78 再教育
どうぞよろしくお願いします。
セシルが怒ったように言う。
「では、今の私にあるのはエイルズワース公爵家という名前だけ?」
「このままではその名も爵位もなくなるな」
エドがぼそっと言うと、公爵が慌てる。
「そんなことは!
エイルズワース公爵家は由緒正しい王国創設時代から王家を支え、王女が降嫁したことも王妃を輩出したこともある……」
「しかし、領地が家が維持できぬのなら仕方があるまい。
エイルズワース公爵、シャルルに代を譲れ。
シャルルなら、まだ立て直せるかもしれない」
「……シャルルになら金を貸すと?」
「いや、アドバイスや、相談に乗り一緒に良い方法を考えるということだ。
シャルルならそれができる。
エイルズワース公爵……、あなたがしなければいけなかったのは、私やジョルジュの側近や婚約者にあなたの息子と娘をしようとすることではなく、領地の民の救済だ。
土地の復興。そのために王都の財産を整理して金を作るくらいの気概がなくては……。
それがあなたにはない」
「……そんなことを言って、私達から残っている屋敷や領地を取り上げるつもりだな!!」
エドはため息をついた。
「これだけ真剣に説明してもだめか……。
もう面倒くさいな。
ジョルジュはどうだ?
エイルズワース公爵家、必要か?」
ジョルジュは公爵、セシル、シャルル……、そしてミレーヌを見ると頷いた。
「私は……、今の話を聞く限り、エイルズワース家はもう公爵としての品格をも維持できていないと思います」
ミレーヌが意外そうな表情でジョルジュを見返す。
ジョルジュは微笑んだ。
「ネコの命を救ったレイオス辺境伯爵家には、称賛を贈りましょう」
「ああ、珍しく弟と意見が合ったな」
エドが笑い、ジョルジュが苦笑する。
「常識的に考えて、そうでしょう」
エイルズワース公爵はその後もごねたが、結局シャルルに公爵位を譲り、自分は隠居することとなった。
そうしなければ、すべてを失うのだから。
ただ、このままシャルルのそばに置いておくといろいろ口出しし、とんでもないことをしでかしそうだということで、エドとマリオン侯爵が王城の住み込みの仕事を世話というか、逃げ出さないように預かり見張ることを決めた。
シャルルは王都の公爵家の屋敷に戻り、家財を確認し、領地を立て直す金を作る。
セシルはマリオン侯爵家の預かりとなった。
マリオン侯爵には妹がいて、貴族令嬢の家庭教師を務めるほどマナーに詳しく、そして教養が豊かなのだそう。
その妹と侯爵家の使用人でセシルの再教育をとなった。
……公爵家では数年前、つまりセシルが令嬢同士の交友を深めて社交界にデビューするための知識やマナーの実践をしなくてはならないあたりから余裕がなくなり、外へ出なくなり、家の古くからの使用人達に偏った教育をされていたようだとわかったのだ。
エイルズワース元公爵と新公爵。公爵の妹令嬢となったセシル。そして、エドとマリオン侯爵、バルドとカイトとマリオン侯爵家の従者は王都に帰ることになった。
「レーニア……、全然遊びに行けなかったな……」とエドがぼやき、ミレーヌが笑う。
「夜市にでも行ってみます?
今は収穫の時期で、夜市も賑やかですよ。
それにエド様ならいつでも大歓迎!
またいらして下さい! と言っても、私はいないことがあるか!?」
マリアが姉の言葉の後に言った。
「その時は、私がレーニアをご案内します!」
読んで下さり、ありがとうございます。
マリオン侯爵がシャルルのことをすごく親身になってくれてますね。




