03話:王都の公爵家にやってきた
それから数日後。
―― ワイワイ、ガヤガヤ!
「ここが王都か。何だか凄い賑やかな都市だなー」
地元の田舎町から馬車に揺られて数日が経ち、俺はようやく王都に到着した。馬車から降りると凄い多くの人で賑わっていてビックリとした。まさに大都会と言った感じだ。
「これは王都の街並みも散策してみたい所だけど、でも今は仕事があるから散策はまた違う時にしよう。今はさっさと依頼主の公爵家に向かわなきゃだな」
多くの人で賑わっている王都の街並みが気になりつつも、今は仕事を優先するべき時なので、俺は散策したい気持ちを抑えてさっさと依頼主がいる公爵家の屋敷へと向かう事にした。
それからダグラスに貰った地図を頼りに十分ほど歩いていくと、公爵家の屋敷前に到着する事が出来た。かなり立派な屋敷だった。流石は貴族様の家だな。
そして公爵家の屋敷の門前には守衛らしき人が立っていた。セキュリティもバッチリという事だな。俺は早速その守衛らしき人に声をかけていった。
「あのー、すいません。ちょっと良いですか?」
「うん? どうしたんだい少年? エルフェミナ公爵家に何か用事かな?」
「はい。俺はグランデ領の冒険者ギルドからやって来ました、冒険者のセツナと言います。今日は公爵様からの依頼を受けてやって来ました。ギルドマスターからの紹介状もあるので、確認をお願い出来ますか?」
俺はバックに入れてた紹介状を取り出していき、それを守衛の人に手渡していった。
「冒険者ギルドからの紹介状ありがとう。それじゃあすぐに確認させて貰うね。ふむふむ……あぁ、なるほど。それじゃあ君が例のヒーラーなんだね?」
「はい、そうです。普段はヒーラーとしてグランデ領で冒険者活動しています。セツナ・キサラギと言います。よろしくお願いします」
「丁寧に自己紹介をありがとう。私は守衛のフラン・イルマルクと言う。君の事はギルバート様から既に伺ってるよ。多種多様の回復魔法が扱う事が出来るらしいね。まだまだ少年に見えるのに、君は凄い子だな。よし、それじゃあ早速応接室に案内させて貰うよ。私の後ろに付いてきてくれ」
「はい、わかりました」
俺は守衛のフランの後に付いて屋敷の中に入っていった。そしてすぐに応接室の前に連れていかれた。
―― コンコン……
「失礼します。ギルバート様。お客様をお連れしました。グランデ領よりいらした冒険者のセツナ殿です」
『うむ。案内ありがとう。中に入ってくれて構わないよ』
「はい。それでは失礼します」
―― ガチャッ
応接室の中にいる人に許可を貰ってからフランはドアをゆっくりと開けた。そして俺とフランはすぐさま応接室の中へと入っていった。
応接室の中には身なりの良い渋いイケメンのオジさんがソファに座っていた。でもちょっとだけ頬がこけているし、顔色もちょっとだけ悪い。おそらく寝不足なんだろうな。
そしておそらくこのイケオジこそが……。
「セツナ殿。王都まで遠路はるばる来て頂きありがとうございます。私がエルフェミナ家、現当主のギルバート・エルフェミナと申します」
「あぁ、やっぱりそうなんですね。ご丁寧にありがとうございます。俺はセツナ・キサラギと言います。改めてよろしくお願いします」
という事で予想通りこのイケオジこそが公爵家の現当主であるギルバート・エルフェミナ公爵様との事だ。
そしてギルバートからは物腰柔らかで落ち着いた雰囲気をしっかりと感じた。物凄く地位の高い人なのに、全然偉ぶった表情とか雰囲気を出してこないので、何だかとても好感の持てるイケオジだな。
「旦那様。それでは私は守衛の仕事に戻らさせて頂きます」
「わかった。ここまで案内をしてくれてありがとうフラン。ご苦労様」
「はい。それでは失礼します」
―― ガチャッ……バタンッ
そう言ってフランは応接室から出ていった。応接室には俺とギルバートの二人だけになった。俺はすぐにギルバートに本題を尋ねてみた。
「それで、ギルバート様の娘さんが病気に罹ってしまっていると聞きました。その娘さんの診察及び治療をお願いしたいという依頼内容でよろしかったですか?」
「はい、そうです。娘はとても重い病気に罹っていますので、もしもセツナ殿でも治療不可能という事でしたら治療依頼は断って頂いても構いません。ですが診察依頼だけは何としてもお願いしたいのですが……」
「ふむふむ。重い病気ですか。具体的には娘さんはどんな病状になっているのですか? どれくらい前から病気に罹ったとかわかりますか?」
「えっと、今から三年ほど前に娘のアリシアには身体の不調が出始めました。最初は体調不良と咳だけでした。ですがそれから徐々に身体が病気に蝕まれていってしまい、今ではベッドから出る事もままならない身体になっています。毎日酷く咳き込んでいますし、一人で歩いたりする事も出来ず。食事も流動食しか食べられないようになっている程なんです……」
「そうなんですか。ギルバート様の話を聞く限りですと……かなり重い病気に罹ってしまわれたのですね。病名などは判明してないんですか?」
「えぇ、病名は判明しておりません。今まで沢山のヒーラーに診察や回復魔法を施して貰って来たのですが、全く治らないどころか悪化の一途を辿っているので、もしかしたら新種の病気なのではないかと言われています。ですから娘が病気に罹って三年経った今でも娘の治療はままならない状態なのです。さらに昨今は娘の診療を受けてくれるヒーラーもいなくなってしまい……それでどうしたら良いかと途方に暮れていた所なのです……」
「……えっ? 娘さんの診療を受けてくれるヒーラーがいないですって? それはどうしてですか?」
「……原因不明の病気だからです。それでアリシアは“伝染病”の類かもしれないと恐怖心を煽るような事を周りに言いふらしたヒーラーがいまして……でもアリシアとずっと一緒に過ごしている私や使用人たちは誰も同じ病気には罹っていません。ですからアリシアの病気は伝染病ではないのは我々はわかっているのです。それでも一度そんな風評被害が出てしまうと、中々ヒーラーの皆様はアリシアの事を診察すると言ってくれなくなったんです。もしも回復魔法が一切効かない伝染病に自分も罹ってしまったら……なんて思ったら誰もが怖くなって引き受けてくれないのは当然ですよね……」
「ギルバート様……」
ギルバートは凄く苦しそうな表情でそんな言葉を呟いた。
大事な娘が重い病気になっているのにも関わらず、お医者さんが誰も診察をしに来てくれないなんて、そんなの俺が両親だったとしたらとても悔しいし辛いと思うに決まってる。
だから俺は毎日辛い思いをしている父親のギルバートを安心させるために、そして毎日病気で苦しい思いをしている娘のアリシアを救うためにも、俺はギルバートの目をしっかりと見つめながらこう伝えていった。
「……はい、わかりました。そういう事でしたら俺がギルバート公爵様の娘さん……アリシア様の診察を引き受けます。そして必ずアリシア様の病気を俺が治します。ですから今すぐアリシア様に会わせて貰えませんか?」
「え……ほ、本当ですかっ! 依頼を受けてくださるんですか! あ、ありがとうございます……! それではこちらです! 私の後に付いてきてください!」
「はい、わかりました」
という事で俺はアリシアの診察及び治療依頼の受諾を伝えていくと、ギルバートは深々と頭を下げながら俺に向かって感謝の気持ちを伝えてきてくれた。
(誰も診察してくれないなんて可哀想すぎるよ。それなら俺がちゃんと診察してあげよう。そして病気に苦しんでる娘さんを必ず助けてあげるんだ)
俺はそんな決意をしていきながら、それからすぐにギルバートの案内によって俺はアリシアの自室へと向かった。




