それなら私、朝食抜きにして、朝お抹茶いただくわ。

 じゃあ私、お部屋に帰って、お抹茶飲んでいるから、

みんなゆっくり朝食いってきて」


 昼はジャンヌと一緒に、お伊勢名物を楽しめることになった。

 楽しいこと、嬉しいことは、ジャンヌと共有したい。

 おれの心は満たされ、空腹感もすでに満たされたようだ。


 朝食後、8時半に、荷物を持って、スイートルームに集合だ。


 ジャンヌのキャリーは俺が引き、ジャンヌはスクールバックのみだ。


 フロントで、チェックアウトの手続きをする。


 清算は、ジャンヌのお母さんが、前払いで預けたお金から清算し、

余りを大橋家に返金してもらうことになっている。


 俺たちは、ホテルでの、きめ細やかなおもてなしに感謝し、

お礼を述べてホテルをあとにした。

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