95 襲撃
どうぞよろしくお願いします。
カイエンは森の中に入るなり、藪の影に姿を隠して感知魔法を発動させた。
ミレーヌはここからもう少し森の中へ入ったところで、何か行ったり来たりをくり返している。
騎士と職員のグループはすでに道のジョナサンのグループを追い抜いて進んでいるらしいと気づいたようで道の方へ出ようとしている。引き返してくるのだろう。
「ミレーヌ! 手遅れになる前に、俺を呼んでくれ、俺に助けを求めてくれ!」
カイエンは焦って願望を呟きながら、森の中を進んで行く。
グレイウルフの吠え声と唸り声が聞こえた。その方向へ走る。
近くにいた1頭がカイエンに気がついて向かって来ようとした。風魔法を放つ。
グレイウルフが竜巻のような風魔法に巻き込まれ悲鳴のような鳴き声をあげて、傷だらけになる。
そこまで行き、止めを刺してから、目を上げる。
その奥の藪の向こうに、大きな木を背に3頭と対峙していたミレーヌの姿が見えた。
「カイエン!」
「ミレーヌ!!」
ミレーヌの姿を見たカイエンはほっとしたが、すぐに3頭のグレイウルフを睨みつけた。
先ほど倒した見張りを含めて4頭の群れか!?
でもミレーヌが、ここまで手こずるなんて……。
その時、ミレーヌのズボンが破れ、血が流れているのに気がつく。
足を!! 怪我したのか!
カイエンがミレーヌから離れている1頭にストーンバレットを打ち込んだ。
威力は凄まじく、貫通し、倒れるグレイウルフ。
残りの2頭は怯み、走り去った。
ミレーヌはその場に木を背に付けながらずるずると座りこむ。
「ミレーヌ! 怪我を!?」
カイエンは慌ててミレーヌに駆け寄る。
ミレーヌは照れくさそうな、でも、少し涙が滲んだ顔で「ごめん、防御魔法が切れちゃって……」と言ってから、ぼろぼろ泣き出した。
「大丈夫! もう大丈夫だから!」
カイエンが慌てて抱きしめるようにして背中をさする。
何度か泣きながら深呼吸するミレーヌ。
落ち着くと「ごめんなさい……」と謝った。
「うん、ひとりになっちゃだめな時と場所で、ミレーヌはひとりになった。
……なんで、俺を呼んでくれなかった?
教えただろ? 石に魔力を流して俺を呼ぶようにって」
ミレーヌは言われて気づいたように左手のブレスレットを見た。
「あ……、忘れてた……。
でも、カイエン、私のいる場所、わかったんだよね?」
カイエンが頷く。
「このブレスレットの石には俺の魔力が込められてるから、感知できるっちゃ、できる。
けど、これは本当は……」
「本当は?」
カイエンが黙る。
「カイエン?」
「……とりあえず、先に怪我を治そう。
戦いながらだから治療ができなかったんだろ」
「うん、そうだけど……。
石に魔力を流してカイエンを呼ぶと、なんか起きるの?」
「……本当に困った時は手遅れになる前にそうして欲しい。
ほら、治療を。
2頭しか仕留めていない。
残り18頭近くがまだいるわけだ」
「そうか、マリア達!!」
ミレーヌは左の膝の上、太腿手前のあたりの破けて血塗れな生地を大きく破り取った。
痛々しい噛み傷が現れた。
収納魔法から薬の籠を取り出し、傷の消毒薬の栓を開けると傷全体にぶっかけた。
「クッ!!」
痛いのだろう。顔をしかめている。
しかし、これだけの噛み傷だと消毒してから治療した方が予後もいいはずだ。
ミレーヌは手慣れた様子で自分の足に治療魔法を掛け、傷を治した。
白い大きな布を出して、素肌が出ているところに巻いて結ぶ。
「ありがとう、傷の手当てができた。
急いでマリア達のところに合流しないと!」
周囲を警戒してくれていたカイエンにミレーヌがそう声を掛ける。
カイエンは倒したグレイウルフ2頭を収納した。
そして、「ウィルと連絡を取る」と目を閉じた。
読んで下さり、ありがとうございます。
小さな傷ならいいんですけど(ネコに引っかかれたとか)、さすがにグレイウルフに噛みつかれた傷は消毒してから治した方がいいです。




