41 ふたりでの狩り
どうぞよろしくお願いします。
ふたりで1日過ごしてみるというのは初めてのことだ。
なんとなく気恥ずかしさがあるが、狩りでは遠慮や浮ついてなんかいられない。
ふたりで足元を感触を確かめながら進んで行く。
「ん? ここどうかな?」
ミレーヌが立ち止まる。カイエンが「どれ?」とその周辺を踏みしめる様にする。
「うん、柔らかい感じがする。
一気にやって、一気に回収だな」
「うん!」
ミレーヌは少し下がり剣を構えた。
カイエンが地面に手を向け何か唱え始める。
昨日と同じように、地面から空気が土を押し上げて噴きあがるように、土の塊が盛り上がり崩れる。動き回る土の塊の間から大きな幼虫達が揺すられるように地表に姿を現した。
「はーっ!」
ミレーヌが稲妻の剣で電撃を与えながら吹っ飛ばす。
10匹ほどひっくり返り動かなくなる。逃げ出したものは放って置いて、カイエンの収納魔法に動かないものだけどんどん入れていく。
ネズミもコボーも出現する前に全て回収できた。
「ちょうど10匹だったね。全部で銀貨1枚ってとこかな!
うまくいった!
ね、コボーを捕まえるのってどうやるんだろうね?
今度ギルドで聞いてみようか?」
「そうだな、エド様なら面白そうだって言いそうだ」
「そういや、何でエド様はパテマに?
後から、お世話する人が慌てて追いかけて来たってことは、ひとりで来ちゃったとか?」
「そうだと思うよ。
なんか本のことを話してたし、本でこの地方のことを読んだのかもね」
「……ひとりでこんな辺境まで来るなんて、ある意味すごい行動力だね」
「だな。でも、その辺境伯爵のことを何も調べないでくるとはね……」
「ふふふ、いいんじゃない。世間知らずの王子らしくて。
あ、私も人のことは言えないな。王都のこと、王家のことはよく知らないもん」
「いいよ、知らなくて。
さて、甲虫も狩りたいところだけど。
幼虫を出しておくとコボーもネズミも来る可能性があるし……」
「でも、甲虫はホーンボアの血に反応してたから。
ネズミの血でも飛んでくるかも?」
「うーん、その前にコボーが来る可能性もあるし。
次に幼虫を狩れたら、チャレンジしてみる?」
「賛成!
じゃあ、また、土が柔らかいところを……。
あ、この先ぬかるみっぽい……、ん? 何か……。
カイエン、タオル、くれる?」
ミレーヌが泥のぬかるみに向かいタオルを置くとその上から何かつかみ上げ、こちらに戻ってくる。
「何かもがいてたような……、水出せる?」
カイエンがミレーヌの手の上から魔法で水を出して掛ける。
タオルで優しくもむようにするミレーヌ。
「……ネズミ? いや大きいし……、ネコ?」
その哀れな息も絶え絶えな生き物は「ニア」と力無く鳴いた。
「ネコだ! どうしたんだよ! こんなところで!!」
ミレーヌは慌てて顔回りの泥を手で拭ってやる。
カイエンが新しいタオルを出して、さらに水で洗った。
息がしやすいように顔回りは比較的きれいになったが、まだ泥が身体についている。
「これ以上水で洗うのはかわいそうだ。
一度戻ってお湯で洗ってやろうよ」
読んで下さり、ありがとうございます。
生き物=魔物です。
潜在的に生き物は魔力持ちだから。
人間もまあそうだけど、人間は唯一知能が高い状態で魔法を使いこなせる者が出現し、使い方や訓練の方法などを後世に伝えることができて、この世界のプレデターというか、生態系の上の方にいることができているだけ。
魔力を使えるには向き不向きとか種族差、個体差がある感じです。
だから使える人もいれば、使えない人もいる。野生の魔物でもたまに魔法が使えるものがいたりする。




