【お伊勢参り】
四月に続いて、5月に入って二回目の、夜間の六国見山へ登った。
今回も、大天使ミカエルより、新たな指令が下った。
先ず、日本の国に安寧と平和をもたらすため、伊勢神宮に、
《平成の祈り》を奉納せよというご下命だ。
それに加え、伊勢神宮の北の守り、福王神社にも参拝せよ、も付されている。
大天使ミカエルはじめ、前回の神々も消え、山頂の展望台に静寂が戻った。
俺たちは、急ぎ自宅に戻り、俺の部屋で落ち着きを取り戻した。
「モンチ、北伊勢大神宮と椿大神社にも、参拝せよってお命じになっているわ」
「ゴリ、椿大神社って、お前のご先祖の、猿田彦大神をお祀りする神社だろ」
「うおー、寄ってくれるんだ。ジャンヌ、ありがとう」
「ううん、私はただ、神様のみこころに従うだけよ。
お礼は、大天使ミカエル様と猿田彦大神にお願いね」
「あ! モンチ、オズ、これからテスト週間に入るのね!
お勉強があるから、私、一人で行ってこようか? 無理しないでね」
「ジャンヌ、今さらなにいってるんだよ。
俺とオズは、ジャンヌを守護するために生まれてきたんだぞ。
学校の試験だって、部活だって、俺たち、ジャンヌが最優先だから。
一人でなんか、絶対に行かせられないぞ」
ゴリの気分も高揚している。
俺もつられて、
「そうだよジャンヌ、部活首になろうが、留年しようが、そんなこと、
ジャンヌのお役に立つなら関係ないよ」
「ありがとう、モンチ、オズ。今週の土日で回ることになると思うわ。でも、
テストに支障がないように、一緒にお勉強しながらいきましょう」
「ジャンヌとゴリは、余裕だろうけど」
「オズ、私で教えられるところは心配しないで。
教科書とかノートも忘れないようにね」
「よっしゃー。俺、お伊勢参りしてた方が成績上がりそうだ。
なんたって、ジャンヌ先生の補習を受けられるからな」
「モンチ、ジュリもお誘いしていいかな?」
「え、いいの? ジャンヌ」ゴリは考えてもみなかったみたいだ。
「椿大神社で天之宇受売命もお待ちかねよ」
「へえー、すごいことになりそうだな。
ゴリ、ぜったいジュリも行かせろよ」
「なあ、ジャンヌ、これも神様のみ心か? 大天使ミカエルも大丈夫か?」
「OKよ、モンチ。私ね、大天使ミカエル様に、ジュリのことお伺いしたの。
そしたらね、ジャンヌの思いは当然だ、ジャンヌの思いは、ほぼみ心にかなっている。
だから、自分で判断したことは、私の判断と思いなさいっておっしゃられたの」
「凄いなジャンヌ、進化してるな、ありがとな。俺もめちゃ嬉しいけど。
ジュリが聞いたら、喜びが爆発するぜ、あいつ。なあ、ジャンヌ、
ジュリに知らせていいか?」
「もちよ」
「あいつもオズと同じように、成績は低空飛行だから、
俺はジュリの面倒みるから、オズの面倒は、ジャンヌ、頼むぜ」
「ハイ。あ、旅行の費用のことだけど、うちで負担させてね」
「そういう訳にもいかんだろう」とゴリ。
「うちのお父さんは、ジャンヌの神様ごとに関わる費用は、
全て大橋家で負担するって言ってるから。モンチ、オズ、お願い。
そうご両親にくれぐれも伝えてね。モンチ、ジュリにも伝えてね」
「費用のことは一応親には伝えるけど」
「そうね、やはり子供どうしの話じゃないわね。ごめんなさい。
お母さんが電話すると思うわ」
ゴリは、インターネットで早速情報を仕入れている。
「伊勢神宮か、えーと、名古屋から近鉄だな。北の守りの福王神社だっけ?」
「ええ、そうよ。判る?」
「あった、うん、聖徳太子が伊勢神宮の北の守りのために、
毘沙門天を祀ったんだって」
「それで、大天使ミカエル様が、参拝をお命じになったのね」
「所在地は、三重県菰野町、アクセスは、近鉄四日市駅からバスで50分、
そこから徒歩で……」
「モンチ、今回は、テスト期間中だし、みんなの勉強時間も考えて、
移動で不便なところは、タクシーを使いたいからって、お父さんにお願いするわ」
「分かった。タクシーで調べとく。北伊勢大神宮は、えーと、あ、
通称北伊勢大神宮で、多度大社っていうらしい。
ここは、近鉄桑名駅から乗り換えて、多度駅下車だな。
名古屋から、三重県に入ると桑名駅で、四日市の手前の駅だな。
福王神社は、多度大社の左奥だな」
「ねえ、モンチ、椿大神社も四日市だったわね」
「うん、そうだよ、だけど、かなり奥へ入るはずだけど。
ちょっと待って、ああ、出てきた。椿大神社も近鉄四日市駅からバスで50分だ。
近鉄四日市駅の右奥が福王神社で、左奥が椿大神社ってとこだな」
「それならモンチ、桑名駅からタクシーで、多度大社へ行って、その左というか、
西側に福王神社でしょ。それから下へというか、南へ下ったら椿大神社じゃない?」
「うん、初日はそんなルートだな」
「椿大神社でタクシーに帰っていただいて、ゆっくりすればいいじゃない。
帰りはバスでいいんじゃない」
「四日市に戻ったら、夕方になるだろうから、初日は四日市泊まりだな」
「わかったわ。タクシーは、桑名駅周辺の会社に、チャーターとかできないか、
お母さんに聞いてもらうわ。それと、四日市のホテルも調べて取ってもらうから」
「よっしゃー」
「ゴリ、スゲー、気合い入ってるじゃん」
「あったりまえじゃん。みんなで椿大神社へお参りできるんだぜ。
それも、ジュリまで一緒に」
「なんか、今回の旅行って、巡礼みたいでねえ?」
「オズ、俺たちが行くところ、いずれも聖地だろうから、聖地巡礼そのものじゃん」
ジャンヌも、気分が高揚している。多少興奮ぎみだ。
「なんか、私、伊勢神宮で、天照大御神にお会いでき、
大天使ミカエル様から授かった《平成の祈り》を奉納できるなんて、
思っただけで、なんか、身体が熱くなるの」
「なあ、ジャンヌ、伊勢神宮って、あの神話に出てくる、
天照大御神をお祀りしてるんだろ? どんな神様なの?」
「私もよく解らないけど、皇室のご先祖で、
日本の国家と皇室の守護にあたっていらっしゃるわ」
ゴリが検索を続けている。
「なあ、ジャンヌ、椿大神社には、本殿の横に、天之宇受売命を祀った
お社があるんだ。芸道の神様として祀られているようだ」
「ジュリ、ますます喜びそうね」
「そのまた隣に、お茶室があって、抹茶一杯お菓子付きで800円だって」
「ほんと? 時間があったら寄ってみたいわね」
「ジャンヌさー、なんか、部活の合宿みたいで、楽しみが多くて、
これも神様からのご褒美っていうことでいいんだよな」
「ミッションへの心構えがしっかいしていれば、
お楽しみと切り替えればいいでしょう」
「ジャンヌがミッションモードというか、お祈りモードに切り替わると、
ピーンと空気が張り詰め、冗談も言えない雰囲気に変わるよな」
「あったりまえだろ、オズ、ジャンヌ自身が天使モードに変身するし、
神様ごとの時は、大天使ミカエルとか、相手の神様だとかを前にして、
フレンドリーな雰囲気なんか、出せっこないよ」
「そうだよな」俺も納得。
「私は別段、意識したことないけど、確かに、神様ごとの時は、
身が引き締まってるわ」
玄関に、ジャンヌのお母さんが迎えに来たみたいだ。




