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2 婚約者の正体

どうぞよろしくお願いします。

「で、婚約者殿との顔合わせだが……」


 ゴードンがまだ重々しいポーズを崩さず話を進めようとするのでミレーヌは言った。


「重々しく事を進めれば、私が言うことを聞くと思ってるの!?」


 ゴードンが目を上げた。


「いや、そういうわけじゃ。

 家と家との約束。しかも三代前もの古い約束……。

 それにお前は魔王討伐した聖女マールの名をセカンドネームにもらっているだろう。

 それが約束の証なのだそうだ。

 もう……、逃げることはできないのだよ」


「だから、なんでそれを今になって……。

 忘れてたんでしょ?」


「う、その忘れてたとかではなく、この約束が生きてるのかが……、よくわからなくてな……」


 言葉に詰まるゴードンをケリーが助けようと口を出す。


「そうよ。

 もしかしたらってぐらいだから、あなたに婚約話が持ち上がれば確認するつもりで……」


「あ、だから、いざとなったらその約束があるからと……、好きにさせてたってこと!?」


 ミレーヌは長女だが兄と妹がいる。

 そのため、将来的には家を出ても大丈夫だ。


『冒険者になりたい!』と両親に話しても『まあ好きにすればいいよ。ミレーヌには素質があるとお爺様とお婆様も話していたからな』『貴族令嬢としてのマナーや教養さえ身に付けてくれれば、後は好きになさい』と言って、かなり好きにさせてくれていた……。


「それで、ミレーヌの婚約者であるカイエン・バート・レンダート伯爵令息がもうこちらに向かっててだな……」


「な、カイエン……、レンダート?

 あの、天才少年魔法使いと噂の!? な、何で!?

 あれ、年下ですよね? 私より妹の方がいいんじゃ!?」


「それが……、ミレーヌ、お前がマールの名をもらったことから決まっていたことらしい……」


「は?」



 ゴードンが説明してくれた経緯によると……。


 魔王オベリウスが倒れた時、まだ息があった。

 最後に誰かが残って確実に死んだことを確認せねばならない。

 そして、魔王が死ぬということはこの魔王の魔法で作られていた城が崩壊することを意味していた。


 討伐パーティの魔法使いバートは自分ひとりなら魔法でわが身を守れると言い、聖女マールに愛していたことを告白して、すぐに魔王城から撤退するように促した。

 聖女マール、勇者アレックス、聖騎士アルファードはそれを受け入れ、城の外でバートが帰ってくるのを待つと……。


 その後、城は崩壊し、魔王が死んだことは確実となったが……、いくら待っても……、バートは帰って来なかった。


 バートは死んだものとされ……。パーティは王都へ戻って事の次第を王国に報告した。


 勇者アレックスはレイオス辺境伯爵となりかつて魔王の城があった辺境を治めるように命じられた。

 まあ、貴族に取り立てられたという褒美でもあるのだが……。

 聖騎士アルファードはローレウス伯爵となり、レイオス辺境伯爵領の隣に領地を貰った。


 それから3年、マールは王都の教会で大聖女として過ごしていたが……、アレックスが結婚を申し込み、それを了承。

 辺境伯爵領で暮らし始めて……、ガイオンという息子を授かった。


 魔王が倒れて5年。

 バートが王都に帰ってきた。

 魔王の力が暴発するのを最後まで抑えていたが、城に掛けられていたトラップが発動し、遠くへ転送されてしまったそうだ。

 そのショックで記憶喪失状態にもなり……、やっと記憶を取り戻して、王国へ戻って来たのだ。

 バートも功績を認められレンダート伯爵となった。

 しかし、恋人となったはずのマールはすでに親友の妻になり、息子すら生まれていた。

 そのため、これから先、お互いの子孫で年の近い男女が生まれたら結婚させようと約束した、という……。


「ずーっと両家とも男ばかりでな。

 初めてミレーヌ、お前が女の子で、お婆様は喜んでご自分の名前をセカンドネームに付けたのだ。

 そして、半年後にレンダート伯爵家には男児が生まれた。

 カイエンだ。マールと対になるようにバートとセカンドネームを。

 これが生まれつきの婚約者という約束の経緯だ」

読んで下さり、ありがとうございます。

子孫が迷惑する『瀬をはやみ』系な約束。

日本三大怨霊崇徳上皇どすな。


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