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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第2章 パーティ『暁の勇者』
20/58

20 何かしら変

どうぞよろしくお願いします。

 旅は順調に続き、次の街には昼過ぎに着くことができた。

 商人達は宿に入ると、それぞれ商会の用事があるので、夜まで自由に過ごしていいとミレーヌ達に言ってくれた。


 ギルドのある街だったので、収納していたビッグポイズンスパイダーとニードルラビットを買い取りに出すことができた。

 ビッグポイズンスパイダーはコーラスとカイエンが、ニードルラビットはミレーヌが退治したということでポイントもついた。

 カイエンはシーラに譲ろうとしたのだけれど(いろいろ防御魔法やら試させたこともあって)、シーラが「一撃で倒したのはカイエンだから!」と断ったのだ。


 買取が無事に終わるとカイエンがシーラとミレーヌに「じゃあ、譲ってもらったお礼にケーキでもご馳走するよ」と言った。


「わ、うれしい! ね、ミレーヌ!」


 シーラがミレーヌを振り返るが、ミレーヌは素早くコーラスの腕を取り「コーラスと武器屋に行く約束してて! 後で宿でね!」と「え?」と言っているコーラスを引っ張って行ってしまった。


 カイエンとシーラは顔を見合わせて「なんだ?」「なに?」と同時に呟いた。



「どうしたんだよ?

 そんな約束してないだろが!?」


「ご、ごめん」


 ミレーヌが申し訳なさそうに言った。

 コーラスがため息をつく。


「ま、武器屋を見に行きたいのはその通りだから、かまわないよ」


「ほんと! 良かったー」


 ふたりで歩き出す。

 コーラスは前から思っていた違和感を口にした。


「ミレーヌ、カイエンと何かあったか?」


「……何もないよ」


「ふーん。

 ま、いいけど。

 なんか落ちこんでるように見えんだよな。ミレーヌらしくないっていうか」


 ミレーヌが苦笑する。


「私らしくない、か」


「ま、話したくなければ言わなくていいけど。

 カイエンもシーラも心配するからな。

 あいつらも何かしら変だと感じていると思うぞ」


 突然、ミレーヌが立ち止まる。


「変だと? 感じている?」


「あ?」


 コーラスはミレーヌを振り返ってぎょっとした。

 ミレーヌが静かに涙を流していた。


「なっ、おま、何で!?」


 涙を拭うとミレーヌはきっぱり言った。


「うあっ!

 もういじいじしない!

 あのね、シーラの応援をすることにしたの!」


「シーラの? 応援?」


「……シーラとカイエン、お似合いじゃない?

 お互い、惹かれ合ってるみたいだし……」


「は?」


 なんでそうなる?

 どこでどう、そんな風に思ったんだ!?

 いや、でも、この状況は!?


 コーラスの頭の中でミレーヌの涙とミレーヌとカイエンの婚約解消の可能性がぐるぐるした。


「は、カイエンとシーラ?

 どこでどうなって……?

 だから、ミレーヌ、昨日から、カイエンに対して、距離を感じる、丁寧な言葉使いをし始めた!?」


「距離?

 んー、そうかな。

 なんか、気軽に話せなくなっちゃって……」


読んで下さり、ありがとうございます。

パーティ『暁の勇者』、最初の依頼の最中だというのに、最大の危機!? です。

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