98 惚気る
どうぞよろしくお願いします。
コーラスがカイエンとジョナサンのところに来た。
「呼んでもらえたのか?」
「いいや、すっかり忘れてたみたいで……」
「ん? 何の話だ?」
ジョナサンが首を傾げる。
コーラスがカイエンをちらりと見て「いいや、ミレーヌが、近くに行けばその、助けてとかカイエンとか言うかなと……」と誤魔化すように言い、続けた。
「グレイウルフ、収納してくれるか?
ここには3頭いる。
騎士達が出てきたあたりにまだ転がっているそうだ。回収に行く」
ミレーヌとカイエンで2頭。
騎士と職員が合流するまでに4頭。
ジョナサン達と合流してから3頭。
合計9頭、討伐したことになる。ちょうど群れの半分に少し足りない。
ギルドまで戻ると、ジョルジュ王子達が待っていた。
ギルド長が生温かい感じの笑顔を張り付けているのが……。
逆に恐ろしい……。
「ミレーヌ様、御無事で良かった……」
カレンが泣きそうな顔で抱きついてきた。
逃げてくるまでのことをジョルジュ王子達が報告したのだろう。
「心配かけてごめんね、カレン。
カイエンが助けに来てくれたの。
本当にカッコ良かったんだからー」
「もー、何、のんきに惚気てるんですかー!
えっ?
ミレーヌ様が……、惚気てる……?
えっ!
あの、ミレーヌ様が!?
もう、カイエン様とは本格的にそういう感じなんですか!?」
「えっ?」
カレンの追撃にミレーヌの顔がボンッと赤くなる。
ミレーヌの脳裏にカイエンとのファーストキスが……。
「もう、カレンったら! 恥ずかしい!」
ミレーヌが顔を両手で覆ってしまい、そんなミレーヌを見てカレンとジョナサンがギギギギと擬音が聞こえそうな感じでカイエンを見た。
「ジョナサンはああ見えて、けっこう細かいことうるさいから、気をつけろよ!
ブレスレットのことも、転移できるなんて言うと『普段は外せ』と言い出しそうだからな」
コーラスがカイエンにこそっと言った。
カイエンは微笑んで「ありがとう、コーラス。実はまだミレーヌに教えてないんだ」と囁き返した。
「えっ? 知らないの!?
そりゃ、ちょっと面白いな……」
コーラスはニヤリと笑って、カイエンから離れてジョナサンの方へ向かいながら呟いた。
ジョルジュ王子にウィリアムが近づき、礼をした。
「ウィル、ご苦労だった」
「ジョルジュ王子、なぜマリア嬢を連れて逃げなかったのですか?」
「いや、連れて逃げても良かったんだが、そのラルフが、女や子供が一緒だと足元を見られて襲われる確率が上がるというので……」
「マリア嬢は必死に魔物の襲撃に耐えて、治療を頑張ってくれたんですよ!
終わった時は安堵で泣き出してしまい……。怖かったはずだ。
途中で、味方だと、守ってくれると思っていた人達が離脱するなんて、恐怖だったと思います」
「ウィル、話はわかるが、我々はジョルジュ王子の護衛だ。
王子の安全を一番に考えなくてはならない。
まだ、どこかに群れが隠れていたら?
あの時なら、ミレーヌ嬢とカイエンが襲われているようだから、これ以上のグレイウルフが合流することはないと予想できても、それは予想。
逃げるのにマイナスの要因を抱え込むことはない」
王子の護衛騎士のラルフが冷静に言い返してくる。
「マイナスって……。
ジョルジュ王子もそう思われるのですか?」
「もう、ウィリアム様、やめて下さい。
私は大丈夫です。
初めての魔物討伐が、お兄様やシーラ、それにウィリアム様と一緒で良かったです。
お姉様も御無事でしたし!」
マリアがウィリアムの肩にそっと触れながら言った。
「でもっ!」
ウィリアムの心に、ジョルジュ王子がミレーヌに対して執着のような気持ちがあるのを現した時に、マリアが傷ついた表情を浮かべていたのが……、印象に残っていた。
マリアの淡い憧れや、初恋のような気持だったのかもしれない。心が痛んだ。
「いいんです。私、ちょっと、すっきりしましたから!」
マリアはにっこりウィリアムに微笑んだ。
読んで下さり、ありがとうございます。
カレンはミレーヌより年上です。ミレーヌがギルドに登録した3年前、事務職員として働き始めでした。お互い新人同士でそこから親しくしています。
ミレーヌ様、かわいい! 大好き! 成長うれしい!
お姉さん&推しを愛でる的な目線でミレーヌを見ているところがあります。
ミレーヌからすると、親しみやすさと無邪気さを感じるかわいらしい年上の友人です。




