21 辛いな
どうぞよろしくお願いします。
ミレーヌのしょんぼりした顔。
コーラスの胸に愛しさが溢れてくる。
「ミレーヌ、少し話そう」
本当は抱き寄せたいところをなんとか思いとどまった様子で、手を握ると、公園の方へ歩いて行く。
ミレーヌは素直についてくる……。
か、かわいい……。
ミレーヌは弱っているのだから、それに付け込むのは良くないと思いながら、この好機に自分の本当の気持ちを伝えたらどうなるのだろう……と考えてしまうコーラス。
公園の中の座れるところを探して、ふたりで座った。
ミレーヌは何も言わない。
コーラスはミレーヌを見た。
「ミレーヌ……。
なんで、カイエンがシーラを、シーラがカイエンを思っていると思ったんだ?」
「ん、カイエンは私よりシーラの方が話しやすいんじゃないんかって、まず思って。
私が生まれつきの婚約者だから、気にしてくれてたんだよねって、ことに気がついて。
そうでもなきゃ、私なんかに興味持つはずないよ。
だから、私より先にシーラに心を開いて、『俺』って素で話せるようになってた……って気がついて、その、たぶん、嫉妬した。
その後、シーラと話していて、シーラの好みを聞いたら、カイエンとしか思えなくて……」
「シーラの好み?」
「うん、かわいい人って。しっかりしてるのに自分の前ではちょっと情けないところを見せてくれるようなって。ギャップのある人? って聞いたら、そうだって。
その前にシーラ、カイエンのこと、ギャップがある人だって言ってたし」
コーラスは頭を抱えた。
シーラのことだ、思い付きで話していたのだろう。また、ミレーヌの真意や他のこと……、コーラスのことなどを考えながら話を進めていたのかもしれない。
そして、重複したことを言ったことなど、まったく気づいてもいないのだろう。
「……辛いな」
ふと、自分がミレーヌに片思いをして、じりじりしているのになにもできず、自分を変えることもできず苦しんでいたことが思い出された。
ミレーヌがため息をついた。
「うん、辛い」
その言葉はコーラスの胸にブーメランのように戻って来て、抉った。
「つまり、ミレーヌはカイエンが好きなんだよ」
「え? そうかな?」
「そうなの! それしかありえないの!
素直になれよ。
じゃあ、シーラとカイエンがうまくいって、恋人になったら!?」
「……そ、そうなったら、しゅ、祝福……、する……」
途中から涙混じりになるミレーヌの声。
コーラスの胸に意地悪な気持ちが湧いてきた。
「いいんだな?
じゃあ、シーラとカイエンをできるだけふたりに……。
……本当にいいんだな?」
「……うん、シーラも大切な友達だから、ふたりとも幸せになってもらいたい……」
読んで下さり、ありがとうございます。
まあ、コーラスがなんだかんだと言っても、シーラのことがある限り、ミレーヌは自分の気持ちは隠すことを決めてしまったようです。
カイエン、かわいそー。




