7 旅立ち
どうぞよろしくお願いします。
カイエンとミレーヌの顔合わせから1カ月後。
ミレーヌは旅立ちの準備をようやく終えることができた。
お祝いとして両親がミレーヌに似合うアイボリーのシャツに若草色の上着とズボンをプレゼントしてくれた。ズボンは細身で上着の裾を長めにしてベルトで絞れ、フードの周りや袖口に刺繍が施されていたりと女の子らしさもある動きやすい服となっていた。
剣はひい爺様から貰った剣だし、お守りとして身に付けているのはひい婆様の形見のペンダントだ。
兄のジョナサンが薬の小瓶が入ったバスケットをくれる。
「いつでも帰ってきていいんだからな。
無理するなよ。帰ってきたら、もう外に出さないなんてことはしないから。
本当に疲れたり、休みたい時は帰っておいで」
妹のマリアは緑のリボンを束で、涙ながらに手渡してくる。
「身体には気をつけてね。
私、お姉様のこと大好き!」
「なんで……、こんなにたくさん!?」
「お姉様のことだから、失くしたら見つけるまで探すってコーラスやシーラに迷惑かけそうでしょ。
失くしてもいいように、もう、たくさん渡しとく!」
「ふふ、兄様もマリアもありがとう」
カイエンがバスケットとリボンを預かってくれ、ミレーヌはふたりと抱き合った。
ゴードンとケリーも寂しそうに微笑んだ。
「十分に力をつけたね。そしてこれから、もっと強くなるんだろうな。
……油断せず、仲間と力を合わせて事に当たるのを忘れずにな」
「ミレーヌ、愛してるわ。
どんな時もあなたは私の大切で自慢の娘よ。
カイエン様と仲良くね!」
ミレーヌは「行ってきます!」とふたりに抱きついて、大きく息をついている。
そんなミレーヌをカイエンはじっと見つめていた。
カイエンは魔法剣士という感じの服を着ている。ミレーヌより濃い緑の服で茶色のマントを身に付けている。ぱっと見、地味で素朴な感じである。
それはミレーヌも同じ。
ゴードンとケリーはカイエンに「ミレーヌを頼む」と頭を下げた。
「はい、一緒に力を合わせて頑張ります。
ミレーヌ、左手を……」
ミレーヌが首を傾げながら左手をカイエンに差し出した。
カイエンが胸ポケットから金属でできた大きめの輪を取り出し、ミレーヌの左手首に通すと何やら唱える。
ブレスレットは縮み、ちょうどいい大きさになった。
「どう、違和感はない?」
ミレーヌは左手首を振ったり伸ばしたりして見てから「大丈夫。あんまり付けてる感じがしないくらい」と答えた。
「それは良かった」
カイエンが微笑みながらミレーヌの左手を取って説明する。
「ここに私の魔力が注がれている」
小さな青い石をトンと指で叩く。
「わあ、カイエンの瞳みたいなきれいな青」
ミレーヌの言葉にマリアが「ロマンチックね!」と笑う。
カイエンが「んんっ」と咳払いしてから言った。
「何かあったら、この石に触れて私を呼んでくれ。
君の居場所が感知できるから」
「あ……、迷子にならないように?
ありがとう」
「……うーん? 迷子とは、ちょっと違うかな?」
そこへコーラスとシーラも到着。
コーラスは騎士らしく白く輝く防具を身に付けている。
シーラは細身の白いズボンの上にロングワンピースを上着のように着て、さらにヒーラーという感じの白いローブを身に付けていた。
「荷物はカイエンか?」
コーラスがベルトに固定した小さなカバンひとつだけのミレーヌを見て言った。
「うん、とりあえず収納してもらってる」
「後で、服やなんかの身の回りの物はシーラに頼め」
「わかった。ならシーラからコーラスの服とかはカイエンに渡すようにしよう」
「なんで?」
「だって、宿では男と女で部屋分けるでしょうが!!」
読んで下さり、ありがとうございます。
今のところ収納魔法ができるのがシーラとカイエンです。
今日は、第7話も投稿しちゃいました。
明日、第8話+人物紹介を投稿して、第1章終了予定です。
ブックマーク、ありがとうございます。
これからもお付き合いどうぞよろしくお願いします!




