85 黙ってられない
どうぞよろしくお願いします。
ジョルジュとウィリアムが部屋でそんな話をしていた頃、ミレーヌとカイエンは図書室にいた。
夕食後の時間。
みんな気を遣って、メイドのジェーン以外は席を外している。
「空間を意識して。空間に仮想の切れ目をイメージして。その切れ目の向こうにはさらに別の空間があると意識して」
カイエンの言葉にミレーヌは空中を見ながら右手を、指先を何かに差ししれるような動きをする。
ミレーヌの指先が、消えていき、ミレーヌは真剣な表情でさらに差し入れていく。
「うん、できてる!
それがミレーヌの収納魔法の空間だよ。
まだ何も入ってないから、手応えないだろうけど」
「これでいいの?」
「ああ、この空間へのアクセスはどこからでもできる。
なんて言うかな……、その空間はミレーヌが意識して実現させた魔法の空間。
ミレーヌだけが出現させられる空間ってことだよ」
「そっか!
だから、入り口はどこでもいいし、どこからでも、私がイメージすれば出し入れできる。
そっか、私だけの空間か!」
ミレーヌが興奮しながら、あちこちの空間に手を突っ込んでは出してをくり返す。
「わあ、すごい!
使っていると育つんだっけ? シーラがそんなことを前に言ってて」
「ああ、毎日、何かしら出し入れするといいよ。
自分が取り出したい物をイメージすると、すぐ取り出せるようになるし……。
それで……、ミレーヌ、今日のジョルジュ王子との手合わせだけど……」
「うん?
勝っちゃったけど。ジョルジュ王子は楽しかったってさ」
「ああ、その、俺は見ていて……、嫉妬してしまった」
「しっと? え、やきもちを焼くことの嫉妬?」
「ああ……」
「ジョルジュ王子に?」
「情けないけど、ミレーヌは全身全霊でジョルジュ王子と向き合っていて、彼のことしか見ていなかったろ」
「いや、試合とか手合わせなら、普通そうじゃ?」
「うん、それが普通だよな、そうなのに……。
情けないんだけど、ミレーヌを、その、取られたみたいな……。
心の狭い、情けない男ですまない……」
ミレーヌは笑った。
カイエンの頭にふわっと左手を伸ばす。
「ちょっとうれしいかも。
でも、黙っていることもできたのに、なんで私に伝えようと思ったの?」
「……なんでだろな。
かっこ悪い、情けないことだと思いながら、ミレーヌにはちゃんと知ってて欲しいと思って……」
「うん、ひとりで悩んでいるよりは言ってくれた方がうれしいな。
うーん、打ち合いの時は相手のこと、確かに見てるけども、そんなんじゃないし。
それは、もっと私とカイエンが一緒の時間や思いを積み上げていけば解決しそうな気がするよ。
様子を見ても大丈夫そう?」
「ああ、きちんと聞いてくれてありがとう。気が楽になった。
でも、なんで頭を撫でる?」
「えー、頭っていうか、カイエンの髪に触りたいなあって思って……。
ふふ、思ったより柔らかい!」
「俺も触っていい?」
こくりと頷くミレーヌ。
カイエンが手を伸ばし、ミレーヌの頭から後ろに結んだ髪へと手を滑らせていく。
「前に女の子にリボンあげて、髪を下ろしてた時、触ったよね。
あの時は、ドキッとした」
「今は?」
「うーん、なんか幸せな感じ」
ミレーヌはもう片方の手もカイエンの頭に伸ばし、撫でてから、両手を肩に下ろすと、首の後ろに回すようにぎゅっと抱きついた。
頬と頬が触れ合う。
読んで下さり、ありがとうございます。
あら、ミレーヌ、積極的!?
ジェーンはとりあえず、図書室のドアのあたりにいるんですけど!?




