168 カイエンの上司
どうぞよろしくお願いします。
「でも、あれはないよ。
注意するなら周囲に人がいない時とか……、こっそりとかだよ」
ミレーヌがジョルジュに言う。
「いや、すまない。
私もその、今より幼く……、その、自分が正しいことをしていると、驕っていたのだと思う。
申し訳なかった」
「いえ、私はもう気にしていません!!」
ローゼリアが慌てたように叫んでから、ミレーヌを見た。
「ミレーヌの花飾り、素敵ね」
「ありがとう!
ローゼのドレスと花飾り、雰囲気を揃えているのでしょう! 素敵!」
「ふふふ、この花が好きなの。
それで、花に合わせてドレスのデザインをしたのよ」
「まあ!」
ローゼリアとミレーヌが貴族令嬢らしくドレスの話など始めたのを見て、コーラスが目を丸くする。
ジョルジュは「私はもう許されたのか……?」と戸惑っていた。
シャルルが、そんなジョルジュとコーラスを促し、ウィリアムとマリアとセシルに合流した。
「ミレーヌ! 俺達はマリオン侯爵に挨拶してくる!」
コーラスの言葉にミレーヌは手を挙げて「はい!」と返事した。
ローゼリアがミレーヌをテーブル席に誘い、席についてお茶とお菓子を頂きながら、王都での過ごし方などの話を聞いていた時、『わぁっ!』と人々の歓声が上がり、ざわめきが広がった。
ミレーヌがそちらを見ると、魔法使いの制服を着た一団が入ってきたところだった。
「魔法使い! 女性の?」
ミレーヌの言葉にローゼリアが教えてくれる。
「コーデリア嬢ですわ!
イシュー子爵家の!
女性の魔法使いとして一番高名な方です。
確か、隊長として自分の隊をお持ちとか。女性としては初だと」
「へー、すごいね!」
騎士にも女性はいるが、隊長までなった者はいないはずだ。
体力でなく、才能と魔力で戦う魔法使いだからこそ、女性でも上に行けるということなのだろう。
カイエンとウィリアムの式服はマント着用だったが、通常の制服だとマントではなく、ケープぐらいの短い飾りとなっている。
コーデリア嬢は輝く銀色のケープを靡かせ、4人の男性魔法使いを従えて颯爽と歩いている。
しかし、その姿は何故か色気を孕んでいる。
男装とも思える制服に身を包んでいるのに、女性らしい身体の曲線や無造作に下ろしたままの美しい赤毛の髪が揺れる様子……。なんだか、色っぽいのである。
年齢は20代半ばというところか。
「美しい方ね……」
ミレーヌは思わず呟いた。
カイエンは、あんな美女と仕事をしているのか!?
マリオン侯爵、アドリアーナ嬢と挨拶を交わしているのを会場のみんなが、ほうっと憧れの眼差しで見守っている感じだ。
マリオン侯爵が何かを探すように視線を巡らし、ミレーヌを見つけ、何か言いながら手で示している。
コーデリア嬢の視線がミレーヌを捉えた。
なんだ?
コーデリア嬢と魔法使いの一団がこちらに向かってくる。
ミレーヌとローゼリアは驚いて固まった。
「失礼、レイオス辺境伯爵令嬢は……、あなた?」
麗しの麗人から声を掛けられる。
声まで落ち着いていて、色っぽい。
「はい! 私がミレーヌ・レイオスです」
「私は魔法協会で隊長をしているコーデリア・イシューです。
カイエン・レンダートは私の隊の副長であるのですよ」
「そうなのですね!
失礼しました!
カイエンがいつもお世話になっております。ありがとうございます」
ミレーヌは慌てて立ち上がり、お礼を言う。
夫になるカイエンの上司というわけだ。
読んで下さり、ありがとうございます。




