第4話 受験者の実力差
(いよいよ魔幻府だな……)
街の入り口の大門で、警備兵に手形を見せ、アルティア市内に入った後、クリスは早速、試験が行われる魔幻府に向った。
マジスタのライセンス認定試験は実技と筆記に分かれている。
実技試験は夜明けから受付が開始されており、受付順に試験が行われる。これは見習いを修了した者、つまりランク1の魔幻語使いが受験することになっていた。そしてその後、申込者全員が一斉に筆記試験を受ける。
まだ受付が開始されたばかりの早い時間であったが、なにぶん初めて来る街である。直前になって迷ってはいけない。そう考えて、警備兵に道をたずねて、早めに行くことにしたのだ。
アルティアは、さすがに大国の首都らしく、まだ朝早いというのに、露店で品物を出す商人やら、朝市の準備をする人たち、そして、街を流れる水路のそばで洗濯する人たちやらで、すでに通りはにぎわっていた。それを眺めながら、教えてもらったとおりに歩いていくと、やがて高い塀に囲まれた、広大な敷地に出た。敷地の中には大きな建物や塔などが立ち並んでいるのが見える。
(ここが、魔幻府か)
敷地への入り口らしい、正面の巨大な門はすでに開いており、門を入ったところに門兵の詰め所があった。
門をくぐって、詰め所の窓口にいる門兵に話しかける。
「すみません、マジスタの認定試験の会場ってどこですか?」
「ん、あんた、試験受けるのかい。それなら、考査棟だな。この前の道をまっすぐ行って、突き当たりにある中央庁舎を右に行ったところだよ」
「ありがとうございます」
礼を言ってクリスは言われたとおりに中央庁舎に向かって歩いていった。
魔幻府の敷地は、大きく東西の二つの区画に分けられているようで、東の区画が戦闘魔法を使う職業に関する庁舎が並んでおり、西の区画には、生活に関係する魔幻語使いを管轄する建物が配置されていた。
まだ早朝のお役所ということもあるのか、市内と違ってほとんど人通りもなかったが、実技試験を受け終わったとおぼしき魔道士や魔道剣士に何人かすれ違った。
(もう、始まっているんだな)
中央庁舎を右に曲がってしばらく歩くと、 大きな石造りの建物の前に出た。正面には大きな石柱が何本もある壮大な造りで、重厚な雰囲気である。
(ここか……)
巨大な入り口への段を上がって中に入ると、広いスペースと高い天井のロビーになっており、その中央には大きな机が置かれて、係官が受験者の受付をしていた。
「おはようございます。お名前とクラス、そしてランクをお願いします」
クリスが机の前に立つと、まじめそうな若い男性の係官が聞いてきた。
「はい。クリスと申します。ランク1魔道士です」
魔幻語を使う職業は能力によってランク1から8までの八段階に分けられている。見習いを修了した時点でランク1と見なされ、その後、魔幻府の査定を受け、昇格することになるのだ。
係官は手元の用紙にペンをさらさらと走らせる。
「出身はどこですか?」
「ウイートリー村です」
「ウイートリー村……と。師匠はどなたですか?」
「カーティス老師です」
係官はそれまできわめて事務的に用紙に記入していたが、クリスがその名前を出したとたん、顔を上げた。
「カーティス老師というと、もしかして、あのご高名な?」
「ええっと、はい」
「なるほど」
そう言って、係官は初めてクリスの顔を見た。
「それはそれは。あなたは老師のお弟子さんでしたか」
「ええ、一応はそういうことになってます……」
クリスの師であるカーティスは稀代の魔道師の呼び声高く、宮廷魔道師長として長年王宮に仕えてきたが、十数年前に職を辞し、ウイートリー村に住処を構え、隠居生活をしながら魔道の研究にいそしんでいた。第一線からは退いたものの、現世代では未だにカーティス老師を越える魔道師は出ていないと言われている。
老師は特に後進の指導などはしていなかったが、たまたま考古学者であるクリスの父親が老師の弟子であり、発掘調査のために世界中を飛び回っていたため、幼少の頃から何かあると老師に預けられていたのだった。そして、青年になったあとも、老師の身の回りの世話をしながら研究に励む内弟子のような生活をしていたのだ。
「ぜひがんばってくださいね。カーティス老師のお弟子さんのような優秀な方に働いてもらえるのは、わが国としても歓迎であります」
「ありがとうございます」
クリスはすこし苦笑いを浮かべつつ、礼を言った。
(いくら師匠が稀代の魔道師でも、弟子がそうとは限らないんだけど……)
優秀どころか、褒められたこともあまりない。むしろ、自分には類まれな才能があるわけではないので、その分努力しろとまで言われていたのだ。実際に、基本的な練習ばかりをやらされ、応用にはなかなか進めず、師を呆れさせている。
(こりゃ、うかつに、先生の弟子とは言えないな……)
これまでは、人里離れた村に住んでいたため問題にならなかったが、アルティアでこの名前を出せば誤解されてしまいそうだ。
係官は、クリスの苦笑いには気がつかず、用紙にさらに何か書き込んだ後、下の部分を切り取り、差し出した。
「それでは、こちらがあなたの受験票です。試験が始まる前に試験官に渡してください。あなたの実技試験は第四闘技室で行います。受付順に行いますので、名前を呼ばれるまでは、闘技室横の控え室でお待ちください。そのほかの諸注意や筆記試験の詳細はこの受験票に書いてますので、目を通しておいてくださいね」
「はい、わかりました」
クリスは受験票を受け取り、礼を言って、重厚な石造りの広い廊下を歩いていった。
まだ朝早いせいか、他の受験者の姿もなく、通路を歩くものは他にない。コツコツと歩く音を響かせながら、控え室に向かった。
ところどころに書いてある案内板に従ってしばらく行くと、突き当たりに、「公認魔幻語士認定試験 実技試験会場控え室」という固い名前の表示のある部屋が見えた。
(ここか)
ドアを開け中に入ると、そこは二十人ほどが収容できそうな小部屋だった。室内は何の装飾もなくゴツゴツした暗い色の石壁がむき出しになっている。 いくつかの長イスが壁に沿うように並べられ、奥には別の出入り口があった。
長イスにはすでに二人ほどが座って順番を待っていた。見た感じ魔道剣士と魔道士である。
クリスも適当なイスを選んで座った。
部屋を見渡すと、いかにも闘技室の控え室らしく、剣やオノ、槍などの武具が壁にかけられたり、棚にかけられたりしていた。
試験前の緊張か、硬い雰囲気が部屋を覆っていた。
(うう、なんか僕も緊張してきたな……)
無意識のうちに、クリスは胸のポケットに手をやった。そこにはお守りが入っている。村を出るときにカーティス老師から餞別としてもらったものだ。お守りの中には魔法力回復の薬が入っていると聞かされていた。
ふと、師との別れを思い出す。
『先生、それではお世話になりました』
『もう行くか』
『はい。今日出発すれば月初の試験に間に合うと思いますので……』
『さようか。ならば、しっかりな』
『はい。先生に教わったことを生かし、必ずや認定試験に合格して、修行に努めます』
『まあ、そう力まんでもよい。そなたなら大丈夫じゃよ』
『ありがとうございます』
『うむ。達者で暮らすのだぞ』
『先生も、お体には気をつけて』
『おお、そうじゃ。忘れるところであった。これをもっていくがよい』
老師は袖から小さな布製のお守りを取り出して、クリスに差し出した。
『これは……、お守りですね。ありがとうございます』
受け取って、胸のポケットに入れようとしたときに、ちゃぽんという何か液体のはねる音が聞こえた。
『あれ、中に何か入ってますか?』
『うむ。わしが調合した魔法力回復薬じゃ。何かのときに使うがよい』
『先生……』
『たまには顔を見せるのじゃぞ。ここがそなたの家なのだからな』
『……はい』
そんな言葉を交わして、故郷を離れ、今ようやく認定試験を受けようとしている。
試験は毎月行われ、何度受けてもかまわないことになっていた。したがって、今回不合格でもまた来月受ければよい。しかしながら、次の月まで試験を待つのは避けたかった。仕事もなくアルティアで一月も生活できないし、かといって、修行に出ると言って別れを告げた老師の元に戻るのは気恥ずかしい。何よりも、自分なら大丈夫だと言ってくれたのに期待を裏切るようでいやなのだ。
しばらく待っていると、自分の向かいの壁際に座っていた、魔道剣士らしい屈強な男が話しかけてきた。自分よりも十は年上に見える。
「おう、そこの若けえの。魔道士かい? 見たところ、見習いが終わったばかりの新人だな?」
「えっ? は、はい、そうです」
『なりたて』が強調されて、新人かどうかを問われるのは今日これで二回目である。能力の差はともかく、同じランク1魔道士でも、なったばかりかそうでないかはそれ程まで見た目に表れるのだろうかと、訝った。
「気をつけたほうがいいぜ。おめえさんみたいな弱っちい奴は、この試験は通らねえからな」
「そうなんですか?」
「あたりめえじゃねえか。役に立たねえ奴にライセンスやっても意味ねえし、魔道大国アルトファリアのメンツもあるからな、質の悪いマジスタを増やしたくねえんだよ」
「なるほど……」
「フン、それならあんたは受かるっていうのかい。自信、アリそうだけどさ?」
別の椅子に座って二人のやりとりを聞いていた魔道士らしい女性が、話に加わってきた。何やら姉御風の雰囲気と顔立ちで、いかにも場馴れしている。
「当たり前よ。俺はたった二ヶ月で見習いを終えたんだぜ。それだけじゃねえ、ずっと用心棒暮らしで、経験も積んでんだ。トロルも倒したことがある」
トロルは大型の魔物で、力も強い。ランク2相当の魔物のはずだ。
魔物は、その強さを分かりやすく把握するために、魔幻語使いのランクで示されており、基本的には同じランク以下の魔物なら戦えることになる。つまり、ランク1の魔道剣士がランク2のトロルを倒せるのは相当に「できる」と言えた。
その自慢げな言葉にはうそはないらしく、胸板は分厚く、鉄の胸当ては窮屈そうだ。また、肩当てから見える腕の筋肉は盛り上がり、全体的にも筋骨隆々に見える。そして、体は浅黒く焼け、体中に傷跡があった。まさに、歴戦の強者に見える。ひょろひょろと背が高いだけで、生白い自分とは雲泥の差であった。
だが、女性の方は、そんな男性のセリフに感心するどころか、鼻でせせら笑った。
「ハン、あたしだって、見習い修了まで三ヶ月しかかかってないわよ。それに、トロルぐらいならあたしもやったことあるわよ。それぐらいで自慢されてもねぇ。ねえ、アンタだって似たようなものでしょ?
女性は、いきなりクリスに話を振ってきた。
「は、はあ、まあ。そこそこ、そんな感じで……」
お茶を濁して答える。実は、自分は見習い修了まで一年半かかった上に、大した戦闘経験がないなどと言える雰囲気ではなかった。師の方針で、徹底的に基本練習ばかりをやらされて、派手な呪文も学ばず、手強い魔物との実戦経験も積んでいない。せいぜいゴブリン程度が関の山だ。
(ゴブリン八体に囲まれて、犬に助けられたというのは……言わないほうがいいな)
さっきの経験を話そうかとも思ったが、笑われそうなのでやめておく。
「ほらね、こんな子だって、それぐらいやるのよ」
「チッ」
「だからって、この子が受かりっこないってのは、アタシもそう思うけどさ。まあ、今回は仕方ないけど、私たちぐらいに経験積んでからまた受けに来なよ」
女性魔道士が慰め顔で言った。
「は、はあ、そうですか……」
この二人のどちらが上かはともかく、少なくとも、この二人には自分がよほどの素人に見えているらしい。
だが、それを聞いて、クリスはひたすら心配になってきた。
(そんなに試験は厳しいのか……)
偉大な師と二人で修行を積んだため、自分の実力が他者と比べてどの程度なのかは分かっていないが、この二人ほどの実践経験を積んでいないのは事実だ。もし、彼らと同程度の経験を求められるなら、自分は相当に厳しいのではないか。
あれこれ悩んでいると、部屋の奥の扉が開き、係官らしき男性が出てきた。
「モラン村のリロイさん」
「ああ、俺だ」
魔道剣士が顔を上げた。
「では、リロイさん、こちらに来てください」
「おう。じゃ、先に行くぜ、二人とも。おめえらがライセンス取れたら、また会おう」
男は立ち上がってのしのしと係官の後について出て行った。
(うう、あの人ホントに強そうだったな……。こんなので、大丈夫かな……)
実技試験はランク1だけが受験することになっているため、ここにいるのはみんな同じランクのはずだが、周りを見渡すと、この魔道士らしい女性だけでなく、その後新たに入ってきた魔道剣士らしい女性も、魔道士らしい男性も、一様に凄腕のように見えてきた。
(……いかんいかん、僕もちゃんと修行してきたんだから、がんばらないと)
そうこうしているうちに、また係官が入ってきて、メーガンという名前だったらしい女性魔道士が呼ばれて出て行った。その間にも新しい受験者が控え室に入ってきたので、部屋の人数はさほど変わらないが、クリスは次は自分の番だと当たりをつけていた。
(もう、そろそろかな。今いる人たちはみんな僕より後に入ってきた人だし……)
はたして、
「ウイートリー村、クリスさん」
しばらくすると、係員が入ってきて、部屋を見渡しながら呼びかける。
「は、はいっ」
あわてて立ち上がるクリス。
「では、クリスさん、こちらへ。それと受験票をお願いします」
「はい」
クリスは、自分の受験票を渡して、やや緊張しながら係官の後について部屋を出た。
扉の向こうは短い通路になっており、その通路の向こうは、もう闘技室の中だった。
それほど大きなものではないが室内の闘技場としてはかなりの規模で、楕円形のアリーナの周りにはすり鉢状に観客席も作られていて、立派なものだった。天井も三階分以上の高さがとってある。
試験中のためか、観客は誰もいない。
(すごいところだな……)
アリーナの中央では、自分の前に呼ばれたメーガンが、試験官らしい男性と一対一で戦っていた。両者から、激しい炎の球が飛び交っている。
(あ、さっきの人だ……)
「ハッ」
「エイッ」
両者の激しい気合いも聞こえる。
試験官の男性も魔道士のようだった。長身でがっしりした剣士のような体つきで、クリスより何歳か年上に見えた。
そこからやや離れたところに審判席が設けられ、三人ほどの老師が長机に陣取り、採点用紙らしい紙に書き込んでいた。さらにその横には、白いローブを着た医師と助手らしい女性がいた。おそらく、試験中のケガなどを治療するためにいるのだろう。だが、クリスはその医師たちが何か懸命に治療しているのに気がついた。誰か床に寝かされているようだ。
(ん? あれは……、確か、さっきの……リロイとかいう人じゃないか……)
何かあったのだろうか、あれほど強そうに見えたのに、と不思議に思っていると、医師が回復呪文を掛けたのか、淡い緑色の光がリロイを包む。
そして、係員らしき者が数名、別の入り口から担架を持って入ってきた。
(もしかして、重傷なのかな……)
リロイは意識がないようだった。皆に抱えられるようにして担架に乗せられ、そのまま運ばれて出て行った。よほど容態が悪いらしい。
(一体何があったのだろう……?)
「クリスさん?」
「あ、す、すみません」
係官の声に我に返る。気が付くと、係官が立ち止まってこちらを見ていた。
クリスは慌てて後ろに付いてきながらも、目を離すことができなかった。
「それでは、こちらにお座りください」
振り向くと闘技場の壁際に長いすが置かれていた。クリスはうなづいてイスに腰掛ける。
アリーナでは相変わらず、戦闘が続いていた。
クリスはカーティスと二人で修行していたため、他者の戦闘を見るのはこれが初めてである。
だが、改めてよく見るとその差は圧倒的だった。
メーガンが、一方的に押されているのだ。
炎の玉を連続で撃ち込まれ、体力を削られていくのが傍目にもよく分かった。
「どうした? そんなことでは、マジスタになったところですぐに死んでしまうぞ」
試験官の言葉が聞こえてくる。彼はさまざまな呪文でメーガンを攻撃していた。
彼女も必死に反撃しようとするが、あまりにも力に差があるため、何の脅威にもなっていない。
その顔には、恐怖の表情が浮かび始めていた。
「これで、とどめだ!」
試験官は、そう叫んで、ことさらに大きな火の玉を出した。
「ヒ、ヒイイッッ」
それを見たメーガンは、おびえた声を上げて、背を向けて逃げ出そうとする。だが、すでに攻撃準備が完了している相手に背を向けるのは自殺行為であった。
「馬鹿者。逃げるな! ハアッッ」
試験官が巨大な火の玉を投げつけた。火の玉は、狙い違わず彼女の背中に直撃する。
「ギャアアアァァッッ」
激しい炎に包まれたメーガンは、断末魔の叫びを上げて、その場に倒れた。炎はすぐに消えたが、ひどい火傷を負ったらしく、ブスブスと体中から煙を出したまま、ピクリとも動かない。
「そこまで」
審判席に座っていた一人の老師が大きな声で叫んだ。すぐに、医師と助手が駆け寄りメーガンを待機場所まで連れ出して、回復呪文をかけ始めた。緑色の淡い光が、彼女の体を包み込む。
係の者たちが担架を持ってきたが、彼女は意識が戻らないようで、数人がかりで体を持ち上げ担架に乗せた。さらに、医師が回復呪文を掛ける。
その様子を目の当たりにして、クリスは青くなった。
(これが、実技試験……? そんなの、聞いてないって……)
試験である以上、求められる基準があることは分かっていたが、受験者が次々と瀕死の状態になり、担架で運び出されるなんてことは、カーティス老師からも聞いていなかったのだ。おまけに、二人とも自分よりはるかに経験を積んだ魔幻語使いのように見えたのに、この有り様である。それなら、果たして自分はどうなるのか。
さらに恐ろしいのは、周りの誰も慌てていないことだ。
火の玉を撃った試験官も、審判席の老師たちも、そして、治療している医師や助手まで、誰一人動揺していないように見える。単に、誰かが転んで擦り傷を負った程度の気軽さが感じられるのだ。
『そなたなら大丈夫じゃよ』
出発前にカーティスが自分に言ってくれた言葉が脳裏に思い出される。
(せ、先生、その言葉信じてもいいんでしょうか……)
そして、しばらくして、審判席の一人が、クリスのそばにいる係官に手を上げて合図をする。それを見て、クリスは
(いよいよか)
と身構える。そして、案の定、係官が声をかけた。
「それでは、ウイートリー村、魔道士クリスさん、アリーナ中央へどうぞ。この後は試験官の指示に従ってください」
「はい」
(もう、ここまできたら仕方がない。やるだけやらなきゃ……)
クリスは覚悟を決めてイスから立ち上がる。メーガンが運ばれて出て行くのが目の端に映ったが、見なかったことにした。そして、アリーナの中央にいる試験官に向かって歩いていった。