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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第二章 ジャンヌ・ダルク
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【西鎌倉】

 連休中に、俺とゴリとジュリが、ジャンヌの家に昼食を招待された。

12時にモノレールの西鎌倉駅の改札口で集合だ。


 ゴリとジュリは、藤沢から一緒にくるはずだけど、

大船駅で乗るときには見かけなかった。改札にはジャンヌだけだった。


 まだ10分前だ。あいつら遅れてくれてサンキューって感じだ。

ジャンヌがとびっきりの笑顔で迎えてくれた。


「よう、ジャンヌ。お迎えありがとな」

「いいえぇ。モンチとジュリは、次のモノレールかもね」


「朝、お祈りの後、ゴリとジャンヌ帰ったじゃん。

俺、あれから高野台のバス通り、鎌倉街道まで行っての折り返しを、

3回走り込みやったんだ。腹減るように」


「オズすごーい! じゃあお腹ペコペコね、今日手巻きずしにしたの。

材料はお父さんが今朝、大船まで買いに行ったの」


「へー、お父さんが寿司ネタの仕入れか、なんか期待しちゃうな」

「なんかお父さん、みんなに美味しいもの食べてもらうんだって、

すごく張りきってたわよ」


「そっかー、で、ジャンヌは?」

「私はお家でお母さんのお手伝い。サラダつくったり、お寿司のご飯つくったり」


「お寿司のご飯つくる時、ジャンヌは団扇で煽るほう?」

「ええ、よく分るわね。まだお酢の加減はわからないな。

でもお寿司のご飯、沢山つくったから、いっぱい食べてね」


「どこの家庭でも、やること同じだな。小さい時は、運動会とか遠足っていうと、

海苔巻とお稲荷さんつくってたな」

「家も一緒……」


 ジャンヌと小学校時代の運動会とか遠足の話で盛り上がってると、

ゴリとジュリがホームからの階段を降りてきた。


「ごめーんジャンヌ、私が小田急の六会駅遅れちゃったの」

「ううん、まだ5分じゃない」


「オズもごめん」

「いいって、俺もさっき来たばかりだし。おうゴリ、今日手巻き寿司だって」


「お、やったね。俺、あれから家に帰ってからさ、腹減るように、

いつも部活でやってるストレッチとか、発生練習とか、念入りにやってきたぜ」


「俺も腹減るように走り込んできたんだ」


「ちょっとあんたたち、あんまりがつがつ食べないで、ゆっくり食べてよ。

なんか美味しいもの、全部食べられてしまいそうね。

あ、美味しいものっていったら、『にしかまプリン』ね」


 ジャンヌからは、事前に手ぶらで来るよういわれていたけど、

ジュリが『にしかまプリン』食べたいってことで、これは私たちで買うからって。

そこはジュリが強引に押し切った。


「『レ・シュー』は家に行く通り道だから、案内するわね」


「プリンは別腹で食べるから、お寿司はがっつりいただくから心配しないで。

ところでジャンヌ、今日昼どうすんの、食べるの?」


「ええ、朝抜いてるから、今日は昼と夜の二食にしたの。それから私はプリン、

今はだめだから、ごめんなさいねジュリ。」

「そんなの気にしないで、私がわがまま言って食べたいっていったんだから。

どうせジャンヌは地元だからいつでも食べられるし」


 駅からバス通りを大船方面に歩いて行くと店はあった。

連休中とあって、駐車場も一杯だ。


「じゃあジャンヌのご両親と、ジャンヌはいらないから、5つでいいわね」


 ジャンヌとジュリが店の中へ入っていった。中は混んでそうなので、

俺とゴリは店の外で待つことにした。清算はジュリと後でということで。


 再びバス通りを歩いていくと、

「あれが西鎌倉小学校で、私が卒業した小学校なの」


 信号を渡って住宅街に入る。閑静な住宅街だ。


「ねえジャンヌ、もう手巻き寿司の用意出来てるんでしょ。

それならすぐに食事?」

「ええ、そのつもりだけど」


「それならジャンヌ、食事の前に、ちらっとだけジャンヌの部屋見せてよ。

食事の時、話題にしたいから」

「ええいいわよ」


 緩やかな坂を上がって角を曲がるとジャンヌの家が見えた。


「あの青い屋根のお家よ。二階の右側が私のお部屋なの」


 え? 普通の家じゃん。俺は豪邸を想像していたので拍子抜けした。

俺の家よりはるかに小さい。


 玄関を入ると両親が迎えてくれた。玄関はかなり広く、

天井が吹き抜けになっている。


「皆さんいらっしゃい。よく来てくれたね。さあどうぞ」


 ジャンヌのお父さんがホスト役を率先している。


 俺たちは、廊下を通ってリビングに案内された。既にテーブルの上は、

所狭しとご馳走が並んでいる。寿司ネタやすし飯、海苔などが用意されている。


ジュリが初対面の挨拶が終わると、


「これ、私たちからの気持ちです。私が『にしかまプリン』食べたいからって、

ジャンヌさんに無理いって、買わせてもらったんです。

私まだ食べたことなかったものですから」


 外交家のジュリは応対もそつがない、

いろいろしゃべってくれそうだから安心だ。


「いえいえ、私もしばらく食べてないから、そろそろ食べたいなって

お父さんと話していたんですよ。食後、楽しみにしていますよ。

それじゃあジャンヌ、それまで冷蔵庫に入れておいて」


「はい、あ、お食事の前に、みんなを私の部屋へ案内してくるから少し待ってて」


「すいませーん」ジュリは素早く立ち上がり、ジャンヌの後をついて行った。


俺とゴリは行っていいものか躊躇した。娘の部屋へ男が入っていいものか

思案してしまった。すかさずお母さんが、


「大澤君も大田君もお二階へどうぞ。ジャンヌの部屋、なんにもないけど。

どうぞ見てあげて下さい」


 お母さん、気がきくなあ、それとも俺が、いかにも見たそうな顔

してたかも知れない。


 二階の階段の上からジュリが、


「ちょっとゴリ、早く来なさいよ。オズも」


 俺はゴリの後ろから、恐る恐るジャンヌの部屋に入った。


「オズ、なに緊張してるのよ。女の子の部屋入るの初めてって感じじゃない」

「俺、女子高生の部屋入るの生まれて初めてだから」


「オズ、いまどき女子高生なんて言わないわよ。JKって言ってよ!

 もう、おっさんくさいんだから」


 和室にカーペット敷いてベットを置いている。なるほどシンプルな部屋だ。

っていうか、整理整頓されているのかもしれない。


「ジュリ、お食事終わったらここでゆっくりしましょう」

「そうね、お父さんもお待ちかねね」


 下に降り、一同揃ったところで、お父さんから挨拶があった。

俺たちへの感謝とお礼みたいなことを言っていた。

誠実そのもののお父さんの挨拶だった。


 さあ、みんなで手巻きの作業に入り、お父さんが、皆さん、

遠慮しないでご飯は少なめに、具を沢山入れてとか、

すげー俺たちに気を使ってくれている。


 みんなでわいわい言いながら、ジュリが演劇部の話をしている。


 中学の時に、六国高校の舞台を見て感激したこと。

それで六国高校を目指し、合格できて、入学式で、

ゴリと運命の出会いがあったことなど。


「ジュリさんて、天之宇受売命(アメノウズメノミコト)と

ご縁が深いんですってね。

神話の世界では、天照大御神が天岩戸をお開きになる時、

岩戸の前で踊られて、重要な役割を果たされたんでしたよね」


「それがお母さん、私、ゴリから猿田彦大神のこと聞くまでは、

全然天之宇受売命のことは知らなかったんですよ。家の両親なんか、

いまだに信じてませんから。でも私、ゴリと出会ったとき、

懐かしさがこみ上げてきたんです。なんて言ったらいいか、

言葉では言い表せられないんですけど」


「そうそう、天孫降臨の時も、猿田彦大神と運命的な出会いだったわね」


「お母さん、出会ったとき、モンチも同じように感じたんですって。

だから二人の息がぴったり合っているの」


 ジャンヌはゴリに同意を求めるように見ると、


「はい、僕もジュリと同じ舞台見て感激して、六国高校受験したんです」


「そうだったの、大田君も演劇部に入部したんですって?」

「そうなんですよ、ゴリも私も演劇やりたくて六国高校に入ったんですから」


 俺は小さい時からサッカーやってて中学もサッカー部だったこと、

両親が新婚旅行で那智の滝で参詣して、役行者の夢を見たことなど話したりした。


 やがてみんな満腹になり、ごちそうさまをした。


 ジュリが後かたずけを手伝うからって動いている。


 俺とゴリは、お父さんと世間話だ。お父さんのおじいさんは海軍将校

だったらしく、昔の勲章を見せてもらった。


 お父さんの母親、ジャンヌのおばあさんは、

北鎌倉の台地区に一人で住んでると言っていた。


 鎌倉街道の、小坂郵便局の前の信号の、路地を入っていくと、

カーブの登り坂があり、高台に住宅地が広がっている。


北鎌倉駅からだと、線路を挟んで六国高校とは反対側の台地だ。

登校時に登る急な階段の途中から望まれる。


 高台にはメインストリートが走っており、海軍通りと呼ばれ、

昔から海軍の将校の屋敷が並んでいた地区だ。


 大橋家は海軍の家系だったんだ。


 たまにジャンヌもおばあちゃん家に泊まりにいくらしい。


 後かたずけも終わり、ジュリが戻ってくると、

お父さんはジャンヌのアルバムを見せてくれた。


 赤ちゃんの時からの写真が何冊もあった。一人娘だから写真が山ほどある。


 俺も一人っ子だけど、家とは比べ物にならない位多い。

お父さんが撮りまくった感じだ。


「このお寺が本山寺で、ジャンヌが授かったお寺さんでね、

一歳の時かな、お礼参りに行ったんですよ」


 俺たちがアルバムを見ていると、お父さんが、

テレビでビデオの準備をしている。


 映してくれたのはジャンヌのピアノの発表会のときのものだ。

ジャンヌもやってきて、


「あ、これ小学校6年のとき。最後の発表会なの」

「ジャンヌピアノ習ってたんだ」

「ええ」


 そのうちお母さんも加わって、楽しいひと時を過ごした。


 それからジャンヌの部屋でしばしくっちゃべって、

再びリビングでみんなでプリンを食べておいとました。


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