32 湿地の狩りへ
どうぞよろしくお願いします。
8時前に朝食を済ませ、ギルドへ行き、オーバーシューズの貸し出しをお願いする。
シーラも欲しいというので、コーラス、ミレーヌ、シーラと3足貸してもらうことになった。
一日1足鉄貨5枚だった。話をしていて半日で返す予定というと、3足で銅貨1枚におまけしてくれた。
「ありがとうございます!」
ミレーヌがお礼を言うと「カイガラムシ、期待してるよ!」と職員に笑いかけられた。
少し待つとバルドとカイト、そして青年がひとり入って来た。
ミレーヌ達より年上であるが、まだ20歳前という雰囲気だ。
「君達が『暁の勇者』か……。
今日はよろしく頼む」
その青年は見回し、カイエンに目を留めると微笑んだ。
「やはり! カイエンと名を聞いて、君ではと思ってたんだ!」
カイエンは苦笑交じりの微笑み浮かべ、礼をした。
その青年は期待に満ちた瞳で視線を巡らし、シーラを見て頷いた。
「彼女が例の婚約者だね。
私の誘いを断ってまで、そばにいたいと言っていた……」
ミレーヌはびっくりしたようにカイエンを見た。
カイエンがミレーヌに照れたような表情をした。
バルドが青年を紹介した。
「エド様だ。王都からいらしている貴族令息で、申し訳ないがこれ以上は……。カイエンも他言無用で願いたい」
エド様。王都の身分の高い貴族……。
カイエンを、天才魔法少年を手元に置きたいと願えるほどの……。
エドワード第2王子!?
ミレーヌとシーラは目配せし合った。
バルド達は『暁の勇者』を駆け出しの冒険者パーティだと思っている。
全員が貴族令息、令嬢とは気づいていないようだ。
ただ、エド様は伯爵令息のカイエンを知っているということは、その婚約者も貴族令嬢だとは知っている!?
カイエンは何も言わず、とりあえずシーラが婚約者と勘違いさせておくことにしたのだろうと、コーラス、ミレーヌ、シーラは理解した。
カイエンとミレーヌは先頭を歩き、街の門へと向かう。
その後をシーラとカイトとエド。
コーラスとバルドが最後を歩く。
「ごめん、ミレーヌ。勘違いさせておいた方がいいかと……。あの人うるさいから」
「ふふふっ、わかってる。
シーラの方が貴族令嬢っぽいもの。
でも……、なんかうれしかった。
本当に『婚約者』のこと思ってくれてたんだね……」
「……うん。君とちゃんと会ってからじゃないと、自分の未来は決められないと思っていたから……」
「うん、なんか、うれしい!」
ミレーヌがカイエンに笑いかけ、カイエンもうれしそうに微笑む。
街の門を出て、湿原の方へ向かう。
読んで下さり、ありがとうございます。
さてさて、どんな虫がいるのかな?




