65 将来の心配
どうぞよろしくお願いします。
馬車の中で、カイエン、ミレーヌ、そしてミレーヌのメイドのジェーンは楽しそうに話をしている。
「おいしいケーキなら、やっぱりマゼルかしらね!」
「はい! そうでしょう。ではそのように伝えます」
ジェーンが馬車の御者に内側の小さな窓を開けて伝えている。
「マゼルってお店の名前?」
カイエンの言葉に頷くミレーヌ。
「ええ、お菓子屋さんで、店内でお茶とケーキも楽しめるの。
レーニアっ子には、有名なお店」
店の近くの馬車を預けられる停車場に入る。
ミレーヌは「マーティーも行きましょう!」と御者に声を掛けた。
「でも……」
御者のマーティーは躊躇している。
「車止め、お願い!」
ミレーヌが停車場の係を呼んで銅貨を1枚差し出した。
「馬と馬車をお願いします。1時間……、2時間はかからないで戻ります」
係は馬車の後ろの車輪に三角の木材のような車止めを差し込んだ。
「あれは?」
カイエンが聞くとマーティーが答えた。
「車止めです。
御者も馬車を離れる時はあれをつけてもらえば、馬車は簡単に動かせないし、盗もうとする者も手間がかかるから……、係がすぐ気がつくというわけです。
銅貨1枚、必要ですけど」
「マーティーもジェーンと一緒にデートしよ」
ミレーヌの言葉にジェーンとマーティーが赤くなる。
「ふふふ、マーティー! ジェーンをエスコートしてマゼルまで先に歩いて!
私達もついていくから!」
ミレーヌがカイエンの左腕につかまる。
マーティーとジェーンは最初こそ戸惑っていたが、歩き出すとすぐに歩調も合い、スムーズに通りを進んで行く。
そのまま、大きな菓子店のマゼルという看板の下を通り、隣ではあるがそれぞれ別のテーブルに席を取った。
注文を取りに来てくれた店員にジェーンが今日のお薦めを聞く。
「キイチゴのタルト、それに木の実を甘く似てクリームを使ったケーキも人気ですよ」
紅茶とケーキを楽しんでから、外へ出る。
レーニアの城下は市で賑わっていた。
「秋の収穫物が並ぶ頃だもの。
ここで買いこんで年末年始を迎えるための保存食など各家庭で作るのがここの習慣なの」
ミレーヌがカイエンに説明する。
「加工された物を買うのではなくて?」
「そういうお店もあるけれど、大部分は家で作るんじゃないかな。
その方が安上がりだしね」
カイエンが笑う。
「ん?」
ミレーヌが首を傾げた。
「辺境伯爵令嬢の口から『安上り』なんて言葉を聞くなんて。
でも、俺は、そんなミレーヌがとてもいいと思う」
「……王都だと、こうはいかないんだろうけどね」
「心配?
俺と結婚して……、王都の方で暮らすことになったら……?」
「うーん、心配してないとは言えないけれど。
レンダート伯爵の領地も王都に近いもんね。
でも、私はそこまで不安じゃないよ。
カイエンになら、困ったとすぐ相談できるし、それに、けっこう私、どうしてやろうかって考えるの好きかも、ね。
きちんとした伯爵夫人にはなれないかもだけど……、型にはまらない伯爵夫人にはなれるかも。
まあ、カイエンがそれで良ければ、だけど」
「ふふっ、時々冒険者にもなっちゃう伯爵夫人か!」
「うん、そうね! ギルドの常連になっちゃうかも!」
読んで下さり、ありがとうございます。
朝起きたら、体調がいまいちで、息子と夫の弁当をお休みにして二度寝させてもらいました。
おかげで何とか今日の仕事は乗り切れた! 感謝!
で、投稿も遅くなりました……。
明日はお休みなので、書き進めます!
これからもどうぞよろしくお願いします。




