86 大丈夫だと思います
どうぞよろしくお願いします。
「ミレーヌ!?」
カイエンが少し慌てて名を呼んだ。
「う……ん。
私も聞いて欲しいことがある。
さっきジョルジュ王子に抱きつかれて……。
あの時は反則だってちょっと怒ってたけど……。
その後、昔のことを謝られて、友人になりたいと言われて。
なんか、もやもやして、すぐ返事ができなくて。
考えさせて欲しいって……、言ったんだ」
「そんなこと……。抱きついたのは見てたけど。うん、あれは試合なら反則だよな。
ミレーヌはあの時点で勝ってた」
「だよね。
びっくりして剣で首を傷つけたらって、慌てて外しちゃったよ……。
それになあ……、マリアがジョルジュ王子のこと、けっこう気に入ってるみたいなんだよね」
「マリアが?」
「うん、ジョルジュ王子、ここに来てから、常識的だもの……」
頬をくっつけ合っているから、お互いの表情は見えない。
「……手合わせで相手に急所を取られて、抱きついて外させるのは常識じゃないと思うけど」
カイエンはぼそっと言い返す。
……しかもその相手は女性だ、と続けて言おうか迷った。
ミレーヌが笑う。心地良い振動が伝わってくる。
「そうだね。そう、考えたら、そうだ。
うーん、でも、謝ってくれたし、友人にはなれるのかな……」
カイエンがミレーヌの背中と頭に同時に手を回し、軽く抱きしめるみたいにする。
ミレーヌが身体の力を抜いた。
「んっ、気持ちいい……、カイエン、温かい……」
ミレーヌがかわいすぎるっ!!
その時、ジェーンがドアを開ける音がして、ジョナサンが入ってきた。
カイエンは慌てるが、ミレーヌは……、あれっ?
「ミレーヌ?」
カイエンが小さな声を掛けるが、ミレーヌはカイエンに抱きついたまま寝ていた。
ジョナサンが苦笑する。
「久しぶりにあれだけの手合わせをして、思いのほか疲れたのだろう。
どれ、部屋に運んでやろう」
「俺が運びます」
ジョナサンは少し心配そうな表情をしたが、ゆっくりと頷いた。
「ああ、では、頼む」
カイエンがミレーヌを大切そうにお姫様抱っこして、ゆっくりと歩き出す。
ミレーヌと同じくらいの体格だと心配していたが、思っていたより力はあるようだ。
「ふふっ、ミレーヌは幸せ者だな。安心したよ」
ジョナサンが言って、カイエンは照れて赤くなった。
ミレーヌは自分のベッドで目が覚めて……。
服を着替えてないのにびっくりしている。
「あれ? 昨日……、図書室で寝ちゃった!?」
ジェーンが部屋に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう、私、図書室で寝ちゃった?」
「はい、カイエン様に抱きついたと思ったら、寝てましたね。
ジョナサン様も来て、カイエン様が抱いてミレーヌ様を運ばれたんですよ」
「えっ?
ああ、迷惑かけちゃったな……」
「うれしそうでしたよ」
「えっ?」
「カイエン様、すっごくうれしそうでしたから、大丈夫です!」
「……そうなんだ」
「ミレーヌ様ってけっこう大胆なんですね。
ミレーヌ様から抱きつかれて頬ずりされた時はびっくりしましたよ」
「……私?
えっ?
眠かったから?
えっ?
何か、変なこと言ってなかった!?」
「……大丈夫だと思います」
「えっ? 思うって、なに?」
「……はい、朝のお仕度しますよ!」
読んで下さり、ありがとうございます。
かわいいふたり。




