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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第二章 ジャンヌ・ダルク
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【拘置所】

今朝も連休で、会社が休みなのか、ジャンヌもゴリも、お父さんが送ってきた。


 7時からお祈りを始めた。《平成の祈り》を初めて、まだ一週間だけど、

ジャンヌの身体は、日に日に浄化されていくのが感じられる。


 ジャンヌが祈り始めると、ジャンヌの身体が輝き出し、同じく水晶も輝きを増し、

石室内が真昼のような明るさになる。


 俺自身の肉体の、穢れや煩悩が浄化されていくのが判る。

心身ともに軽くなっていく。直観力も増してきている。


 ジャンヌの進化の度合いは、俺の比ではないだろう。


 一時間祈り続けた。八時ころ、水晶から映像が映し出された。


 拘置所のようだ。例の銀行強盗で捕まったおじさんの家族と面会するのだろう。


 面会室のガラスの前に、母親と娘が座って待っている。服装から夏のようだ。


 今4月だから、今回も未来の映像だ。


 母親は、憔悴しきった顔でやつれている。娘は、思い詰めた表情ながら、

瞳は父親に会える喜びで輝いていた。


 しばらくすると、ドアが開き、父親が係官に促され、部屋に入ってきて着席した。

座ってもうつむいて、母親と娘に顔を合わせようとしない。


 音声付きだ。


 重苦しい沈黙の後、母親が、


「何で、どうして」と言って泣き崩れた。


「すまん」と言ってうつむくお父さん。


「何で私に相談してくれなかったの、これから私たち、どうなると思っているの、

沙也香は中学2年で、裕太はまだ小学5年ですよ」


 激しく詰め寄る母親を、抑えながら沙也香は、


「パパ、ママと裕太と沙也香のことは心配しないで、それよりパパ、

だいぶ痩せたみたいだけど、ご飯ちゃんと食べてるの?」


「事件を起こして以来、食事が喉通らないのだ、沙也香や裕太のことや、

これからのことを考えると、夜も寝むれないのだ。沙也香や裕太に、

つらい思いをさせてすまん」


「沙也香のことは大丈夫。パパ、裕太は、先生やお友達から、

励まされているから安心して。だからちゃんと食べてね」


「そうか」

 お父さんは力なく応えたが、少し笑みが戻った。


「あなた、これから私たち、どうやって生活していけばいいの。

今の状況、現実を解っているの! 沙也香も転校させなければならないし、

今のお家も、手放さなくちゃいけなくなるでしょうし」


 お父さんはまたうつむいてしまった。


「ママ、お願い、パパのこと責めないで」


「沙也香、今の学校辞めて地元の公立中学へ転校するから、

それから中学卒業したら働くから。裕太は私が大学まで出してみせる。

だからパパも罪を償ったら一緒に頑張ろう」


「せっかく沙也香が一生懸命勉強して入った学校なのに……ほんとにすまん」


「ううん、パパ、実はね、今まで黙っていたけど、沙也香、

学校でいじめにあっていたの。だから、今の学校辞めたいと思っていたの。

いままでパパに黙っていてごめん」


 お父さんが急に泣き出した。


 お父さんはずっと下を向いて泣いている。


「どうしたの、パパ」


 やっと顔を上げたお父さんは、流れる涙を拭おうともせず、


「沙也香、お前は嘘をつくのが下手だな。沙也香がみんなから愛されているのは、

お父さんが一番よく知っているよ」


「ううん、沙也香、本当に……」


「沙也香、いいんだ。沙也香は今、お父さんのせいで、家庭や学校で、

つらい思いをしているのだろう。そんな状況のなかで、こんなお父さんのことを、

気使ってくれるなんて、お前ってやつは、なんて天使みたいな子なんだ……」


 お父さんはまた泣きくずれた。お母さんもハンカチで顔を覆っている。


「沙也香、ありがとう。お前の嘘にお父さん、心が洗われた。

なんだか勇気が湧いてきた。もう何にも怖くなくなったみたいだ。

将来に希望がもてるみたいだ。しかし、なんでもっと早く気づかなかったんだろう」


「パパ、今からでも遅くはなくってよ。とにかくパパは、過ちを悔いて、

迷惑をかけた皆様にお詫びしなくちゃ。沙也香も許して頂けるようお祈りするわ」


映像はここで消えた。


「犯罪者の家族って、大変な思いするんだな」とゴリ。


「でも、沙也香っていう子、しっかりしてるじゃん。なんか、この家族、

大丈夫そうだし、立ち直れそうだな」


「そうかもしれないけど、今の映像、未来の出来事だから、お父さんが、

銀行強盗する前に、運命を変えられればいいのにね。

あ、そうだ。私、沙也香ちゃん一家の幸せをお祈りするわ」


 ジャンヌは、早速お祈りしている。ゴリも倣ってお祈りしている。

そうか、俺も他人ごとみたいに映像見てたけど、俺も追っかけお祈りした。


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