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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第二章 ジャンヌ・ダルク
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【沙也香の祈り】

 今朝も、お祈りの最後に、水晶が輝き、映像が映し出された。

 制服を着た少女が、教会の聖壇の前に膝まずき、十字架上のイエスを見上げ、

一心に祈っている。背後には、黄金色の円光が輝いている。


 次に少女の前方上段より顔が映し出された。


「やっぱ沙也香ちゃんだ」


『……み国の来たらんことを、み心の天のごとく、地にもおこなわれんことを。

我らの日常の糧を、今日もあたえたまえ』


「『主の祈り』ね。沙也香ちゃん、イエス様を信じているのね」


「なあジャンヌ。『主の祈り』ってなに?」


「イエス様が、このように祈りなさいと仰られた祈りなの」

「『天にまします我らの父よ……』っていう祈りだよな。

キリスト教徒ならみんな祈る祈りなんだ」


「ゴリ、キリスト教もよく知ってるんだ」


 場面が変わり、沙也香の自宅のようだ。自分の部屋だろう、

机の上の本棚の上には、イエス・キリストの複製画が掛っている。


 沙也香は、机の上の父母と弟の家族写真の前で、カーペットに膝まずき、

静かに目をつぶって祈っている。


 沙也香の背後には、先程と同じく、黄金色の円光が輝いている。


「あれ、日曜日、今日の日付じゃん。時計も7時55分を差している。

この映像、実況じゃねえ?」


 祭壇脇の置時計と一致している。


「ゴリ、よく気がついたな。沙也香ちゃん、教会でも家でも祈ってるんだ」


「信仰心が篤いんだな。それにしても、何をいっしょうけんめい

祈ってるんだろう?」


 とたんに沙也香の胸の内の祈りが、沙也香の声になって響いてきた。


《……我ら家族に、日常の糧をあたえ給え。我が罪人を許したる如く、

父が犯せし罪を許し給え。健やかなるときも、苦しみにあえぐときも、

父母が互いに信じ合い、助け励まし合い、我が家族に安寧をもたらし給え。

また、この安寧が、不幸にあえぐ、すべての家族にももたらされんことを……》


 突然、壁に掛るイエス・キリストの絵が金色に輝き、


《汝の信仰 家族を救えり 心安らかに行け》


 厳かな声が響き渡った。


 今日の映像はここで消えた。


「沙也香ちゃんの祈りを、イエス様が受け止められたわ。

お父さんもきっと救われるわ」


「ジャンヌ、俺たち、どうやって救うの?」

「お父さんが、銀行強盗をやる前が、私たちの出番みたいね」


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