38 王子達の話
どうぞよろしくお願いします。
「魔法使いバートは子爵家出身だったんだ」
「つまりバードだけは貴族だった?」
コーラスの聞き返しの言葉にカイエンが言い返す。
「聖騎士アルファードも騎士爵だったろ?」
「あ、まあな」
「で、いろいろあって……、みんなよりかなり遅れて戻って来て、伯爵位を授けられた。
子爵家の方もその長男がいなくて、バートがふたつを兼ねることになって……。
代々、兄弟の弟の方が子爵を名乗ったりもしたんだけど、名乗っていた叔父に子がいなくて、だから、弟が子爵家を継いだんだ。ちょうど第3王子の側近になったこともあって、さ」
「第3王子……。ジョルジュ王子ね」
シーラが呟いてミレーヌを見た。
ミレーヌも『あー』という表情をして見せる。
「何? 何かあったとか?」
カイエンが気にする。
「12歳の時……、だよね?」
ミレーヌがシーラに確認する。
シーラが「うん」と頷いて、話を続ける。
「私とミレーヌ、12歳の時にジョルジュ第3王子と会ってるというか……、まあ、あんまりいい思い出じゃないんだけど」
コーラスが思い出したように言った。
「あ、12歳の時か!
王都に一緒に来たけど、シーラとミレーヌだけ王城に、お茶会とやらに招待されてた」
「それよ! ちょうど同い年や前後1年くらいの令嬢達が集められてて。
ジョルジュ第3王子って、けっこう性格に難ありじゃない?
おとなしそうな令嬢のドレスとか髪飾りとか貶してさ。
古めかしいとか、流行遅れとか。まあ、細かいというか、お前は女子かっていうか。
で、泣かしてさ。
泣いちゃった令嬢をミレーヌが慰めたのよね。
それが自分に逆らったように感じたのか、ミレーヌのことを攻撃し始めて……」
カイエンが驚いた表情でミレーヌを見た。
ミレーヌはふっと微笑んだ。
「辺境の男女って言われたよ。
王子に言われるだけなら、まあ全然やり過ごせたんだけど。
王子の機嫌を取ろうとする令嬢達の攻撃対象にもなっちゃって。
貴族令嬢失格とか、地味とか、手が剣の稽古で皮が厚いところがあったから、それを笑われて……。
まあ、自分がしたくてしていることだし、辺境では剣ができた方がいいから、気にすることないんだけど。
わかっているけど、まあ、貴族令嬢としては失格だって、自分でも思っちゃって……」
「それをずっと気にしてた?」
カイエンがミレーヌの手を取る。
「うーん、そうだな。
貴族社会では、王都では生きにくいだろうなと思った。
だから、冒険者としてと思ってたし……」
「俺は貴族令嬢でも、冒険者でも、どっちでもいいよ。
ミレーヌがミレーヌだから、好きだよ」
ミレーヌが赤くなってから「ありがとう、カイエン」と微笑んだ。
「話し戻すな。
で、カイエンは第2王子に誘われてて、弟は第3王子に仕えていると」
コーラスがちょっと顔をしかめて言った。
読んで下さり、ありがとうございます。
おお、ちょっと恋愛話っぽくなってきた!?




