22 諦める
どうぞよろしくお願いします。
ミレーヌとコーラスが宿に戻ると、もうカイエンとシーラはそれぞれの部屋に戻っていた。
「いい武器、あった?」
シーラはミレーヌに笑いかけてから、怪訝そうな顔をした。
「泣いた?
コーラスになんか意地悪されたんでしょ!?
もう!!」
立ち上がりかけるシーラを慌ててつかんでまた座らせるミレーヌ。
「違うから! 私が勝手に泣いたの。
コーラスは悪くない」
「なんで? 泣くことが?」
ミレーヌはふるふると首を振った。
シーラの声が低くなる。
「コーラスには言えて、私には言えないこと?」
「うん、夕食まで寝るね」
ミレーヌは自分のベッドに潜り込んでしまい、シーラは戸惑った。
何があった!?
シーラはそっと立ち上がった。
そして静かに廊下へ出て、コーラスとカイエンの部屋の前に行った。
カイエンもいるだろうし、何とコーラスから聞き出そうかと考えながら部屋の気配を伺っていると「武器屋じゃなきゃ、どこに?」とイライラしたように聞いているカイエンの声が聞こえた。
「もともと約束なんてしてなかった。
あれはミレーヌがお前とシーラに遠慮したんだよ!」
ノックもせずにシーラはドアを開けた。
「コーラス! どういうこと!」
「……っと、びっくりした!
ミレーヌはどうだ?」
「肝心なことは何も話さずに寝ちゃった。
なんか泣いた様子だったし……、何があったのよ!」
「もしかして、また泣いているのか……。
俺も何がどうしてだよ。
あー、もう!
カイエンにシーラ!
お前らのせいだぞ!」
「ミレーヌが泣いてるってどういうことだ!?」
カイエンがコーラスに詰め寄る。
「お前らもミレーヌの様子が変だとは気づいていたろ!?
……ミレーヌはカイエンのことを諦めると決めて、それで……」
「は?
なんで、それで泣くことに?
諦めるって?
婚約者なんだから、別に問題はない……」
「だよなあ。
なんか勘違いしてるんだよ。
そして、それがシーラのためだからって」
「なんで、私!?」
「あーなると、ミレーヌは動かないぞ。
カイエンとシーラが幸せになるならと、もう身を引く気だからな。
でも、初めて、男性をそういう対象として見て、好きになったのが初めてだから……、それを諦めなきゃいけないことに、今、苦しんでるんだ」
「……ミレーヌのバカっ!」
シーラがそう言うとまた部屋を飛び出していく。
「あーあ、だめだな。
本当はこのまま、カイエンと婚約解消になるまで待ちたいところだったんだけど……。
やっぱり、このままってわけには、どうも気持ち悪い……」
コーラスの言葉にカイエンが「どういうことだ!?」と食い下がってくる。
「そのまんまだよ。
ミレーヌはカイエンのことが好きになりかけてる。で、ちょっとした誤解なんだけど、カイエンはシーラを気にかけている、シーラはカイエンのことを好きになりかけてるって思っちゃったんだな。
だから、カイエンへの気持ちはもう封印して、ふたりを応援するって決めちゃったみたいだぞ」
読んで下さり、ありがとうございます。
コーラス、結局、黙っていることできず……。良い奴ってことなんですかね。
でも、みなさん、仕事中ですので……。早くなんとかしないと大変ですぜ。




