プロローグ
惑星標準歴2165年4月24日。
この日は、人類にとって、忘れることのできない悲劇の一日となった。
突如、惑星軌道上に現れた異星人=ヴェルガン人によって、容赦の無い無差別攻撃を受け、滅亡の危機にさらされたのである。
厳密に言えば、この日に起こったのはヴェルガン人との直接の戦闘ではなく、惑星規模の同士討ちであった。なんの前触れもなく、いきなり各国の軍事基地のコンピューターが全世界で一斉に暴走し、こともあろうに自国の都市をミサイルで攻撃し始めたのだ。完全に不意をつかれることとなった各国は、阻止しようとするにも有効な手段がなく、武力で基地を破壊しようにも、国内の全ての基地が暴走しているため、為す術もなかった。また、他国の助けを借りようとしても、世界中で同じことが起こっており、ただ滅んでいくのを待つしかなかったのだ。
そして、都市が壊滅状態になった後、今度は軍事基地同士の同士討ちとなり、巡航中の空母や巡洋艦、果ては潜水艦まで破壊された。最終的には、世界中の軍事力が無力化されてしまったのだ。
この壮大な同士討ちは丸一日にわたって続いた。この結果、この日一日だけで人類の九割以上が死亡したと言われている。
その翌日、荒廃したこの惑星の上空に、全長数キロの巨大な宇宙船が現れた。ヴェルガン人の母艦である。巨大宇宙船は、搭載していた小型空母艦を各都市の上空に配備、残存勢力の掃討を始めた。
この時点で、ようやく何が起こったのか人類側が察したが、すでに手遅れであり、もはや反攻する戦闘力も残っていなかった。
こうして、この惑星はヴェルガンのものとなったのだ。
だが、ヴェルガン人はこの惑星への移住や統治には一切の興味を示さず、地上に降りて住むこともせず、人類側とコンタクトをとることも全くなかった。彼らは、ただひたすらこの惑星が持つ鉱物資源の採掘に明け暮れていた。また、同時に、彼らは残された人類に対してもなんら関心を示さなかった。人類はまるで野生動物か路傍の石であるかのごとく放置され、ひっそりと生きている限りは虐殺されることもなく、完全に自由のままにされていたのである。これは、ヴェルガンにとって、人類はいわば、注意を払うに値しない存在と考えていた証であった。
そして、侵略から半年が経過したある日。
廃墟と化した、とある研究所の地下施設で、文字通り、人類の未来を変えてしまう装置が、試験運用されようとしていた。




