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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第三章 聖地巡礼
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【天之宇受売命】(あめのうずめのみこと)

 椿大神社の本殿で、ご祈祷が済んで、俺たちは、

隣の天之宇受売命(天之鈿女命)が御祭伸の、椿岸神社に参拝した。


 俺は、お社を見た瞬間、ジャンヌと同じような、慈愛に満ちた、

優しさの権化みたいな雰囲気を感じた。


 ジュリへの先入観と、芸能の神様ということで、男勝りで活発で、

情熱的で、しかも妖艶な感じを想像していたが、まったく違っていた。


 全てを受け入れる、女性的な包容力を感じた。

 お社の前に立つと、かつて学んだ、老子の説く

『谷神は死なず』の中にある<玄牝の門>の前に立っているようだ。


 芸能の神様ということだけではなく、全ての女性の神様でもあると、

俺は、讃えようもないくらいな感激と衝撃を受けた。


 ここではジャンヌが、ジュリを前に据え、後ろに三人が並んだ。


 みんなで祈り始めると、ジュリが両膝を地面に付けて泣き崩れた。


 例によって、ジャンヌが金色に輝きだした。


 俺は、母の胎内にいるような感覚に陥った。

 懐かしさと安心感で、なんとも言えぬ心の安らぎに満たされた。


「ハイ、皆さん、ありがとうございました」


 どれだけの時間、祈っていたのか。


 おそらく短い時間だったろうけど、俺は、永い眠りから覚めた錯覚を覚えた。


 ジャンヌも膝まずき、ジュリの後ろから優しく抱き締めた。


 ジュリは膝まずいたまま振り返ると、

ジャンヌの胸に顔を埋めながらきつく抱き締めた。


「ジャンヌ、私、なんだか解らないけど、感激して、

自然に涙が出て止まらなくなったの。全身が熱くなって私……」


「天之宇受売命が、よく来たわねって、大変お慶びになって、

ジュリを抱きしめられたのね」


 ゴリがジャンヌ越しに、ジュリの両肩を、ポンポンと軽く叩いて、

「ジュリ、よかったな」


 ジュリは涙顔を上げ、ゴリを見つめ頷いた。


「みんな、ゴメンね」


 ジャンヌがううんと首を横に振った。


「ジュリ、俺、ジュリに謝んなくちゃいけない」


 ジャンヌが、ジュリの手を引きながら立ち上がって振り返った。


 ジュリが俺をまっすぐ見つめている。


「俺、天之宇受売命って、神話の世界では、天の岩戸が開き、

天照大神が出てくる時、上半身はだけて踊ったり」


 ジャンヌも、ジュリの肩を抱きながら、俺を見つめて頷く。


「天孫降臨の折り、天の八ちまたに、猿田彦大神がたちはだかっていると、

天照大神が、天之宇受売命に、

『お前は度胸がいいから、なんで立ちはだかっているのか聞いて来なさい』

とお命じになっり。

 俺のイメージでは、活発で、男勝りなダンサーっていう気がしてたんだ」


 ジュリは、俺の言うことを、一言も漏らすまいと、次の言葉を待っている。


「でも、このお社を見た瞬間、何ともいえない女性的な優しさというか、

慈愛の溢れた女神がいらっしゃる感じがしたんだ。

 俺は男性だけど、えらい女性的なものを感じて、祈ってる時、

母の胎内にいる気がしてたんだ。

 俺は、天之宇受売命は、単たる芸能の神様ではなく、

全女性の神様って気がしたんだ。

 感激したんだジュリ。

 自分の中で、芸能っていうと、芸能人っていうか、スポーツ新聞って感じで、

だから、今まで軽く受けとめていた自分を反省したんだ。

 でも、今、初めて、芸能人が芸能を極めていく芸道人だって気付いたんだ。

ゴメンなジュリ」


「ううん、オズ、天之宇受売命を誉めてくれてありがとう。

 私、とっても嬉しい。

 自分のことより嬉しい。

 でも、オズ、言っとくけど、私はそんなに立派な人間じゃないからね」


「いいえ、ちがうわ。

 ジュリはとっても立派な人間よ。

 思いやりがあって、優しくて」


「それに、人情味があって、涙もろくて」


「ジュリ、お前のいいとこ、ジャンヌもオズもよくわかってるって」


「そうだ、お節介も、優しさの現れだし」

「なに! オズ、あんた私が……」


「まあ、ジュリ、オズは長所として言ってるんだぞ」


「そおよ、ジュリ、気が付いてて知らんぷりするような人より、

ずっと素晴らしいわ」


「ありがとう、みんな。一通りお参りしたら、後でまたくるから」


 入口の参道には、名だたる芸能人や伝統芸能の人の札が掲げられている。

おそらく神恩に感謝して、多額の寄付でもしているんだろう。

 さすがに芸道の神様だ。


 次に行満大明神への参拝だ。

 行満大明神は、猿田彦大神の子孫で、役行者を導いたといわれている。


 お社に行く途中、隣に、パナソニックの創業者松下幸之助氏が寄進した茶室

<鈴松庵>があった。


 松下氏は、経営の神様といわれたそうだが、度々椿大神社を参拝され、

ここでは『松下幸之助社』として 御霊が祀られている。


 お茶室には、参拝が全て終わってから、立ち寄ろうということになっている。


 行満大明神の本殿の前まで来ると、ジャンヌが、

「オズ、行満大明神は、修験道の開祖でもある役行者を導かれたから、

ここはオズがリードしてもらえるかな」


「よっしゃあ、じゃあ俺が、始めに役行者を導かれたお礼と感謝を捧げるから。

 そしたら参拝な」


 俺が一歩前に立ち、心の中で役行者をお呼びして、全託する心境で報告した。


 次に「ハイ」の合図をして、ゆっくりと二拝二拍手、

『平成の祈り』と行満大明神への感謝、最後に一拝で終えた。


 続いて、延命地蔵の前でもお祈りし、椿大神社での参拝は終了した。

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