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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第2章 パーティ『暁の勇者』
25/53

25 気にしないで!

どうぞよろしくお願いします。

「そうやって、なんでも、あげちゃうの?」


 ミレーヌの目の前にいたのはカイエンで、ミレーヌは後退あとずさりしてひっくり返りそうになる。

 カイエンの方が慌ててミレーヌの腕をつかんで引き寄せた。


 同じくらいの背丈なので、顔が近く、目がばっちり合ってしまう。


「危ないな……、本当に。心配した……」


「ただの散歩で……」


「散歩でも、ひとり歩きはダメだよ」


 ミレーヌをしっかり立たせてくれ、髪をさらっと撫でた。


「下ろしてるの初めて見たかも」


「えっ? あ!」


 ミレーヌが慌てて髪に手をやり、そしてため息をついた。


「代り映えしないでしょ?」


「いや、どんなミレーヌもかわいいよ」


「あはは、もうそんなお世辞言わなくても……。

 そういうことは本当に好きな人にだけ言うようにしないと……」


 そう言いながら、ミレーヌは顔を背けて歩き出す。

 カイエンがついてくる。


「ごめん、探してくれたんだよね。 

 心配かけました。もう、戻ります。

 いなくなったのがばれてるということは……、シーラとコーラスも探してる?」


「いや、ふたりは宿で待ってる」


 思いがけない言葉でミレーヌはちょっと驚いて、少し振り返る。


「……カイエンだけ? なんで?」


「俺がそうしてくれと頼んだから。

 ミレーヌのことは俺だけが探したかった」


「こ、婚約者だから?

 もう、そんなの気にしなくていいのに!」


 ミレーヌがわざとらしい微笑みを浮かべて言った。

 もう少しで大通りに出る。


「俺は、リボンのようにはいかないよ。

 ミレーヌが誰かに譲ろうとしても、絶対に譲られてなんかやらない」


「譲るって……、そんなんじゃなくて。その……、自由にして欲しいっていうか。私のことは置いといていいから、好きな人がいたら、気にせずそっちに行って欲しいっていうか……」


「……ミレーヌのことが好きなのに、そんなこと思うわけないだろ」


「わかんないよ。

 婚約者だからって思い込んでるだけかもしれないじゃん。

 まだ1カ月だよ。私達、婚約者ですって言われて、まだ1ヶ月。

 それに、他にもほら、よくある小説の、真実の愛とか! 本当に好きな人に出会っちゃうこともあるじゃない!

 いろいろ見たらいいんじゃない!?

 あ、それも、変? あれ?」


「……ミレーヌもその真実の愛とかの相手ではと思う相手がいたら、俺を捨てるの?」


「え? 捨てるもなにも、カイエンは、私のものじゃないもの!」


「じゃあ、他人に押しつけたりもしないで欲しいな」


「他人って、シーラは他人じゃ……っ!」


 言いかけて慌てて口を両手で押さえるミレーヌ。


「シーラも怒ってたよ」


 ミレーヌが目を見開いてカイエンを見た。


「……コーラス!?」


「ああ、コーラスが全部話してくれた。

 なんで、そんなことに?

 気になることがあったら、俺に直接言えばいい」


 大通りに出た。

 もう言い合いができる雰囲気ではない。


 ミレーヌが黙って宿の方へ足を進めようとすると、カイエンが手を握ってきて、引っ張られた。


読んで下さり、ありがとうございます。

カイエン頑張れ!

ミレーヌ、いい子なんだけど、自分より、人を優先しようとするところがあります。

勇者気質とでもいうのか……。そこはひい爺様似です。

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