5 婚約解消!?
どうぞよろしくお願いします。
ゴードンとジョナサンは執務があると席を外し、残りのみんなで席に着きお茶を楽しむことになる。
「ミレーヌと呼んでもいいだろうか?」
カイエンが少し恥ずかしそうに、でも、しっかりミレーヌを見て言った。
「はい、どうぞ!
私はカイエン様と呼ばせて頂いていいですか?」
「カイエンと。
私達は婚約者なのですから」
「えっと、その婚約についてなのですが……」
ミレーヌが話し出そうとすると、ケリーがその先を制して話し出した。
「このキイチゴのタルトは、レイオス領でよく作られるキイチゴのジャムを使ったお菓子なのですよ。
それぞれの家庭の味がある、レイオスでは家庭の味と言われるものでして、どうぞ召し上がって」
声を張り上げ、自らみんなに配り始める。
ミレーヌは黙った。
むむっ、母は私に話しをさせない気だな!
カイエンは「おいしそうですね。綺麗な色だ」とタルトを褒める。
マリアがはにかみながら言った。
「お姉様が夏にたくさんの実を摘んで、このジャムを作ったんですよ」
「えっ? ミレーヌが!」
カイエンが少し驚いたようにミレーヌを見た。
ここだっ!
「そうです! 私、まもなくこの家を出て、冒険者になる予定でして!」
ナイス、マリア! とにっこりしながらミレーヌは爆弾発言を投下した。
ケリーの顔が引き攣ってから、あきらめの表情に変わった。
「家を出て……、冒険者に?」
カイエンが戸惑った表情をしている。
「はい、ずっとひいお爺様とひいお婆様の冒険者話に憧れていて。
子どもの頃から冒険者になると決めていました。
家事や料理も一通り身に付けましたし、家族からの許しも得て冒険者ギルドに登録してランク上げに励んでいます。
Cランクまで上がり、パーティを組んだら旅に出てもいいと……」
「俺達も一緒に行く予定だ」
コーラスが笑顔で言う。シーラも頷く。
「……冒険者になって何を?」
カイエンの言葉に、ミレーヌは答えた。
「まあ……、自分の力を試したいし、実戦を積んで伸ばしたいということ。
人助けができたらとも思います。
それなら領地でもと思われるでしょうが……、若いうちに他の地方や国を回ってみたいという個人的な願望もあります」
「それは……、素敵ですね!
私もぜひ、御一緒させて下さい!!」
カイエン以外のみんなが『えっ!?』という表情になった。
「ミレーヌと旅をともにして、ミレーヌの手料理も食べられるなんて、夢のようだ!」
カイエンがにっこりと笑う。
ミレーヌはちょっと赤くなった。
あれ、そういえば初めて会うのに、なんで私がミレーヌだとわかっていたのだろう……。
ここにはシーラもマリアもいたのに……。
読んで下さり、ありがとうございます。
あら、ミレーヌ、カイエンのこと気になっちゃった感じ?




