46 公爵家の事情
どうぞよろしくお願いします。
エドはなんだかうれしそうにシーラを見た。
「シーラもそう思うんだ。同じ意見の人がいるのはうれしいな」
コーラスが低い声で言った。
「もう夜も遅い、話があるなら早くお願いします」
「……話始めてたのに、腰を折ったのはミレーヌでしょ。
まあ、エイルズワース公爵家は今、困っているんだな。
ジョルジュの方に近づこうとしたけれど、うまくいかなくて、それでこっちに来たわけだ。
子息のシャルルがジョルジュとどうも相性が悪かったようで、令嬢に対してもジョルジュは相手にしなかった……、家柄だけなら公爵家だからいいんだけどね。
ジョルジュはなんか気にしている令嬢がいるみたいでね。
で、まあこっちに流れてきたみたいな。
公爵家、数年前から資金繰りが苦しいのではという話があったんだが、先月、公爵領で水害があって、収穫直前の農地がかなりやられたようなんだ。
それもあり、王家とパイプを強くして、資金調達をしたいということもあるんだろう。
私がこちらにお忍びで逗留していると聞いて、近づくチャンスだと家族で来たんだろう」
「じゃあ、エイルズワース家はエドワード王子と親しくなって、息子を側近に、できれば令嬢を婚約者にという目論見というか……」
コーラスが言うと、エドは頷いた。
「そうだね。あわよくば、そこまで考えているかもね。
だから、レイオス辺境伯爵家を警戒している。
レイオス家にも令嬢がふたりいるし、後継息子のジョナサンは優秀だという噂だからね」
「なるほど……。だから、辺境伯爵家にキャンキャン噛みついてきたのか!
納得です」
「そういうこと。
だから、レイオス家は気にしなくていいよ。
あんなこと、みんなが思っているようなことじゃないから」
ミレーヌは苦笑いした。
「あー、でも、古くからの高位貴族の方々はまあ、心の底では思っているのでしょう。
そうでなきゃ、あんなにぺらぺらと言えませんよ。
平民、冒険者やヒーラーに対しても、元から思っていることなんでしょうね。
本音に近いんじゃないかな。
……ということは、エド様に付きまとってくる可能性がある?」
エドは苦笑いながら頷き、バルドが言った。
「ああ、だから、できるだけ街の外で過した方が気が楽なのではと……」
カイエンが笑った。
「公爵より……、虫の方が気が楽ってことですか」
「だな。
残念な二択だがな」
バルドの本音にエドが微笑む。
「すまんな。私は自分のやりたいことはしないと気が済まないんで。
で、ミレーヌ。
前回のホーンボアの血を取ってあるんだ!
それを木に塗りつけたり、地面に溢しておいたら、甲虫が寄ってくるんじゃないかと。
もしコボーが来ても、血だけなら立ち去りそうだろ?」
「……おお、いいアイデアですね!
やってみる価値はあります!
こっちは瓶を使った落とし罠を準備してます。
ネズミを捕まえられます。
ネズミも、コボーを飼育している者がけっこう依頼してるんですよ!」
「うわー、明日が楽しみだな!
もう遅い、早く寝よう!
ミレーヌ、明日の朝、朝食の作り方教えてくれないか?」
「いいですよ!
あ、シーラ、いいよね?」
シーラはエドとミレーヌに微笑まれて、笑みを浮かべながら小さなため息をついた。
「了解。
なんか、あなた達、最強コンビかも!」
「そう?
じゃあ、そのうち『暁の勇者』に入れてもらおうかな」
コーラスが吹き出して、カイエンが顔を引き攣らせた。
読んで下さり、ありがとうございます。
そうです、今、季節は秋なんですよ。




