169 気づいたこと
どうぞよろしくお願いします。
コーデリアが目を細めてミレーヌの全身をさっと見て、言った。
「これは……、なるほど。
カイエンと婚約中で、今年中には結婚なさるとか?」
「はい、半年後に式を挙げる予定です」
コーデリアが左手の指を口に当てた。何か思案しているのか?
「ふっ、なるほど。
それは楽しみですね……。
カイエンには……、いろいろ……、女性の気持ちや心について聞かれることがあったのですが……」
ん!?
私とのことをこの方に相談してた!?
ミレーヌは恥ずかしくなった。
こんな美しい人と私じゃ、感性というかいろいろ違い過ぎるのでは!?
「こんなかわいらしい婚約者がいるなら……」
ずいっとコーデリアがミレーヌに近づき耳元に口を寄せて囁いた。
「もっと私も本気を出してカイエンに教えなくてはね。
女性の扱いかたを。あなたとの初夜までには、ね」
は?
ミレーヌは戸惑った。
女性の扱い方? 初夜?
コーデリアは身を引いて、何気ない様子で会話を続ける。
「カイエンは今、小隊を率いて王都の外の警護に出てくれています。
私も明日、合流するのですよ。
カイエンに伝えたいことがあれば、伝言をお預かりしますわ」
ミレーヌは顔を強張らせた。
何か……、この人は警戒しなければ、という……。
「ありがとうございます。
身体に気をつけて過ごすようにと……、お伝え下さい」
「……そんなことでいいの?
わかりました。
では、また、お会いしましょう」
コーデリアが微笑んで去って行く。
その微笑みも艶然としたもので……。
何もなければ、ただ、美しい人だと思えたのかもしれない。
「ミレーヌ、大丈夫!?
なんだか……、魂が抜けたような顔をしているわよ。
まあ、コーデリア嬢、すごい迫力だったものね」
ローゼリアがミレーヌの様子を見て心配するように言った。
「あ……、ええ、すごく美しい人だったし、ちょっとびっくりして」
カイエンに……、教える?
女性の扱い方、初夜……。初夜っ!?
え? コーデリア嬢は、カイエンのことが……、好き、とか?
ミレーヌは赤くなってから、すうっと血の気が引いた。
コーデリア嬢とカイエンは……、秘密の恋人?
なんで結婚できない?
コーデリア嬢が年上だから?
年齢に拘るレンダート伯爵夫妻が頭に浮かんだ。
だから、彼女を妻にするのは諦めて……、でも、彼女との関係を続けるためにも、伯爵家のためにも妻が必要だから、生まれつきの婚約者である私との婚約を!?
だから、彼女への思いがある時は、私との婚約はずっと放って置いて、約束が生きているのがわからない感じだったのに、急に……。
「お姉様? 顔色が……」
マリア達が来て、ミレーヌの顔色の悪さに驚く。
「何か、コーデリア嬢に言われたのか?」
ジョルジュも気にしてくれているが、こんな内容、人には話せない。
「……カイエンの上司になる方なんだね。
知らなかったから、驚いてしまって」
その後、ローゼリアとマリアも仲良くなり、セシルとも話をして……。
なんだか気がついたらお茶会から帰るレンダート伯爵家の馬車の中という感じだった。
「お姉様、本当にどうしたの!?」
マリアがふたりきりになり、心配半分、何も言ってくれないミレーヌに怒り半分といった感じで言う。
「ごめん……、心配かけて。
その、男の人は結婚前に……」
言いかけて、マリアとウィリアムが婚約したばかりだということがミレーヌの口にストップをかけた。
「結婚前に?」
マリアが首を傾げる。
「えっ、あ、いや。
結婚前に何をプレゼントしたらうれしい? のかなって」
「……婚約について何か言われたの?」
「んー、結婚まで半年って聞かれたから」
「んー、そうなの?
もっと婚約者らしくしろってこと?
そうねえ。今度アドリアーナ様やセシルを訪ねる約束をしたから、その時に相談してみたら?」
「そんな約束したっけ?」
「お姉様、大丈夫!?
マリオン侯爵家訪問と、ローゼと王都観光にお出掛けしようっていう話になってたじゃないの!?」
読んで下さり、ありがとうございます。
ああ、ミレーヌのとんでも勘違いが始まります……。




