42 保護ネコ
どうぞよろしくお願いします。
ミレーヌが乾いているタオルでネコをくるみ抱っこした。
「街の方からこっちに迷い込んだのかもよ。
飼いネコなら誰かが探しているかも」
ギルドまで戻り、ネコを探す依頼が出ていないか聞く。湿地でぬかるみにはまり死にかけていたネコを保護したのだが……と伝えると、職員が裏庭に案内してくれ、もうひとりが桶にお湯を入れて持って来てくれた。
どうやら裏庭は剣や魔法の練習をするところのようだ。
「温かいお湯で洗ってあげるからね」とミレーヌが言いながらネコをタオルごとお湯につけるようにしていくが、ネコはミレーヌにしがみつこうとして、職員とカイエンと三人がかりで湯の中へ身体をつけて泥を落としていった。
「きれいなネコだな。これは飼われてるネコだろう」
職員の言葉通り、手足が白くて頭の上から背中が黒い。はっきりした模様で毛並みも肉付きも良い。
もうひとりの職員が追加でお湯を取りに行ってくれ、ネコはかなりきれいになった。
「良かったね。きれいになった」
「この模様だと鉢割れと呼ばれるネコだね。
王都では今、短毛種のネコが流行らしいよ」
お湯を届けてくれた職員はネコ好きなようでそう教えてくれる。
一緒に洗ってくれた職員が言った。
「では、飼い主が自分で探している段階かもしれないな。
こちらから保護していますとお知らせを出しておくことにしよう。
もし飼い主が名乗り出たら、謝礼があると思う」
ネコをギルドに預けようとするとミレーヌと離れてなるものかとネコは抵抗し、結局は引き離されて「ウナーゴ、ナーァアゴ」と不機嫌に低い声で鳴きながら、職員にがっちり抱き取られ、建物の中へ入って行った。
カイエンとミレーヌはお互いを見て笑った。
「「泥だらけ!」」
「もう汚れちゃってるから、屋台で軽く腹ごしらえして、また狩りに行こう!」
ミレーヌの言葉に苦笑しながら、ふたりはまた湿原へと戻って行った。
その日の夜。ミレーヌとカイエンが宿に戻り、着替えを済ませて夕食を作っているとコーラスとシーラが戻って来た。
食事をしながらお互いのことを報告し合う。
シーラは受付の業務を担当することになったのだそうだ。受付し、コースを決めて会計してもらい、案内するという仕事。
コーラスは施設の外のパイプなどの点検業務の付き添い護衛。温泉が通るため温かく、入り組んでいて小さな魔物が居ついてしまうことがあるとか。
今日から4日間の連続勤務。日給はシーラは銅貨6枚、コーラスは銅貨7枚で、昼食がつくのだという。
シーラはいろいろなコースがあること。どういうサービスがつくと価格に差が出るのかなど面白そうに話している。説明のため、一通り見学させてもらえたそうで「私達が受けたコースはひとり銀貨1枚だった」と教えてくれ「もっと上のコースもあるのよ」と笑って言った。
「ミレーヌはどうだったの?」
「私達は主に幼虫を探して狩りというか、回収みたいな。
3か所見つけて、32匹ギルドに買取してもらえたよ。銀貨3枚と銅貨2枚。
シューズの借り賃銅貨1枚や、昼食は買っちゃったから、実質銀貨3枚ってとこかな。
まあ、いいほうだよね。
1匹だけ幼虫取ってあってさ。
明日はそれを餌に他の魔物を誘き出してみようって。コボーが来たら諦めるけど。
ギルドでネズミ罠の作り方も教えてもらって。材料もほぼ廃材で作れてさ。それを仕掛けてみる予定。
後、ネコを保護したよ」
「ネコ?」
「うん、泥にはまって動けなくなってて。
手足やお腹や顔が白くて、頭から背中が黒いネコ。
王都で流行っている短毛種とか聞いた」
コーラスとシーラが顔を見合わせた。
読んで下さり、ありがとうございます。
おや、ネコの飼い主に心当たりが?
王都では今、短毛種がブーム。
私はキジトラ&サバトラが好きです。




