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公認魔幻語使い(マジスタ)の日常生活  作者: ハル
◆第四巻 遙かなる時の漂流者
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仕組まれた時間転送(クロノポート) (1)

 それから四日後の午後。


 レイチェルは、実験室内での調査にいったん一区切り付けると、地上に戻った。自分が割り当てられた小屋で休憩するためだ。

 発掘現場は火山麓にある森の中だったが、ちょうどすぐそばにすこし開けた草地があり、そこが発掘隊の宿営地となっていた。仮設とはいえ高床式の立派な小屋が数棟と、天幕がいくつか張られていて、その小屋の一つを自分の部屋として与えられていたのだ。室内には、ベッドと机、テーブルと幾つかの椅子、そして、ワードローブがあるだけの簡素な造りではあったものの、十分に快適だった。


(ふう、ちょっと疲れたかな……)


 レイチェルは小屋に入ると、ハーフローブを脱いで椅子の背に掛け、そのままベッドに寝っ転がった。そして、右手の甲を額に当てて、目を閉じる。


 地下の実験室に入れるようになってからというもの、毎日朝から晩まで籠りっぱなしで調査をしており、さすがに疲労が溜まってきていた。

 ウォルターが体調を気遣って、一日くらいゆっくりするように勧めてくれたが、レイチェルは休みたくなかった。この時代に目覚めて、数ヶ月。ようやく家族に直結する手がかりと、帰還の方法を見つけたのだ。たとえ休んだとしても居ても立ってもいられなかっただろう。だが、丸四日も不休で調査していれば、いくらレイチェルが若くとも体力の限界であるし、頭の働きも鈍くなる。ウォルターの勧めに従い、すこし休息を取り、調べてきたことを振り返ろうと思ったのだ。


 これまで根を詰めて調査した甲斐あって、さまざまなことが判明した。その最たるものは、やはりクロノポーターの状態であろう。パーツごとの検査と予備実験、ならびに負荷試験(ストレス・テスト)を繰り返した結果、当初の推測通り、一万年前への転送に耐えうることが分かった。また、エネルギーセルも完全に充填されており、十分な容量が残っていた。あとは、レイチェルが操作に慣れればいいだけである。


 また、実験室の入室記録とクロノポーターのシステムログからも、新たに分かったことがあった。クロノポーターが最後に起動されたのは、レイチェルがコールドスリープ入ってから半年後であり、その時、両親とアマンダが、三人とも実験室に入室した記録が残っていたのだ。つまり、彼らは惑星規模の同士討ちを無事に切り抜け、その後、少なくとも半年間は生存していたことになる。


(本当によかった、三人とも無事で……)


 ずっと心配だった家族の行方。これは、レイチェルにとっては一番知りたかったことであった。自分が基地の映像で見た、あの苛烈を極めたミサイル攻撃を生き延びたことが分かっただけでも、深い安堵を感じていた。


 その一方で、不可解な点も見つかった。入室記録とシステムログの両方に、消去された痕跡があったのだ。

 システムログには、クロノポーターが父によって起動され、アマンダによってプライマリーシステムの動作チェックが行われたところまでの記録は残っている。しかし、その後からの記録が一切見つからないのだ。

 最初は、起動しただけで何もしなかったのかとも思ったが、たとえ待機中であっても起動している限りユニットごとの詳細な状況が記録されるうえ、シャットダウンの記録すら残っていない。クロノポーターのシャットダウンは、多岐にわたる高度な装置を安全に停止させるため、複雑なプロセスになっている。それが記録されないことはありえない。それに、改良や欠陥の発見には詳細なログが必須であるため、むやみに消すような類のデータではないのだ。


 実験室の入室記録も同様だった。クロノポーター起動直後から、実験室に人が出入りした形跡がまったく残っていない。それどころか、三人が退室した記録すら残っていない。

 消去されたのは明らかだった。


(誰が、何のために消したのかしら……)


 父かアマンダが消したのか、それとも、後から誰か別の人間が消したのか、もうそれすらも分からない。


(やっぱり、不可解なことが多すぎる……)


 鍵のないアマンダの日記と、自分だけが開けることができない倉庫、そして、消されたログ。

 これらが何かを指し示していることは間違いないだろう。ただ、それが何なのかをどうしてもレイチェルは読み取ることができなかった。


(はあ……、ダメね、手がかりが少なすぎてどうしようもないわ。何か、別の手段を考えないと……)


 レイチェルは目を開けて、ため息を付いた。


(それにしても……)


 ふと、レイチェルは、この四日間ずっと考えていた懸案、すなわち、元の時代に戻るべきかどうかに思いを向けた。


(私、どうしたらいいのかな……)


 クロノポーターを見つけた時は、帰る手段を得られたことに興奮したものの、そのあといろいろなことを考えると、過去に戻ることに迷いを感じるようになったのだ。


 その最も大きな理由は、今の生活に満足していることにある。友人もできて、自分がなすべき仕事があり、居場所もできた。それに、まだ淡い想いにしか過ぎないものの、心惹かれる相手もいる。そして、家族や友人が亡くなって天涯孤独になったことも受け入れ、もう前を向いて進み始めていた時だったのだ。

 クロノポーターで過去に戻るということは、ここで築いた絆や縁を全て捨てることを意味する。もう少し前なら、まだ踏ん切りも付いたかもしれない。だが、今となっては、それはとても辛いことに思えた。


(クリス……)


 永遠の別れなど考えたくもない相手の、優しい笑顔が浮かぶ。 


(それに、もし、帰ったとしても……)


 また、家族が結局どうなったのかが全く分からないことも大きな不安材料だった。

 クロノポーターが最後に起動された時には、家族三人とも生きていたことは分かった。したがって、その時点に戻れば、再会できるのは間違いないだろう。


 だが、問題はその後だ。


 自分の生きていた時代から一万年が経過した今、当然ながら全員亡くなっている。しかし、自分は彼らがどのような最後を迎えたのかを分かっていない。天寿を全うできたのか、それとも、不慮の事故や何らかの戦闘に巻き込まれて亡くなったのか、今となっては確かめるすべもない。そのため、極端なことを言えば、クロノポーターを起動した翌日に、新たな攻撃で三人とも亡くなってしまっていた可能性すら否定できないのだ。実際に、アマンダの血痕が発見されているではないか。そして、痕跡が発見されていないだけで、父や母も同じような運命をたどっている可能性も否定できない。

 もし、仮にそれが現実だとすれば、自分は、家族が死ぬところを見るだけのために過去に戻ることになる。それで天涯孤独になるのでは、何のために今の生活を捨てるのか分からない。


 もちろん、過去に戻って未来を変えることは可能である。しかし、何時どこで何が家族に起こるのか分かっていない以上、過去に戻っても結局自分は何もできないのだ。


 戻った挙句に、また一人ぼっちになるかもしれない。

 その思いが、レイチェルを躊躇させていたのだった。


(でも、もうゆっくりとはしていられない。早く決めないと、手遅れになる……)


 その一方で、レイチェルにはあまり時間が残されていないことも分かっていた。この調査が終わったら、ウォルターはアルトファリア政府に報告するだろう。そして、これだけの装置であるからには、政府の管理下に置かれ、たとえレイチェルであっても、そうそう自分を転送させるような機会はないかもしれない。ゆえに、もし過去に戻るなら、自分たちしかいない今しかないのだ。だが、その決心が今だにつかない。レイチェルは堂々巡りに陥っていた。


(私、どうしたらいいのかな……?)


 思いはまた最初に戻る。このところ、このループの繰り返しだ。


(はあ……)


 しばらく出口の見えない自分の考えに沈んでいると、やがて、体が暖かくなってきて、まぶたが重くなってきた。やはり体は正直だ。


(まあ、いいわ。もうしばらくは大丈夫よね……)


 ウォルターたちの調査はまだしばらくは終わらないだろう。自分の決断はその時でもいいはずだ。


 もう少しだけ考えよう。

 目を閉じてそう決めるのと、レイチェルが眠りに落ちるのはほぼ同時だった。




 ◆◆◆◆◆◆




(ん……)


 それからしばらく後。ふとレイチェルが目を覚ましたのは、小屋の外から何やら聞き慣れた声が聞こえてきた気がしたからだった。ぼんやりと目を開けると、すでに窓から差し込む日差しは夕方近くのものになっている。


「離せ、離しやがれ」

「もう! この輪っか、早く取りなさいよ!」

「私たちに何の用があるのだ?」


(あの声は……! グスタフさんが、戻って来たんだわ)


 声の主が誰だか分かった途端、眠気はすぐに吹き飛んだ。急いでベッドから起きて立ち上がる。少し眠って疲れがとれたのか体が軽い。そのままハーフローブを羽織って、扉を開けた。案の定、目の前の広場にはクリスたちがいた。なにやら光の輪のようなものに手を体ごと縛られて、グスタフに連れられている。発掘隊に雇われてた村人たちが、その様子を遠巻きに見つめていた。


「クリス! みんなも!」


 小屋の階段を駆け下りて、レイチェルは一目散にクリスたちに駆け寄った。


「あれ、レイチェルじゃないか!」


 クリスたちが光の輪に縛られたまま、レイチェルの方を振り返る。

 だが、レイチェルの予想に反して、クリスは、レイチェルの姿を見ても嬉しそうな顔をせず、むしろ心配そうな顔になった。


「君も、囚われの身だったのか。大丈夫かい?」

「えっ?」


 一体何の話をしているのだろうと思った時、隣の小屋のドアが開いて、中からウォルターもエドモンドとリンツを連れて出てきた。恐らく同じように声が聞こえたのだろう。そして、クリスたちの姿を見つけて、片手を上げて嬉しそうな表情で近づいてくる。


「おお、クリス、そしてみんな、よく来てくれたな。久しぶりじゃないか」

「と、父さん!」

「おいおい、どうなってんだよ、これは?」


 グレンが、大声をあげた。

 ウォルターは、ボロボロになって光の輪に縛られているクリスたちを見回し、そして、グスタフもまた傷だらけになっているのを見て面白そうに言った。


「グスタフ殿、ご苦労でしたな。なかなか、息子たちも善戦したようで」


 ウォルターの言葉に、グスタフもニヤリと笑う。


「まったく、こんなに面倒なことになるとは思わなかったぞ。初級パーティーなど、出鱈目もいいところだ。だが、これなら、思ったよりは役に立ちそうだな」

「ほう、それは何よりですな」

「は?」


 ウォルターとグスタフが、いかにも気心の知れた仲という雰囲気で話しているのに気がついて、クリスたちが、キョトンとする。


「ここまで来れば、もうこれはいらぬだろう」


 グスタフが呪文を唱えて、光の輪を解除した。


「え、ど、ど、どうなってんのよ、これ?」

「と、父さん?」


 縛めを解かれた五人は体をさすりながら、戸惑った様子で、自分たちの前に居並んだグスタフとウォルター、そして、レイチェルを見比べる。


「まあ、落ち着け。お前たちは、私がグスタフ殿に頼んでここまで連れてきてもらったのだよ」

「えっ?」

「え、えええええええっっっ?」

「マ、マジかよ……」


 よほど意外だったのだろう、クリスたちが一斉に驚いた声を上げた。


「ちょ、ちょっと、それどういうことよ? あたしたち、死ぬかと思ったんだから」

「そ、そうだよ、父さん」


(あらら、結局、無理やり連れてこられたのね……)


 焦る彼らを見て、レイチェルは心の中で同情しつつ、苦笑を禁じ得なかった。ボロボロの様子からすると、グスタフに叩きのめされたのだろう。全て、ウォルターの思惑通りだ。

 だが、ウォルターの方は全く動じた様子もなかった。


「ははは。すまん、すまん。どうしても早急にお前たちに来てもらわなければならない用事があったのだ。レイチェル殿に聞いたら、お前たちはミッションでカトリアにいるというのでな、一番手っ取り早いのは、このグスタフ殿に連れて来てもらうことだったのだよ。同行をぐずるようなら、死なない程度に叩きのめしてもいいと言ったのだが、お前たちもなかなか頑張ったみたいじゃないか」

「そりゃ、僕たちも、死に物狂いだったから……」

「いい実戦経験になっただろう?」

「と、父さん、何か、めちゃくちゃだよ、それ……」


 クリスは呆れたのか、反抗する元気もなかったようだった。


「ちょ、ちょっと、待て。じゃあ、グスタフさんよ、なんでクリスのオヤジさんとレイチェルが待ってるって言わねえんだよ」

「そうよそうよ! 最初から言ってくれてれば、あたしたちこんな目に遭わずに済んだんじゃないのよ!」

 

 だが、このグレンとパルフィの抗議にも、グスタフは腕組みしたままビクともしなかった。


「ん? だが、御用のある方がいると言ったではないか?」

「そんなの、誰か分かんないじゃない!」

「ふむ。そうは言うが、お前たち。ウォルター殿とレイチェル殿が待っていると告げていれば、信じていたかな?」

「え、そ、そりゃ、まあ、そう改まって聞かれると、信じてなかったかもしれないけど……」


 パルフィは言い返せずに口ごもる。


「だろう?」

「だから、私が、無理やりでいいから連れてきてくれと頼んだのだよ。本当は、エドかリンツを一緒にやれればよかったんだが、長距離テレポートで人数が増えるのは避けたかったからな」


 ウォルターが愉快そうな微笑みを浮かべながら、肩をすくめた。


「で、でもさ、グスタフ……さん、がなんでみんなと一緒にいるのよ?」


 やや矛先を収めたパルフィが尋ねる。


「ああ、それは簡単だ。私が、発掘隊に入らないかと誘ったんだよ」

「は?」


 もう一体何がどうしてこうなったのか、全くついていけないクリスたちは、もはやポカンとするだけだった。前回、グスタフと会った時は、ウォルターとグスタフは命をかけて激しく戦ったのにこれである。


「まあ、話せば長くなるが、あのフィンルートでの一件の後、いろいろと調査や裁判やらが行われてな、ベルグ卿の家はお取り潰し、その領地は改易処分となり、従臣は路頭に迷うことになったんだよ」


 そして、ウォルターの話を引き継いで、グスタフが説明する。


「そうだ。そして、私は、ベルグ卿の副官として、罪に問われることになったのだが、ウォルター殿に助けていただいたのだ」

「へえっ」


 クリスが意外そうな声を上げた。


「だが、クリス、そういうお前たちも、グスタフ殿に助けてもらっているのだぞ」

「え?」

「誰のテレポートのおかげで、瀕死の状態だった君たち四人が助かったと思っているんだ?」

 

 ウォルターは、クリスの後ろにいたパルフィら四人を見て言った。

 それを聞いて、クリスが思い出したかのように手をポンとたたいた。


「あ、そうだよ。あの時は、グスタフさんのテレポートで、エミリアさんをアルティアのギルド宿舎から連れて来てもらったんじゃないか」


 フィンルート遺跡の中で、クリス以外のメンバーは旧文明の機械兵士や鉄の巨人と戦って、瀕死の重傷を負い、もう手の施しようのない状態だった。だが、優秀な回復士であるエミリアを、アルティアのギルド宿舎からグスタフのテレポートで連れてくることができたために、助かったのだ。


「ああ、なるほど……」

「そういえば、そうね……」


 パルフィたちも納得したように同意する。そこに至るまでの過程がどうであれ、自分たちを助けてくれたことが大きかったのか、グレンたちもやや表情を和らげた。


「その節は、お世話になりました」

「誠にかたじけない」


 ミズキとルティが、グスタフに深々と頭を下げる。


「あ、いや、気にするな」


 グスタフは、二人の律儀さに戸惑ったように手を振って、頭を上げるように示す。


「それに、あの時は、私はまだベルグ卿に剣を捧げていて、卿に敵対したお前たちを助けるつもりなど微塵もなかったからな。囚われの身になったがゆえの方便だ」

「は、はあ」

「そ、そうでしたか……」


 せっかく、実はいい人なのではと思い始めたようだった五人だったが、このすべてぶち壊すようなグスタフのセリフに、どうしていいのか悩む様子を見せる。

 それを見て、レイチェルは苦笑いしながらも、助け舟を出した。


「大丈夫よ、今はグスタフさんは心強い味方だから」


 グスタフは、無骨でぶっきらぼうだが、人の心がないわけではない。ただ、忠誠心が高く任務にあまりにも忠実なので、誤解されやすいのだ。それは、レイチェル自身がここに来て暫くの間グスタフと共に行動して分かったことだが、来たばかりのクリスたちにはまだそれが分からないだろう。


「そうなの?」

「まあ、レイチェルがそう言うなら、信じるけどさ」

「それで、特に行く当てもないそうなので、発掘隊に加わってもらったというわけだ。それに、旧文明遺跡には興味があると聞いたからな」

「うむ」


 グスタフが重々しく頷いた。


「というわけで、グスタフ殿は、もう我々の仲間として同行してもらっている。これからはよろしく頼む」

「ああ。これまでのいきさつもあろうが、以後よしなにお願いする」

「は、はい。こちらこそ……」


 グスタフが頭を下げたのを見て、五人は慌てて礼をした。グスタフは自分たちよりもはるかに年長であり、高ランクの幻術士なのだ。


「よし、いいだろう。それで、今回来てもらったのは他でもない。お前たちの力が必要なのだよ。急なことですまないが、私たちを助けると思って、手伝ってくれないか? なに、仕事は簡単だ。遺跡の警護をしてもらうだけだ」

「おいおい、またひでえ目に遭うんじゃないだろうな」


 疑わしそうな目で、グレンが尋ねた。前回のフィンルートで見つかった軍事基地での経験を思い出しているのだろう。あの時も、元々の依頼は遺跡の警護と発掘の手伝いだったのだ。


「今度は大丈夫よ。機械兵も鉄の巨人もいないわ。それに、ここは私の家族のいた場所なのよ」


 レイチェルが安心させるように微笑みかける。


「へえ、そうなんだ」

「なら、いいけどよ……」


 グレンもそれに納得したのか、引き下がった。


「でも、父さん。そんな用事で、こんな事までして僕たちを連れてきたの?」

「ああ。なかなか込み入った話でな。またあとで詳しくは説明するが、調査が済むまで極秘にしておきたいんだ。なので、お前たちしか頼めないんだよ」

「そっか……。まあ、僕たちは、他にミッションを引き受けているわけではないし、いいんだけど、ねえ、みんな?」


 後ろを振り返って、クリスが確認する。


「お、おう、まあな」

「そ、そうね……」

「というより、このようなところまで来た以上、引き受けるしかないのではないか」

「そうですよね」


 残る四人も、なんとなく釈然としない表情だったが、同意した。

 おそらく、クリスの父ウォルターがそこまでして頼んでいることと、レイチェルもいること、それに、ミズキが言ったようにこんなところまで来た以上、仕方がないという気持ちになっているのだろう。


「わかったよ、父さん。そのミッション引き受けるよ」

「おう、そうか、そいつは助かるよ」

「クリス。ありがと! また一緒に仕事ができて嬉しいわ」


  また当分の間、一緒に過ごせるという見込みに、レイチェルが思わず抱きついた。それに、過去に帰るか、それともこの時代に留まるかを決める大きなカギを持つのがこの五人組、特に、クリスだったのだ。


「う、うん、僕もうれしいよ……」


 はにかんで答えるクリス。

 だが、それにパルフィが噛み付いた。


「ちょっと、ちょっと!」


 クリスとレイチェルを引き剥がして、二人の真ん中に入り込む。


「ああもう、ことあるごとにイチャつくんじゃないわよ」

「ふふ、いいじゃない。久しぶりで嬉しいんだから」

「全く……」


 そして、レイチェルが喜びの表情を浮かべているのとは対照的に、やっぱりこうなったと言わんばかりの顔で、パルフィは深いため息を付いたのだった。





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