20 何かしら変
どうぞよろしくお願いします。
旅は順調に続き、次の街には昼過ぎに着くことができた。
商人達は宿に入ると、それぞれ商会の用事があるので、夜まで自由に過ごしていいとミレーヌ達に言ってくれた。
ギルドのある街だったので、収納していたビッグポイズンスパイダーとニードルラビットを買い取りに出すことができた。
ビッグポイズンスパイダーはコーラスとカイエンが、ニードルラビットはミレーヌが退治したということでポイントもついた。
カイエンはシーラに譲ろうとしたのだけれど(いろいろ防御魔法やら試させたこともあって)、シーラが「一撃で倒したのはカイエンだから!」と断ったのだ。
買取が無事に終わるとカイエンがシーラとミレーヌに「じゃあ、譲ってもらったお礼にケーキでもご馳走するよ」と言った。
「わ、うれしい! ね、ミレーヌ!」
シーラがミレーヌを振り返るが、ミレーヌは素早くコーラスの腕を取り「コーラスと武器屋に行く約束してて! 後で宿でね!」と「え?」と言っているコーラスを引っ張って行ってしまった。
カイエンとシーラは顔を見合わせて「なんだ?」「なに?」と同時に呟いた。
「どうしたんだよ?
そんな約束してないだろが!?」
「ご、ごめん」
ミレーヌが申し訳なさそうに言った。
コーラスがため息をつく。
「ま、武器屋を見に行きたいのはその通りだから、かまわないよ」
「ほんと! 良かったー」
ふたりで歩き出す。
コーラスは前から思っていた違和感を口にした。
「ミレーヌ、カイエンと何かあったか?」
「……何もないよ」
「ふーん。
ま、いいけど。
なんか落ちこんでるように見えんだよな。ミレーヌらしくないっていうか」
ミレーヌが苦笑する。
「私らしくない、か」
「ま、話したくなければ言わなくていいけど。
カイエンもシーラも心配するからな。
あいつらも何かしら変だと感じていると思うぞ」
突然、ミレーヌが立ち止まる。
「変だと? 感じている?」
「あ?」
コーラスはミレーヌを振り返ってぎょっとした。
ミレーヌが静かに涙を流していた。
「なっ、おま、何で!?」
涙を拭うとミレーヌはきっぱり言った。
「うあっ!
もういじいじしない!
あのね、シーラの応援をすることにしたの!」
「シーラの? 応援?」
「……シーラとカイエン、お似合いじゃない?
お互い、惹かれ合ってるみたいだし……」
「は?」
なんでそうなる?
どこでどう、そんな風に思ったんだ!?
いや、でも、この状況は!?
コーラスの頭の中でミレーヌの涙とミレーヌとカイエンの婚約解消の可能性がぐるぐるした。
「は、カイエンとシーラ?
どこでどうなって……?
だから、ミレーヌ、昨日から、カイエンに対して、距離を感じる、丁寧な言葉使いをし始めた!?」
「距離?
んー、そうかな。
なんか、気軽に話せなくなっちゃって……」
読んで下さり、ありがとうございます。
パーティ『暁の勇者』、最初の依頼の最中だというのに、最大の危機!? です。




