第一章・第一幕:日常
第一章・第一幕:日常
「おい!しっかり働け!!」
「はいぃ・・・、すみません・・・」
僕は急いで落ちた金属板を拾い、目的の場所へ向かう。
「はぁ・・・はぁ・・・、あっつ・・・」
湿度が異常に高いせいか、すごく暑い。
「あ、ナディエ!」
「ん・・・?」
遠くで誰かが手を振っている。
手を振っていると思ったら、こっちに走ってきた。
「大丈夫?手伝おうか?」
「いい、大丈夫だよレント。ありがとう」
「無理しないでね?また倒れられると困るから」
「そうならないように心がけるよ」
「じゃあ、仕事が終わったらいつものところに来てね」
そういうと、彼は去ってしまった。
「なにサボってんだ!さっさと働け!」
「ふぅ・・・」
仕事終わり、ボロい缶に溜めた水を飲みながら彼を待っていた。
「ナディエ、まさか本当に来てくれるなんて」
「僕が約束を守らない人だと思ってもらっちゃ困るな」
「いやいやそんなこと思ってないよ。ただ、疲れてるから寝ちゃってこないかな〜と思っただけだよ」
「そう・・・」
僕はまた水をひと口飲む。どことなく血の味がする。
「あ、ナディエ。はいこれ」
彼はそう言って一切れのパンを差し出した。
「ん?レントが食べなよ」
「いやいや、ナディエは女の子なんだから食べなきゃダメでしょ?」
「いや性別関係無いでしょ」
「いいから、俺は俺の分あるし」
「そう?じゃあ遠慮なく。さっきからずっとお腹ぺこぺこでさ」
「だと思ったよ」
僕はパンを一口かじる。
パサパサしててあまり美味しいとは言えないが、ここではだいぶマシな食べ物だ。
僕はあっという間にパンを全て平らげた。
「・・・もっとパン、食べたいね」
「無理・・・とまではいかないけどここじゃ難しいんじゃ無いかな」
オブスクラシティ。この街の名前。
人はココを『陽の差さない牢獄』と呼ぶらしい。
ここと地上は『天井』で完全に隔離されている。
陽は差さないくせに雨は降るから蒸し暑くてしょうがない。
おまけに・・・
「うわっ!」
ボン!という音が鳴り響く。
白い霧が立ち込め、熱風が巻き起こる。
「はぁ・・・またパイプが吹っ飛んだ」
おまけに、そこらじゅうに張り巡らされたパイプがまれに爆発するときた。
「正直、お先真っ暗だよ」
「俺たちの未来を考えるだけ無駄だよ」
「ため息しか出ないね」
「あの天井の向こうはどうなってるんだろうな」
「あちっ」
僕は今、そこらじゅうにあるガス灯を一つ一つきれいにしている。
ここ唯一の灯り。これがなきゃココでは生活できない。
そんなことを思うと、この仕事のやる気が出てきた気がする。
「あちっ」
・・・仕事が終わる頃には火傷がいくつもできている気がするけどね。
「・・・ナディエ?」
柔らかい声色。この声は・・・。
「アステル姉さん?」
振り返ると、豊満な体を持ったお姉さんがいた。
ただ、髪はボサボサで、瞳は白く濁っていた。
「あっ、よかったわ。まだ生きてたのね」
「そりゃまだ死ねませんよ」
「ふふっ、あなたらしいわね。あなたくらいよ、ここで生きてる人の中でそんな希望に満ちた目を持っているのは」
「そうですか?」
「そうよ」
姉さんは僕の伸び切った前髪を上げる。
「あなたのその目、本当に綺麗ね。夜空のように深い青色・・・」
姉さんは昔、僕やレントと違って地上にいたらしい。
ナディエという名前も姉さんからもらったものだ。
「そういえば姉さん、なんで姉さんはそんなに胸がおお・・・健康的な体を持ってるんですか?ココじゃそんなに食べられないですよね?」
「ふふっ、乙女の秘密よ。じゃあ引き続き頑張ってね」
そう言って姉さんは去っていった。
「僕もあのくらい大きく・・・だめだめ、今は仕事に集中」
こんにちは。恋葉春です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
これからも投稿していくので、お付き合いいただけたら嬉しいです。




