6 婚約継続
どうぞよろしくお願いします。
その日の夜、カイエンはゴードンの執務室で、ゴードン、ケリー、ジョナサンと向かい合っていた。
「……ですので、私もミレーヌと一緒にパーティを組みたいと思います」
「……というと、婚約を継続するか、様子を見たいということで?」
ゴードンの言葉にカイエンが笑う。
「どうして様子を見る必要が?
私はこの婚約を解消するつもりはありません。
むしろ結婚前に一緒にいられる時間が増えて好都合です」
ケリーとジョナサンが顔を見合わせ、ジョナサンが口を開く。
「あなたの婚約者として決まっていたのに、我が家ではミレーヌをのびのびと……。
失礼なことを言いますが……、ミレーヌは一応貴族令嬢としてのマナーや教養は身に付けています、が、普通の貴族令嬢とは言えません。
その、規格外と言いますか。
曾祖父母の影響なのか、隔世遺伝とでもいうのか剣の腕もヒーリングの腕もなかなかのものです。
貴族令嬢として過ごすより、冒険者としての方が力を揮えるでしょう。
あの通り、地方の貴族令嬢としては何とか及第点でも、王都や領地で伯爵夫人として、勤めるのは難しいと思います。
特に、レンダート伯爵家は王都の近くの領地で、王都や王族との付き合いも多い家ですよね……」
カイエンは静かに聞いている。
「しかも、妹は……、たぶん何かを成し遂げて、自分で家庭を持ちたいと思わない限り、結婚しないと思います。それでも良いと?」
カイエンは頷いた。
「はい、私もミレーヌもまだ若いですから、いくらでも一緒にいて、彼女が決心するまで待つことはできます」
ケリーが意外そうに言った。
「では、本当にミレーヌでいいと?」
「むしろ……、ミレーヌがいいと。
ミレーヌ以外とは結婚したいと思いません」
きっぱりとカイエンが言い切った。
「両親もまだ健康ですし、家には弟もいます。
冒険者として旅をするというのは少し驚かれるかもしれませんが、留学や修行だと捉えれば許してくれるはずです。
そして、何より婚約者のミレーヌを守るように、しっかりつかまえているように応援してくれるでしょう」
次の日の朝、ミレーヌが朝食を食べに食堂へ行くとそこにカイエンがいた。
他の家族はいない!?
「おはよう、ミレーヌ」
「カイエン様、おはようございます」
「カイエンと呼んでくれ」
「カイエン……、おはよう」
言い直したミレーヌにカイエンは微笑んだ。
あれ、なんか調子狂うな……。ちょっとドキドキする……。
何故かふたりだけの朝食が始まり……、カイエンからミレーヌのこれからの予定を聞かれる。
「今日は……」
「今日のことも聞きたいけれど、これからのこと。
いつ旅に出るつもり?
今のランクは?
私も一緒に行く。魔法使いとしては使えるよ。
ミレーヌに私、それにコーラスとシーラの4人パーティになるのかな?」
読んで下さり、ありがとうございます。
カイエン……、なかなかできる男のようです。
たぶん、コーラスのことも、もう見抜いている気がする……。




