59 自己分析
どうぞよろしくお願いします。
荷物を取りに戻って来たバルドが「シーラとミレーヌは荷馬車の中で寝ていいぞ」と言ってくれる。
「「ありがとうございます!」」
ふたりは礼を言い、野営の夕食にを手伝い、食事をして、荷馬車に入った。
「本当はカイエンにくっついて眠りたかったんでしょ!」
シーラの言葉にミレーヌも思わず言い返す。
「シーラだって、兄様ともっと話をしたかったんじゃないの?」
軽く言い返したのにシーラが真っ赤になって黙ってしまったのでミレーヌの方が慌ててしまう。
「なに!? 図星! えっと、何、ジョナサン兄様と話したのよ?」
シーラがミレーヌをがしっとつかんで押し倒す。
「……何!?」
「小さな声で話すからっ!
絶対叫ばないでよ!」
シーラとミレーヌは毛布にくるまって向き合った。
「で?」
「……ジョナサンに『君のことを女性として見てもいいだろうか』って言われた!!」
ああ、兄よ。言葉が硬いっす。
「で、シーラは……?」
「『はい』って、きゃー!!」
叫んでるのシーラじゃんね。
「ああ、じゃあ、兄様と婚約を前提に付き合うとか?」
「つ、つきあう……、そうよね。そういうことよね。
でも、まだ婚約とかは……」
「ん、そういう話はこれから?」
シーラがこくりと頷く。
何やってんだ、ジョナサン!!
「……ずっと妹のように大切に思っていたのに、こんな風に女性として意識するようになってすまないって。気持ち悪いかもしれないが、これが自分の気持ちで、いろいろ考えたけれど伝えることにしたって」
自己分析を彼女に伝えるとか……、だから硬いって。
ミレーヌはそう思ったが、あなたもカイエンに自己分析をずいぶん語ってましたからね!?
「それだけシーラのこと好きなんだね」
「えっ? 好きって!?」
「だから、女性として好きってことでしょ。シーラを。
兄様とシーラならいいと思うよ。
別に問題ないじゃん」
「あ……、そうね。ミレーヌはもうカイエンと婚約継続だもんね」
「……やっぱりコーラスのこともあったの?」
「え?」
「いや、兄様に言われたから、コーラスが、その私のことをって。
だから、もしコーラスが私と婚約、結婚ってことになると、家同士のこともあってさ。
なのかなって?」
「……少しはあったかも。
でも、コーラスとミレーヌもいいと思ったのよ。
コーラス、あんなだけど、本当にミレーヌのことずっと好き、だったし……」
「そっか……。
全然気がついてなかったよ。本当に」
「うん、私もあんなんじゃだめよね、と思いつつ。
コーラスの気持ちが通じたらとも思ったり……。
でも、カイエンとうまくいって良かったとも思っているのよ。
人の気持ちって複雑だね」
「うんうん、ま、そういうことに落ち着いたなら……、良かった……」
ミレーヌがあくびをして「おやすみ」と呟いた。
「おやすみ、ミレーヌ」
シーラも目を閉じた。
次の日、朝食を食べた後、宿にセシルとフランソワーズを迎えに行く。
何とかひとりで服は着替えて吊るして置き、着替えるということはできたようだ。
髪を結えなくて困っているようだったので、ミレーヌは手伝った。
部屋でセシルが朝食を食べている間にフランソワーズにも紐を付け直し、出立の準備を整える。
「今日は私は馬車に?」
セシルの言葉にミレーヌが「荷馬車の方ですよね?」と逆に聞いた。
まさか公爵家の馬車に戻るとか!?
思いがけない返事が戻って来て驚く。
「誰かの馬の後ろでもいいんだけど」
「んー、どうでしょう?
向こうで合流してからですね」
結局、セシルは荷馬車に乗ることになり、侯爵、エド、バルド、コーラス、シャルルが一緒に乗ることになった。
騎士ひとりとカイトが公爵家の御者をするそうだ。
ジョナサンの馬の後ろはシーラ。
カイエンが馬に乗ることになり、ミレーヌが後ろに乗ることになる。
もうひとりの騎士はひとりで馬に乗っている。後ろが空いている……。
「俺も……」とコーラスが言いかけたが、シャルルに「いて下さいよ!」と懇願され、渋々荷馬車に乗った。
読んで下さり、ありがとうございます。
コーラス、大丈夫かな。
セシルがエドにいろいろ微妙なことを言う度に、シャルルと冷や汗かいて誤魔化すのに大変だと思います。




