80 心配すること
どうぞよろしくお願いします。
その時、ドアがノックされ、メイドのジェーンがドアを開けるとカイエンとコーラスが立っていた。
「お帰りなさい! どうだった視察は?」とミレーヌが明るく声を掛ける。
コーラスが入室しながら言った。
「ああ、昔の魔王城のあった場所を見てきたよ。
遺跡のようになってたよ」
レーニアから1日かかる隣街のさらに郊外だったはず。
「ジョルジュ王子、そんなところに興味があるんだ!」
ミレーヌの言葉にカイエンが答えた。
「王城の図書庫で、過去の魔王との戦いのことを記した資料が見つかったとか。
魔王が生まれるというか、憑りつかれるというか……」
「憑りつかれる?」
「ああ、魔王とは……、心が弱る、つまり病んだ状態になり、心身ともに弱った魔法使いに邪悪なもの……、うーん、身体のない魔物みたいなものを想像して欲しいんだけど、それが憑りつく。
そして魔王となる……」
「え……、じゃあ、ひい爺様達が戦った魔王も、憑りつかれる前は普通の魔法使いだったってこと?」
「ああ、力の強い魔法使いが憑りつかれるほど厄介だよな」
ミレーヌは一瞬、顔をしかめた。
力の強い……、心の中でカイエンを当てはめてしまったから。
「俺は魔王にはならないよ。
だから、王子の側近にはならないようにしたし」
「王子と側近と魔王が、関係あるのか?」
コーラスが言って、カイエンははっとした。
「あ、まあ。
側近になると気苦労や心労が多くて心を病みそうだろ」
「あー、バルド達も大変そうだったか?
じゃあ、ウィリアムのこと心配だね。
時々、話を聞いてあげたら?」
ミレーヌがカイエンに言う。
「そうだね。そうするよ」
ミレーヌに笑顔で答えるカイエン。
コーラスが思い出したように手を叩いた。
「そうだよ、話が脱線した。
これを伝えに来たんだ!
ミレーヌ、ジョルジュ王子が手合わせしたいって」
「え、帰ってきたばかりで疲れているんじゃないの?」
「いや、だいぶのんびりしたスケジュールだったし。
剣の稽古をしたいそうだよ」
ミレーヌが動きやすい服に着替え、愛用の剣を持って、前に昼食会が開かれた中庭へ向かう。先にシーラやマリアは移動していて、そこでカイエンによる魔法教室が開かれていた。
「あー、いいな!
私も教わりたい!!」
「ミレーヌには後で教えてあげるよ。
夕食後、話をしよう」
「うん!」
「後でか……」
コーラスが思わせぶりにくり返すから、ジョナサンがコーラスの頭をはたいた。
「変な意味を持たせるな!」
「いや、別にそういう意味じゃ……」
「どういう意味?」
ミレーヌが聞き返して、ジョナサンとコーラスは顔を見合わせ笑い出す。
「……心配することなさそうだな!」
「まったくです!」
「む?」
ミレーヌは顔をしかめて、首を傾げている。
ケリーが食堂のテラスから言った。
「手合わせするんですってね!
ここは壊されたら困るから、騎士の練習場でやりなさい!!」
読んで下さり、ありがとうございます。
ああ、やっと、ひい爺さん達の話に繋がりそうなワードがぼちぼち出てくるようになりました。




