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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第二章 ジャンヌ・ダルク
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【ルーアン】

 次の日、朝目が覚めると、俺は裏庭へ回った。


 剥き出しになった石室の前辺りは、封印していた石の壁だったのか、

砕けた瓦礫が散乱していた。


 昨夜の雷は、この壁部分を直撃していたんだ。長い封印が解かれたわけだ。


 中は、岩盤がくり抜かれていた。ざっと高さが2・5メートル、幅4メートル、

奥行き7メートルで、奥が祭壇になっていて、

サッカーボールぐらいある大きな水晶玉が祀られている。


 昨夜、ジャンヌが祈ってから輝き出し、今も室内を照らし続けている。


 俺は祭壇に膝まずき、昨夜、大天使ミカエルより授かった

《平成の祈り》を祈った。

 俺が祈っても水晶は、応えて輝きを増してくれた。


 俺はジャンヌが来る前に、入口の邪魔になっている瓦礫を片付ける事にした。

 大きな瓦礫の片付けは、日曜日にジャンヌとゴリのお父さんが手伝ってくれる

から、みんなで片付けようということになっている。


 オカアも起きてきて、

「オズ、昨日は凄かったんだから、ドカーンという大きな音と、

家も激しく揺れたわよ、振動で窓ガラスが割れるかと思ったわよ」


「俺も頂上から見えたけど、落ちたのは家の近くじゃないかって、

やっぱそうだったんだ」


 俺は足場を片付けると、物置から、キャンプとサッカー観戦に使っていた

チェアーを三脚出して、祭壇前に置いておいた。


 今日は、神殿でのお祈り初日だ。土曜日で学校は休みだけど、

俺とゴリは部活がある。ジャンヌは、俺とゴリに合わせて、

7時にはやって来るはずだ。


 俺は、早めに朝食を済ませると、二階の俺の部屋から、

ジャンヌが来るのを眺めて待つ。


 ジャンヌの家の車だ。今日はお父さんが送ってきた。車から降りるとジャンヌは、

俺に気が付き笑顔で手を振って、

「おはよう」って朝のご挨拶。


 俺は、この笑顔が早く見たくて待っていたんだ。


 お父さんも車から降り、俺に挨拶すると帰っていった。

 俺は、急いで玄関へ行き、ジャンヌを迎い入れた。


「お母様は?」っといいながらキッチンへ。

オカアにも朝のご挨拶。


「ジャンヌ、今日も制服なんだ」

「ええ、私、お祈りごとの時には制服って決めたの」


「あ、そうか、ジャンヌは、《紫をまとういと高き天使》だからな」

「っていうか、学生の正装は制服でしょ。だから私、神様の前に出るときには、

制服を心掛けたいの」


「そういえば、神社の神主って、衣冠束帯だもんな」

「じゃあ、俺も制服に着替えてくる」


 俺は、制服に着替えて下へ降りて行くと、ゴリも来ていた。


「おう、おはよう。ゴリ、来てたの? ジャンヌがさあ、

神様ごとの時は制服着るっていうから、着替えてきたんだ。

カラーのホックも締めてるぜ」


「それなら俺もそうするよ」

「それからさ、これからは、朝来たら、横から入って、直接裏へいってもいいぜ、

いちいち玄関で、靴脱いだり履いたりしなくていいから。勝手口で声掛けても、

掛けなくてもいいから」


 みんなで裏にまわると、むき出しになった石室の奥から明かりが漏れてきている。


「わー、昨日の雷、凄かったのね」

「オズ、足場片付いてるじゃん。今朝やったの?」

「ああ、中に椅子置いといたから」


「明日は親父も手伝うし、作業着でくるから、片付けちゃおぜ」

「私とお父さんも、明日、作業できる服装でくるわ」


 三人中に入って、ジャンヌを真ん中に、俺が右で、ゴリが左に座った。


 ジャンヌが水晶の前に座っただけで輝きを増してきた。

 さっき俺が、同じく水晶の前で《平成の祈り》を祈ったが、はるかに輝いている。


 ジャンヌが胸の前で指をからめて合掌し、ピラミッドの印を組み、祈り始めた。

 水晶がシャンデリアのように透明に輝いている。石室内が真昼のような明るさだ。

 俺も目をつぶってお祈りを始めた。


 左のジャンヌの身体が、紫紺と金色と白光に入り混じりながら、

光がどんどん広がっていく。


 観世音菩薩の化身のようだ。いや、《紫をまとういと高き天使》だから、

祈ることで、天使の本来の姿がよみがえっているのだろう。


 それにしても、大天使ミカエルは、ジャンヌにどんな使命を与えるのだろうか?


 俺は、祈りに入っても、雑念が次から次と出てきて、なかなか集中できない。

ゴリはどうだろうか? いかんいかん。ゆっくり祈り続けよう。


 左のジャンヌの様子がおかしい。泣いているようだ。


 俺は目をそっと開け、ジャンヌをちらりと見ると、

泣きながら水晶を見つめている。


 水晶に映像が映し出されていた。

 それはよく見ると、火刑台に薪が積まれている。中世のフランス、ルーアンだ、

ジャンヌ・ダルクの火刑が、これから行われるところだ。


「ジャンヌ、大丈夫か?」

 ジャンヌは頷いた。ハンカチを握りしめ、瞳を濡らしながら、

じっと水晶を見つめている。


 ゴリも気がついて水晶を見つめている。


 水晶の画面の上の方が金色に輝き出した。

 ジャンヌ・ダルクが引き出されてきた。


 なんと、ジャンヌ・ダルクの背後には、沢山の天使が寄り添っている。


 火刑台に繋がれたジャンヌ・ダルクは、生気を失った表情で、

 中空を見つめている。


 火刑台上には、天使群が満ち溢れ、天空まで金色に輝いている。

 ジャンヌ・ダルクには、天使群が見えないようだ。


 ジャンヌ・ダルクの真後ろには、抱きかかえるように寄り添っている天使がいる。

 ひときわ輝いているのは、まさしく大天使ミカエルだ。


 火刑台の薪に点火された。ジャンヌ・ダルクは、何か必死に目で探している。


 前方に高く掲げられた十字架を見つけると。

『イエス様、イエス様、イエス様』泣き叫びながらイエス様を連呼している。


 火が勢いを増すにつれ、悲鳴とも絶叫ともつかね位に泣き叫び、

その声を、やがて炎と煙が消え去ろうたした時、


『この身をイエス様に委ねます』


 最後の言葉を発すると息絶えた。


 次の瞬間、ジャンヌ・ダルクの前が突然金色に輝き、

イエス・キリストが現れた。


 ジャンヌ・ダルクの肉体から、霊体が離脱し、光り輝いている。


 イエスの出現と、突然の変化に戸惑っているジャンヌ・ダルクに、


『汝は、我とともに天国に入らん』と仰せられ、紫紺の十字架を授けて祝福された。


『あ、イエス様』と驚きながらも膝まずき、十字架を受けた。


 イエスの祝福のあと、大天使ミカエルをはじめ、

沢山の守護天使たちからも祝福されている。


 やがて、イエスを中心に、光のエレベーターが天までつながっており、

昇天がはじまった。


ここで映像は消えた。


 ジャンヌはもう、泣いてはいなかった。結末が良かったので、にこにこしている。


「ジャンヌ、やっぱし、ジャンヌ・ダルクの生れかわりだったんだ」

 ジャンヌは頷いた。


「私ね、お祈りを始めると、大天使ミカエル様が現れて、イエス様が、

人類の罪をお受けになって、大犠牲として十字架に架けられたでしょ。

私も、ジャンヌ・ダルクの時代に、当時からの守護天使だった、

大天使ミカエル様と、イエス様との間では、火刑台で、

最後の使命を果たさせるべくお決めになっていたの。

それを、当時の私が、死の恐怖から、神様のみ心を、

素直に受け入れられなかったの」


「火刑台では、イエスはじめ、あれだけの守護天使が守っていたから、

助けようと思えば、いつでも助けられただろうし」


「そうそう、キリスト教を改宗しない女性が、火刑にされようとしたけど、

神様が、大雨とか強風で点火させず、釈放された話しを聞いたことがある」

とゴリ。


「さっきね、大天使ミカエル様が、いかなる時も、私をはじめ、

沢山の守護天使が護っています。ジャンヌは、けっして一人ではないのですよ。

だから安心しなさい。すべては《み心のままになさしめ給え》ですよ。

つらい思い出だけど、ジャンヌに見せておきますって」


「そうか、でも、初日から凄いもの見せられたな」とゴリ。


「なあジャンヌ、ジャンヌ・ダルクは、フランスを救うために生まれてきたろ。

だからジャンヌは、日本を救うために生まれてきたのかな? 

でも日本には、平和憲法があるから、戦争なんか考えられないし」


「さあ、私もまだ判らないわ。でも、大天使ミカエル様が、

地球の安寧と平和が実現されるって仰っていたわね。

今回《平成の祈り》を授かったでしょ。昭和から平成に元号が変わった時、

<平成>の意味付けとして、内外ともに平和が達成されることを願って

決められたから、何か平和を達成させる使命があると思うわ。

とにかく今は、四十九日間祈り通すことね」


「四十九日後、ジャンヌがどれだけ進化したか楽しみだな。な、ゴリ」


「俺たちも、せいぜい祈って、ジャンヌに置いてかれないように精進していくよ」


「ありがとう、モンチ、オズ。これからよろしくね」


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