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生まれつきの婚約者がいるなんて聞いてない!?  作者: 月迎 百
第二部 第1章 魔王討伐が終わって
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171 レンダート伯爵家

どうぞよろしくお願いします。

どうしてもキリの良い所がなくて、長めです。

 ローゼリアがレイオス辺境伯爵家の屋敷まで送ってくれ、お礼を言ってローゼリアの馬車を見送る。

 

「お嬢さん方は今日はこちらにお泊りで?」


 クルトの言葉にマリアが答える。


「私はね。

 お姉様はレンダート家へ戻るわ」


 夕食はレイオス辺境伯爵家で食べることになり、ミレーヌはその前にクルトとコボーの所へ行った。


「お嬢さん、お疲れですか?」


 クルトはふたりきりになったところで、心配そうに話し掛けた。

 ミレーヌは子どもが失敗を見つかってしまった時のように、あちゃーという感じで笑う。


「……うん、ちょっと。いろいろとね。

 カイエンに相談したくても、カイエンは仕事でいないし……」


「私でよければ、愚痴ぐらい聞きますよ、と……。

 私も明後日から出てしまいますが……」


「えっ? どこへ?」


「せっかく王都に来ているので、反対側の辺境まで。

 ギルドのある街をふたつほど回り、辺境のギルドまで。そこからまた王都のギルドに戻り、今度こそ、パテマに帰ることになると思います」


「コボーで行くの?」


「はい、コボーの宣伝も兼ねて」


 笑うクルトを羨ましそうにミレーヌは見た。


「いいなぁ。明後日からか。

 明後日の早朝?」


「はい」


「コボーとクルトを見送りたいなぁ。

 レンダートの屋敷のそばを通る?」


「わかりました。後で通る道を確認しましょう」



 夕食を終え、ミレーヌとクルトは辺境伯爵家の馬車でレンダート伯爵家に向かっていた。


「この馬車と同じ道を通りますね」


「早朝ね」


「はい、コボーで王都内を走り回るのは逆に不便なんですよ。

 なので、人通りがない早朝に走り抜けてしまう予定です」


「庭に出れば柵越しに見送れるかな。

 コボーは3頭で行くの?」


「はい、1頭では心許ないし、2頭連れて行くと、1頭だけ残すのもかわいそうですしね」


「そうだね……」


 クルトはレンダート伯爵家にミレーヌを送り届けレイオス辺境伯爵家に帰ってきた。

 マリアがエントランスまで迎えに出てくれる。


「お姉様、どうでした?」


「お疲れのようですね。

 今夜はどうして、お嬢さんだけ、レンダートへ?」


「お姉様専用の家庭教師が住み込みなの。授業を休まないようにということじゃないかしら。

 私は今日明日とこちらに泊って、明後日の昼にレンダートへ戻る予定。

 私はまだ、婚約者になったばかりだから、ゆっくり馴染めばいいけれど、お姉様はあと半年だし。

 レンダートの御夫妻も良い方なのよ。

 我が家のつもりでのんびりと過ごせばいいと。

 でも、そう言われても……、無理よね。

 気はずっと抜けないわ。

 お姉様にしてみれば、カイエンのためにがんばっているけれど、カイエンは仕事でいないし……。

 本当に気を抜ける所も時もないのかも」


「そうですか……、心配ですね」



 次の日、マリアの所へ手紙が届いた。

 レンダート伯爵夫人からだ。

 手紙を読んだマリアは慌てて手紙を書いた。


 クルトに申し訳ないけれどアイライト侯爵家に手紙を届けて欲しいとお願いする。


「至急の手紙ですか?」


「ええ、レンダート伯爵夫人が、明日、お姉様の結婚式のドレスのデザインを決めるとかで……。

 若い人の意見も聞きたいから、マリオン侯爵家のアドリアーナ様を呼んでもらえないかって。

 そちらへはもう手紙を頼んだの。

 仲の良いローゼもいたら楽しいのではないかと思って……」


「急ですね……」


 明日の予定などもう決まっているかもしれない。

 前日にこのような誘いは、失礼かもしれないが……。

 マリアは苦笑した。


「ええ、レンダート夫人、悪い方ではないのだけれど、思い付きで決めてしまうところがあって。

 私に他の家への連絡をと頼まれるのは……、正直、どちらにも気を遣うわ。

 今回は、お姉様に連絡しなさいとお話しされるよりかは、いいけどね」


 クルトはアイライト侯爵家に手紙を届け、申し訳ないが明日の予定のことなので至急なのだと口添えする。

 少し待たされたが『手紙の時間に伺います』と返事をもらうことができた。

 戻って、マリアに伝える。


「ありがとう。

 クルトは明日の朝、出発よね!

 時間を使わせてしまい、申し訳なかったわ。

 気をつけてね!」


 マリアにそうねぎらわれ、その後は自分の仕度に専念できた。



 早朝、コボー3頭を縄で繋いでレイオス家を出る。

 ミレーヌに教えた道を……、レンダート伯爵家の横を柵の中を気にしながらゆっくり進んで行くと、ひとりの少年が道に立っていた。


「クルト!」


 声は……、ミレーヌだ。


「……お嬢さん!?」


 服装は少年のものだが、確かにミレーヌだった。

 髪が自分で切ったのか、不揃いのザンバラのようになっている。


「ごめん、王都を出るまででいい。連れて行って」


「どうして……?」


「大丈夫、手紙は置いてきた。

 まあ、いろいろと、思うところがあって」


「カイエンには……」


「カイエンのためでもあるの!」


 ミレーヌは2頭めのコボーに背に手をかけて飛び乗る。


「迷惑はかけたくないから、王都を出るまででいい」


 ミレーヌの真剣な様子にクルトはコボーを出発させた。


 ミレーヌは、静かな、まだ眠っているようなレンダート伯爵家の屋敷を寂しげに見ながら「カイエン、お幸せに!」と呟いた。


読んで下さり、ありがとうございます。

やっちまいましたよ、ミレーヌ。

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