172 大騒ぎ
どうぞよろしくお願いします。
マリアとローゼリアが午後早めにレンダート伯爵家に行くと、屋敷は大騒ぎになっていた。
「マリア! ミレーヌが、ミレーヌが……、家を出て行ってしまったわ!」
レンダート伯爵夫人が悲し気に叫び、レンダート伯爵が封筒を差し出す。
「珍しく朝起きてこなくて。
最近、外出が続いて疲れたのかと……。
それで気づくのが遅れた……。
置手紙が、我が家宛とレイオス家宛が残されていて。
確認を頼む。
我が家が用意していたミレーヌの物は全てきれいに置いて行かれていて……。
カイエンにも連絡を入れた」
マリアは震える手で封筒を受け取り、封を切り、読み始めた。
レンダート伯爵家とカイエンには大変良くしてもらったこと。カイエンには他に愛している人がいると知ったので、自分は身を引くこと。
こうなったからには周囲に迷惑をかけることになるため、ミレーヌをレイオス辺境伯爵家から勘当して欲しいこと。
そんなことが書かれていた。
マリアが簡単に手紙の内容を伝えるとレンダート伯爵夫妻は困惑した表情を浮かべた。
「こちらの手紙にも、カイエンが愛している人との結婚を認めてあげて欲しいと書いてあるんだが……。何のことやら……」
その時、アドリアーナとセシルが到着し、ミレーヌが家出をしたと聞いて驚き、マリオン侯爵にも捜索を頼もうという話になる。
マリアは改めて気がついたように言った。
「ウィリアムにも! それにコーラスに!!」
まもなくレンダート伯爵家にマリオン侯爵、エドワード王子、シャルルが到着し、ウィリアム、ジョルジュ王子、コーラスが駆け付けた。
みんなでミレーヌの残した手紙を見て……。
ローゼリアが思い出したように言った。
「マリオン侯爵家のお茶会で……、コーデリア嬢とお話しをしてからミレーヌの顔色が悪かったような……」
ジョルジュも頷く。
「ああ、私も気になった。
では、このカイエンの愛している人というのが、コーデリア嬢のことか?」
「また、何をどうやって誤解したんだ!?」
コーラスがイライラしたように言った。
ミレーヌはカイエンのために身を引くと。
カイエンのことが嫌いになったわけではない。となると、逆に本気で身を隠すために行動しているということになるだろう。
でも、ミレーヌはカイエンの魔道具を身につけている。
あれは外すことはできないし、あれを身につけている限り、ミレーヌの居場所はカイエンにいずれわかるはずだ。
夕方、カイエンが帰宅した。
王都から馬で1日ほどかかる街にいたのだが、魔法協会が婚約者の身の安全に関わることと判断して緊急の魔法伝令を出してくれ、すぐに王都へ向かうことができたのだという。
帰宅するなりミレーヌの手紙を読んで驚きを隠さず「どういうことだ!?」と声混じりの息を吐く。
「魔道具でミレーヌの居場所はある程度わかるんだろう?」
コーラスの言葉に頷いたカイエンは目を閉じ、魔道具の魔力を探して……。
しかし急に目を開き、客間を飛び出し、ミレーヌとマリアが使っていた部屋に向かう。
みんな驚いて、カイエンの後を追った。
ミレーヌとマリアの使っていた部屋のクローゼットの引き出し。
そこに布に包まれた何かが入っている。
カイエンは布を取り出し、包みを開いた。
そこにはミレーヌの長い髪を二つ折りに束ねて留めている青い石のブレスレットが……。
「お姉様! 髪を!?」
マリアが悲鳴を上げた。
貴族令嬢が髪を切る……。この長さだと、かなり短く……。
「王都周辺の修道院もあたりましょう!」
アドリアーナの言葉にみんなはその重大な意味を考えて、思わずカイエンを見た。
カイエンは驚きの余り顔面蒼白になっている。
「なんで……!?」
ジョルジュがカイエンの腕をつかんで言った。
「今はどうしてということより、まず、ミレーヌを捜すことだ!!」
カイエンははっとしてジョルジュ王子を見た。
「……申し訳ない。
みなさん、ミレーヌを捜すのを手伝って欲しい!」
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