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37話:俺のたった一つの武器

 スクルドとそんな話をした後、俺は少しだけため息を付きながらこう言った。


「はぁ。まぁでも今回の件で自分の弱さを痛感しちゃったよ……」

「ん? どうしたよ急に?」

「スクルドさんやルファスさんに連絡を入れなかったら、あの状況は打破出来なかったわけじゃん。俺はこんなにもボロボロな姿になっちゃった訳だし。一年間頑張って修行をしてきたつもりだけど、でもやっぱり俺はまだまだ弱いんだなぁ……って思ってさ」

「あぁ、そういう事か。でもそんなの気にする事ねぇだろ。セツナはまだ冒険者になって一年しか経ってねぇんだ。だからまだまだ力が足りねぇのは当たり前さ。まぁこれからも俺はセツナの修行に幾らでも付き合ってやるから、そんな寂しそうな表情なんてしなくて良いぜ」

「うん。ありがとう。スクルドさん。まだまだ弱い俺のために沢山修行に付き合ってくれて……本当にありがとう」

「おう。そりゃあお前の師匠だからな。まぁでもセツナは一つ勘違いしてるようだからそれは訂正しておいてやる。セツナが弱いなんて事は絶対に無いからな。むしろセツナは強い男だぜ?」

「俺が強い? あはは、そんな事無いよ。俺はスライムとかゴブリンに負ける事もあるまだまだひよっ子な冒険者だよ」


 スクルドは俺の事を強い男だと言ってきたので、俺は笑いながらそれは違うと否定していった。


「まぁそりゃあセツナは俺と比べたら“力”はかなり低いかもしれねぇけどさ、でも強さを測るのは何も“力”だけじゃねぇからな。セツナの力は乏しいかもしれないけどよ……そんなセツナには力の代わりに誰にも負けない“優しい心”を持ってるじゃねぇか。その優しい心はお前の持ってる最強の武器なんだぜ?」

「優しい心が最強の武器? いやいや、優しい心なんて別に武器じゃないでしょ? そもそも俺の周りにいる人達は皆優しい人達ばっかりだよ? もちろんスクルドさんだって凄く優しいじゃんか。そんな皆持ってる優しい心が武器になるなんて事は無いんじゃないの?」

「はは、俺が優しいか。そりゃあ嬉しいな。でも俺は別にそこまで優しくねぇからな。時々気まぐれで優しくする時もあるけど、でもいつもは自分本位かつ自由気ままに冒険をしてるから困ってるヤツの頼みなんて全然聞かねぇし、舐めた態度で接してくるヤツは問答無用でボコしたりもしてるからな。あははっ」


 スクルドは豪快に笑いながらそんな事を言ってきた。


「問答無用でボコすって……ま、まぁスクルドさんが豪快な自由人だってのは知ってるから、そういう自由奔放な生き方をしてるのは想像付くけど」

「はは、だろう? まぁでも優しくねぇって意味だと、それは俺だけじゃなくて他のヤツら……例えばルファスやダグラスだってそうだからな。子供のセツナにはまだピンと来ないかもしれないけど、実は俺達大人ってのはそんなに優しくはねぇんだぜ? 大人ってのはほぼ全員が打算的に生きてるのさ。コイツに優しくしたら恩を売れるなとか、助けたら金になるなとか、そう言った打算や見返り目的で優しい行動を取るもんだ。はは、大人ってのは汚いだろ?」

「ううん。そんなの汚いなんて思わないよ。生きていくためにはお金が必要だからね。だから俺だって回復魔法を使った治療依頼でお金を稼いでる訳だしさ」

「そうだな。確かにこの世は金がなきゃ生きていけないからな。でもセツナはたとえ報酬とかの見返りが一切無かったとしても、目の前に困ってるヤツがいたら絶対に助けるだろ?」

「え? そ、そうかな? まぁそれは時と場合によるとは思うけど……」

「はは、そんな事はないぞ。だってセツナと初めて出会った時、お前は田舎町で大怪我を負ったダグラスを見て“わ、わわ、凄く痛そうじゃないですか! ち、血がこんなにもー……!”って大号泣しながらダグラスにすぐ回復魔法を使ってくれただろ。それと俺が毒蛇に噛まれた時もセツナは大慌てで俺に会いに来てくれて解毒魔法を使ってくれた事もあったよな。他にも田舎町に住んでるヤツらに困った時があれば、セツナはいつも誰よりも早く助けに向かってくれただろ?」

「え、えっと、そ、それはまぁ……確かにそんな事もあったかもしれないけど……」


 スクルドの問いかけに対して、俺はちょっとだけ恥ずかしくなって顔を赤くしながらそう答えていった。


 俺が初めてこの世界にやって来た時、ボロボロで血だらけになってたダグラスを見て泣きながら大慌てで回復魔法を使ったんだっけ。その翌日にはスクルドが毒蛇に噛まれたって聞いて大慌てで助けに行った事もあった。何だか懐かしい思い出だ。


「はは、そうだろう? お前は困ってる人がいたら助けてあげたいって思うし、辛い状態になってる人がいたらちゃんとその人に寄り添ってあげる優しいヤツなんだよ。俺達はそんな心優しいセツナの姿をこの一年間で何度も見てきたんだ。そしてそんな心優しいセツナだからこそ……俺やダグラス、それにルファスもそうだと思うが、周りにいる打算で動いてる大人達は皆セツナのためになら幾らでも力を貸してやりたいって思うんだよ」

「お、俺のために……?」

「そうだ。そしてそれこそがお前の最強の武器なんだよ。お前のその純粋に優しい心ってのは、俺達みてぇに年を取って打算で動くようになっちまった汚ぇ大人達の心を動かす物凄い武器なのさ。そしてその武器はニセモノだったら俺達の心は動かす事なんて絶対に出来ない。それはホンモノだからこそ俺達大人の心を動かせるんだ。はは、だからよ、セツナ……」

「え? わわっ……」


―― ポンポンッ


「だからセツナ。お前は自分の事を弱いと思ってるかもしんねぇけどさ……でもお前が何と言おうとも、お前の周りにいるヤツらは皆セツナの事を強い男だって思ってるんだよ。もちろん俺もさ。だから自分の事を弱いなんて思わずに誇っとけ。お前は誰よりも優しい心を持ってる最強の男だってな」

「……スクルドさん……うん、ありがとう……そう言ってくれて……はは、何だかそう言ってくれると嬉しいな」

「はは、そっかそっか。それなら良かったよ」


 そう言いながらスクルドは俺の頭を優しく撫でていってくれた。何故だか不思議とポカポカとした温かい気持ちになった。


「……って、おっと。そろそろお前の姫様がやって来そうなタイミングだな。それじゃあイチャイチャを邪魔しちゃ悪いし、俺はそろそろ帰るとするかな。また見舞いに来るよ。そんじゃあまたなー」

「えっ? あ、うん、わかった。ありがとう、スクルドさん。またね」


―― バタンッ!


 スクルドは俺の部屋から出ていった。何だか色々な話をしていった気がするけど……でも最後にスクルドが言ってた俺の姫様って何の事だ? それにイチャイチャって?


―― コンコンッ……


「……うん?」


 そんな事を思っていると、唐突に俺の部屋ノックする音が聞こえてきた。一体誰だろう?

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