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39 恋人らしいこと

どうぞよろしくお願いします。

 カイエンが頷く。


「ああ、第1王子は身体が弱く、聖職者の道を選ばれた。

 第2王子はいろいろなことに興味を持たれ、なかなか賢い方なんだが……、あのようにマイペースだ。

 第3王子はまあ……、どうだろうな。

 シーラが言うように、人を試したり、わざとおとしめたり……というところがあるかもね。

 それを王のうつわではないと見るか、策略家で野心家と見るか……」


「ジョルジュ王子はないけど、エドワード王子もちょっと変わっているわよね。

 でも、人に対してはちゃんとしているし、話は面白かったけど」


 シーラが思い出したように言った。


「カイエンの弟って魔法使いなの?」

 

 ミレーヌの言葉にカイエンが頷く。


「ああ、ウィリアムって名前だ。ふたつ下で14歳。まだ修行中だけどなかなか筋はいいよ」


「カイエンの家族の話……、もっと聞きたいな」


 ミレーヌが少し甘えたように言った。

 カイエンがコーラスを見る。


「……なんだよ」


「その……、寝るまでの時間、ミレーヌとふたりに……」


 シーラがコーラスを引っ張る。


「寝るまでよ!

 あっちの部屋に行こう!」


「えっ? でも……」


「カイエン、いくら温泉に入ったばかりでミレーヌのお肌がつるつるだからって、そういうことはしないわよね!?」


 シーラの言葉にカイエンがちょっと驚く。


「えっ? ああ、そんな肌を触ったりは……」


「しないんだな!?」とコーラス。


「ああ、誓う!」とカイエンが両手を上げて答え、コーラスとシーラは部屋を出て行った。


「……触っていい?」


 ミレーヌの言葉にカイエンがさらに驚く。


「えっ?」


「いや、温泉効果でカイエンもお肌つるつる?

 私はクリーム塗ってもらったのもあるけど、カイエンは温泉だけだよね?」


 そう言いながら、カイエンの袖をまくり上げて腕の内側をさすさすと撫でるミレーヌ。


「うーん、前がわかんないから、わかんないや」


 そう言いながらカイエンの頬に手をやる。


「あ、ほっぺは前よりすべすべな気がする」


 カイエンが赤くなってミレーヌの手を上から握るように押さえた。


「ミレーヌ……。

 俺は幸せ者です。

 こうして好きな人と一緒に過ごせて……」


「私も。好きになったのがカイエンで、婚約者で良かった」


 カイエンがミレーヌを空いている腕で抱きしめる。


「俺の曾祖父とミレーヌの曾祖母が、結ばれなかったから俺達がいるんだと思うと……。

 ふたりには申し訳ないけれど、あの時、ふたりが結ばれなかったことに感謝してしまいそうになる……。

 こんなこと言うと、自分もしっぺ返しを食らうだろうか……。

 ひい爺さんのバートのように……」


「バートは魔法上の落城の仕掛けに巻き込まれて強制転移させられたんだよね。

 記憶も失ってしまったんだっけ……」


「ああ、その間に、聖女マールは悪名高い王子と結婚させられそうになって……、勇者アレックスが結婚を申し込んで、マールは王子との結婚を回避できた……」


「そうだったんだ!?」


「ああ、でも、マールもアレックスの気持ちを受け入れて、本当の夫婦になってから、バートが戻って来て……」


「それは、みんな、辛い思いを……」


「バートとマールはほとんど恋人として過ごしたことはなかったみたいだから……」


 それを聞いたミレーヌはカイエンの頬にチュッとキスした。


「ミレーヌ!?」


 カイエンが驚くやら、うれしいやらで、照れている。


「じゃあ、私達は恋人らしいこといっぱいしようね!」


「え……? あ……、その、とてもうれしいんだけど……、その、それって……」


 カイエンがしどろもどろになっている。


「えーっ。こうやってギューッとしたり、ほっぺにチュッぐらいならよくない?」


「えっ? それぐらい?」


「それぐらいって……、他に何が?」


「いえいえ、それぐらいでも十分に幸せだ。

 ミレーヌがジョルジュ王子に気に入られてなくて良かった……」


「あはは、ないない!

 なにしろ、男女おとこおんなだから!」

読んで下さり、ありがとうございます。

ミレーヌ、素直でけっこうかわいいんですけど。

ただ、カイエンのことが好きという気持ちと、ちょっと友達っていうか、まだカイエンを男としてそこまで意識してないところもあって……、変に積極的なところもあります。

きっと、後で思い出して『ああ……』となる案件でしょう……。

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