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紫をまとういと高き天使  作者: げんくう
第一章 六国見山(ろっこくけんざん)
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【本山寺】

 ジャンヌのお父さんが、あらたまって、


「娘から、大澤さんと、大田さんの御子息の、出生についてのことを聞きまして、

私ら家内と、びっくりするやら、まさか、うちの娘が天使だなんて、

到底信じられませんでした」


 ジャンヌのお父さんは、ダイニングのお母さんと相槌を打った。


「私どもは、結婚してから長い間、子どもを授からなくて、諦めていたんです。

そんな折、父の法事がありまして、家のお寺の宗旨は、浄土宗なんですけど、

お寺のご住職から、浄土宗の宗祖法然上人は、ご両親の漆間時国ご夫妻も、

長く子どもが授からなかったんだそうです。

 そこで、本山寺というお寺に参詣して、観音様に祈願したら、

法然上人を授かったと聞いたんです。

 私どもも、最期の望みを託して本山寺へ祈願しに参ったんです。

 法然上人は岡山県のお生まれで、生誕地跡に、誕生寺というお寺がありまして、

本山寺は、そこから遠くない処にあるんです。

 それから、法然上人が幼少に預けられた菩提寺というお寺の、

三つのお寺を参詣したんです。

 この時の旅行で泊まった夜、夢に、紫のおくるみに包まれた赤ちゃんが現れ、

何処からともなく、『名前はジャンヌなり』と聞こえたんです。

 この夢は、私ども夫婦とも、同じ夢を見ました。

そして、夢は正夢となって女の子が生まれたのです。

 名前は勿論、夢のお告げのとおり、ジャンヌと付けました。

ですから、ジャンヌに関しては、神様からの啓示的なものは、

ジャンヌの名前だけだったんです」


 ダイニングにいるオカアたちも、みんな、ジャンヌのお父さんの話しを

聞いていた。


「そうだったんですか。それで、ジャンヌさんが生まれた時とか、

変わった兆候はなかったんですか? 

 うちのオズは、授かる前に、夢のお告げがあっただけですから」


「いえ、特になかったですね。誕生寺には、法然上人生誕の七不思議みたいのが

ありましたけど」


 ダイニングから、ジャンヌのお母さんが、


「法然上人のお母様の、秦氏君が懐妊された時、剃刀を飲み込む夢をご覧に

なったそうです。のちの御出家を暗示したものだったそうです。

 私は、先ほど主人が申しましたように、紫のおくるみと、

名前の夢を見ただけですの」


 同じくダイニングからオカアが、

「でも、紫のおくるみって、紫って、最も高貴な色でしょ、それに、

六国高校のスクールカラーだし、女の子の制服は、首に古代紫のリボンを

結ぶでしょ。ジャンヌさんも、今晩の出来事も、暗示されていたんですね」


「ということは、15年前から、というか、産まれる前から、子供たちが、

六国高校での出合いが定められていたなんて、ロマンですねー」


オトウもアルコールの量とともに、饒舌だ。


「ところでオズは、誕生日が5月31日なんですけど、ジャンヌさんは?」

「うちは、6月7日です」とお父さんが答える。


「あれ、ジャンヌさんも、ひょっとすると、ふたご座?」とオカア。

「ハイ、オズ君の一週間あとですね。曜日は同じになりますね」とお母さん。


「猿田彦君は?」

「うちは4月5日です」


「そうですか、さすが、しっかり先に生まれて、道筋をつけられたんですね」

 オトウもわけのわからないことを言っている。


「そういえば、本山寺も菩提寺も、山の中なんですけど、両方とも、

開基は役行者となっていましたね」


「と、いうことは、役行者のお導きってわけですかね?」とオトウ。


「さあ、それは判りませんけど、ここも役行者、ゆかりの地ですからね」

とジャンヌのお父さん。


 ゴリの親父さんが、

「椿大神社には、行満大明神という神様も祀られていて、

役行者を導かれたそうです」


「あ、そうなんですか。みんな、役行者とつながっているんですね」

とジャンヌのお父さん。


 しばらく、リビングのオトウたちと、ダイニングのオカアたちで、

それぞれ話が盛り上がっている。


 ジャンヌが、リビングのお父さんのところに来て、


「私、来月も、大天使ミカエル様から、お山に登るように仰せつかったし、

明日から毎朝、神殿で、お祈りさせていただくの。

オズくんや、モンチのお家にご迷惑かけるから、お父さんからも、

よろしくお願いしといて」


「そういうことですので、みなさんにいろいろと、ご迷惑おかけしますが、

よろしくお願いします」といって、二人で頭を下げた。


「いえいえ、そんな、お気になさらず、うちで出来ることなら、

全面的に協力しますから、な、お母さん」

とオトウは、ダイニングのオカアに同意を求めた。


「うちも、彦でできることなら、なんでも協力させていただきますから」

とゴリのお母さん。


「さっきもダイニングで、お母様たちにはお話したんですけど、

四十九日間、基本は断食なんですけど、無理をしない範囲でよいということですから、

昼食抜きの一日二食で、菜食で続けることにしました」


 ジャンヌがオトウたちに報告している。


「わー、ジャンヌさん大変だ。でも、それを続けて初めて、天使の資格というか、

力が発揮されるのかもしれませんね。天使になるための、修行っていうことですかね」


 みんなも頷いている。オトウもたまにはまともなことを言う。


「ジャンヌさん、家へは、というか、神殿とやらには、いつでもいらしてください。

早朝だろうが、深夜だろうが、どうぞ遠慮しないでください」


「お父様、ありがとうございます。神様のみ心に叶いますよう頑張ります。

どうぞみなさん、よろしくお願いします」


 ジャンヌは、みんなに頭を下げた。


「いやー、四十九日後が楽しみですね。神様から、免状とか、特別何か授かるとか」

「お父さん、そんな他人事みたいに言わないの。ジャンヌさんに、

プレッシャーかけちゃだめですよ。ごめんなさいね」


「いいえ、私、絶対頑張りますから」


 オトウは二人のお父さんに向かってグラスを上げ、

「それでは、ジャンヌさんの成功を祈念して」


「お父さん、それが最後の乾杯にしてくださいよ。

もういい時間だし、子供たちも疲れているんですから」


 待ってましたとばかりに、二人のお父さん、お母さんも、

一斉においとましますということで、お開きとなった。

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