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52 レーニアへの戻り方

どうぞよろしくお願いします。

 ジョナサンと騎士ふたりは馬で来ていた。


 公爵家は馬車がある。

 公爵、夫人、フランソワーズを抱いたセシルが乗り込み、従者が御者を務める。


 マリオン侯爵家は商人を装っていたこともあり、大型の荷馬車だ。

 マリオン侯爵、バルドとカイトとエドワード王子、それにシャルルとシーラが乗ることになった。マリオン侯爵家の従者が御者を務める。


 ジョナサンの馬の後ろにミレーヌ。騎士ふたりの後ろに、カイエンとコーラスが乗ることに。


 全員、馬と馬車で移動のため、少し急いで街、村と2泊3日間の予定でレーニアまで駆け戻る。

 移動距離を稼ぐために、移動時間が長めとなる。途中の休憩でミレーヌがカイエンに話し掛けた。


「お尻大丈夫?

 乗り慣れてないと辛いんじゃ?」


「ひどいな、俺だって馬ぐらい乗れるよ。

 魔法使いとして各地へ出向く仕事もしてたんだし」


「なら良かった!

 そうそう、魔法教えてもらうって話だったのに、忙しくてそれどこじゃなかったね。

 レーニアでは時間ありそうだから、教えてね」


 話を聞いていたシャルルも反応して「私も教えてもらいたいです!」と言った。


 コーラスは「俺は剣を教えてやれるけど!?」と笑う。


 シャルルの所へフランソワーズを抱いたセシルがやってくる。フランソワーズはまた行方不明になっては大変なので、ギルドでつけてもらった紐を付けている。


「お兄様、私、つまらない……。

 お父様は不機嫌だし、お母様もずっと黙ってて……」


「お母様が黙っている?」


「ええ、まあ、話をすると『うるさい』とお父様が怒るから……。

 なんだか馬車の中がずっとピリピリしていて……」


 エドとジョナサンが顔を見合わせる。

 余裕があるのは公爵家の馬車だけなのだ。

 しかし、そちらに乗りたいという者はいないだろう。

 強いて言えば、シャルルかもしれないが、彼を公爵と同じ馬車にしたら、エドワード王子のことを根掘り葉掘り聞いてきたり、変な発破や指示をしてきそうだ。

 

「馬車はもう、人の移動は難しいですね」


 ジョナサンの言葉にセシルは悲しそうな顔をする。マリアと同じくらいの令嬢だ。妹のように思えたのだろう。ジョナサンがセシルに微笑んだ。


「馬車は難しいですが、宿ではミレーヌとシーラと同じ部屋にしましょうか?」


 ミレーヌとシーラも頷いた。


「セシル様、宿ではいっぱいおしゃべりしましょう!」


 シーラの言葉にセシルの表情も明るくなる。


「なら、楽しみに頑張る!」


 そう言ってから、軽く礼をして母親の元へ戻って行くセシル。母親に話し掛けているので、宿のことを報告しているのだろう。


「セシルには公爵家の経済状況が苦しいことは伝えないのか?」


 エドの言葉にシャルルが小さな声で答える。


「ええ、心配はさせたくないので……。

 レイオス辺境伯爵家からの招待、本当に助かりました。

 あのままパテマにいたら、どうなっていたか……」


「領地に戻るくらいの分は取ってあるのか?」


 ジョナサンが聞く。


「はい、母とセシルが王都に戻れるくらいのお金は分けてあるはずですが……」


「夫人が?」


「はい」


 バルドが首を傾げる。


「怪しいな。公爵夫人は私物をパテマで買取に出していたそうだし。従者がそういう店に出入りをしていたそうだよ」


 エドも頷いた。


「ああ、公爵と夫人で、金銭についての口論などもあったのだろうな」


 エドの言葉にマリオン侯爵が苦笑いする。


「エド様も人のことは言えませんよ。

 私の金目当てで、ずいぶんパテマで豪遊なさっていましたよね?」


 ミレーヌとシーラが『あ!?』という顔になり「「温泉では特別コース、ありがとうございましたっ!」」とお礼を、今さら言った。


 エドが「えー、狩りも頑張ったし、少しは返したよね?」とちょっと心外だという顔をする。


「まあ……、『焼け石に水』くらいは」


 マリオン侯爵が苦笑した。

読んで下さり、ありがとうございます。

エドが飛び出して行っちゃったので、慌てて追いかけたマリオン侯爵です。

パテマで高級宿にしれっと宿泊してるの知った時はびっくりしたと思います。

「後で連れの者が金を持ってくる」とか、宿の人も詐欺じゃないかと、マリオン侯爵が来るまでドキドキだったと思いますよ。

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